分析化学
Print ISSN : 0525-1931
35 巻, 5 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 柘植 新
    1986 年 35 巻 5 号 p. 417-438
    発行日: 1986/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    高分子のキャラクタリゼーションでは高分子の分子特性と関係して,低分子では問題とならなかった,平均分子量や分子量分布をはじめ,分岐度や立体規則性,共重合体では連鎖分布,そして多くの実用高分子では三次元の架橋構造など多岐にわたる項目が測定対象となる.高付加価値の素材開発が求められる昨今では,この分野の研究の重要性はかつてなく増大している.本稿では微量の高分子試料を不活性なキャリヤーガス流中で瞬間分解したときに生成するフラグメントをガスクロマトグラフィーで分離して得られるパイログラムから,もとの高分子の化学構造を解析する,熱分解ガスクロマトグラフィー(PyGC)の手法については,まずその高性能化について説明し,次に最近著者らの研究室で行ってきたポリオレフィン,共重合体及び三次元高分子の微細構造のキャラクタリゼーションそして,ナイロンやポリエステルなどの熱分解機構の研究への応用例を紹介し,PyGCの手法でどのようなことができるようになったかを概説した.
  • 中田 文夫, 砂原 広志, 松尾 博, 熊丸 尚宏
    1986 年 35 巻 5 号 p. 439-445
    発行日: 1986/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    濃縮カラムとカラム長10mmのミニ分離カラムを用いた陰イオン交換クロマトグラブにセレン(VI)を連続的にセレン(IV)に還元する過程を組み入れた小型の水素化物発生装置とICP-AES装置をオンラインで接続して,セレン(IV)とセレン(VI)を同時に分別定量する方法について検討した.確立したシステムによればプラズマは水素化物の導入によっても安定に保たれ,又,セレンの発光シグナルはキャリヤーガス流量が変動してもあまり影響を受けなかった.更に,系内に空気を導入することで1.7~2.0倍の増感が得られることや,濃縮カラムを使用することによって生じるセレン(VI)のブロードニングは,分離カラムを硫酸イオン型にすることで抑制できることなどを見いだした.検出限界はセレン(IV)で1.6ng cm-3,セレン(VI)で2.5ng cm-3であり,これは,通常の電気伝導度検出法や溶出液を直接噴霧するICP発光検出法に比べて数百ないし千数百倍の感度向上に相当する.
  • 中村 靖, 小林 義男
    1986 年 35 巻 5 号 p. 446-450
    発行日: 1986/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ガリウムヒ素結晶中に微量含まれている銅,クロム,鉛,マンガン,鉄,アルミニウム,ニッケル及びコバルトの定量法を検討した.試料を塩酸と臭素で分解し塩化アンモニウムを加えて試料溶液を調製した後,この溶液の一部をタングステンをアトマイザーとする原子化炉に注入し,灰化段階でガリウムとヒ素とを蒸発させて定量目的元素から分離し測定した.本法は,原子化段階で妨害する成分について溶媒抽出などの分離操作を行わないため,から試験値及び定量下限が低いという特徴がある.
  • 生明 清
    1986 年 35 巻 5 号 p. 451-458
    発行日: 1986/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    高圧法低密度ポリエチレン(LDPE,コモノマー:プロピレン0.04mol%)の13C-NMRスペクトルを25MHz,45°パルス2秒間隔で13万回積算測定し,主鎖メチレン炭素ピークについて約10000のS/Nを得た.このスペクトルをモデルコポリマー実測値及びLindeman-Adamsの経験則による予想値を併用して解析した結果,これまでに知られている孤立型分岐種のピーク以外の他の微小なピークは,2次及び3次の連続back-biting反応により生成する複合型分岐種に帰属できた.分岐末端部の炭素についてモデルコポリマー実測値を基準値とした感度補正法を適用して相対誤差10%程度で定量分析を行い,C4:C2=2:1を得た.C3分岐は認められず,微量プロピレンに起因する分岐はC1だけであった.4官能型C2,4官能型以外のC2及びC4の相対濃度からLDPEの分岐生成反応は1次のback-bitingが主要なものであるが,2次,3次,4次といった多次の連続back-bitingも大きな割合を占めていることを明らかにできた.
  • 王 鳳英, 徐 毓麗, 劉 志軍, 林 鉄錚
    1986 年 35 巻 5 号 p. 459-464
    発行日: 1986/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    フレーム原子吸光法を用いる白金触媒中の白金の定量はアルミナなどのキャリヤーの干渉が大きく,その干渉は複雑である.これらのキャリヤーと結合し得る周期律II族元素と周知のランタンとの白金を放出する性能を比較検討した.そのうちカルシウムは最も優れた性能を有し,マトリックスの分離がいらず,簡単な検量線法でも白金を定量できる.異なるキャリヤー(アルミナ,シリカゲル,分子ふるい)に対して11種の白金触媒(0.07~15%)に硝酸カルシウムを放出剤として使用し良好な結果を得た.検量線法と標準添加法の両者によって得られた結果はよく一致し,その相対標準偏差は3%以下で回収率は95~105%であった.
  • 田中 茂, 山中 一夫, 佐藤 滋, 橋本 芳一
    1986 年 35 巻 5 号 p. 465-470
    発行日: 1986/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    イオンクロマトグラフィーを用いて,雨水中の亜硫酸イオンの定量を行う方法について検討した.雨水中の亜硫酸イオンは,鉄(III),マンガン(II)などの溶存金属イオンの触媒作用により,極めて迅速に酸化されるため,雨水中の亜硫酸イオンを定量することは困難であった.そこで,鉄(III),マンガン(II)イオンのマスキング剤としてトリエタノールアミン(TEA)及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いて,雨水中の亜硫酸イオンを安定に保つことを検討した.その結果,TEAを雨水試料溶液に添加した場合,酸性領域では亜硫酸イオンの酸化防止の効果は認められなかったが,アルカリ性領域の場合,2.5mMの濃度となるように添加することで,1週間以上雨水中の亜硫酸イオンを安定に保つことができた.溶離液には,亜硫酸イオンと硝酸イオンの分離を良くするため,2mM炭酸ナトリウム/4mM炭酸水素ナトリウムを使用した.約11分で雨水中の亜硫酸イオンのほか,塩化物,硝酸,硫酸の各イオンを,十分精度良く定量することが可能であった.又,本法による亜硫酸イオンの検出限界は,試料注入量100μlの場合0.03ppmであった.本法により,1985年5,6月の横浜市における雨水中の亜硫酸イオン濃度は,0.07~1.8ppmであった.
  • 瀬川 定夫, 井上 則男, 長井 義己
    1986 年 35 巻 5 号 p. 471-475
    発行日: 1986/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    試料0.1~0.5gを窒素気流中で熱分解し,離脱した酢酸又はプロピオン酸を蒸留水に吸収した後,定容とし,この溶液中の酢酸又はプロピオン酸をイオン交換クロマトグラフィーにより分離定量する方法について検討した.熱分解は390℃,20分,カラムに東洋曹達工業製TSKgel SCXを用い,0.1Mリン酸水溶液を溶離液とし,波長210nmのUV検出器で検出した.本法の定量下限は,酢酸ビニル(VAc)0.03%,プロピオン酸ビニル(VPr)0.05%であり,相対標準偏差はVAc1.4%,VPr2.2%と定量性は良好であった.又,残留モノマー量の同時定量あるいはVAc及びVPrなどを成分として含むその他の共重合体についても測定可能であった.
  • 小野 昭紘
    1986 年 35 巻 5 号 p. 476-481
    発行日: 1986/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    高炉スラグを水に浸して得た溶出液中に含まれる各種形態の硫黄化合物イオンは,非常に不安定で経時変化が著しいために,ヨウ素滴定法など時間がかかる化学分析法に代わる迅速分析法が必要である.そこで,イオン交換分離後に電量検出器によって定量する方法の適用を検討した.本法によれば,亜硫酸イオン(SO32-),硫化物イオン(S2-),チオ硫酸イオン(S2O32-)を約15分の短時間で同時に定量できた.混合標準溶液中の50~100ppmの各イオンの定量精度は良好で,相対標準偏差(n=10,R.S.D.)はそれぞれ1.98%,0.36%,0.66%であった.高炉スラグ浸出液中の各イオンの定量結果は化学分析結果とよく一致し,溶出液中の他の成分の影響は受けなかった.又,多硫化物イオンは樹脂に捕集され溶出しにくくなるが,SO32-を含む溶離液によってS2O32-及びS2-に変化させ,間接的に分離定量することができた.
  • 藤本 宣國, 形井 雅昭, 廻 治雄
    1986 年 35 巻 5 号 p. 482-486
    発行日: 1986/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    高速液体クロマトグラフィーによるステロールの分析法を検討した.分析対象としたステロールは,C27のコレステロール,C28のエルゴステロールとカンペステロール,C29のスティグマステロールとβ-シトステロール及びC30のスクアレンを用いた.固定相は逆相タイプのZorbaxODS,移動相は非水系のメタノール-テトラヒドロフラン(99:1),検出波長はUVの205nmを用いた.本法による定量性については,各ステロールのピーク高さの相対標準偏差が7%以下(10回繰り返し測定)と良好であり,又,検量線はエルゴステロールとコレステロールが10~200μg/mlの間で,スティグマステロールとカンペステロールとβ-シトステロールが15~200μg/mlの間で,又,スクアレンは2~20μg/mlの間で直線関係が得られた.
  • 渡辺 邦洋, 青木 伊豆男
    1986 年 35 巻 5 号 p. 487-493
    発行日: 1986/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    水溶液中で大過剰のアミノ酸とビスサリチリデン-エチレンジアミン(BSED)を共存させると,アルミニウム(III)はアミノ酸とサリチルアルデヒドから成るシッフ塩基錯体を生成し,安定で,かつ強い蛍光を発する.この錯体を利用したアルミニウムの蛍光定量法について,6種類のアミノ酸と4種類のBSEDのアルキル誘導体を使用して検討した.検討した錯体の中で,蛍光強度は,アミノ酸にグリシン又はα-アラニンと,ビス(5,5'-ジメチルサリチリデン)エチレンジアミン(DM-BSED)を使用したとき最大であった.この錯体の補正された励起及び蛍光極大波長は360nm及び465mmで,錯形成の最適pHはグリシン(2.1×10-2mol/l)使用時は5.6,α-アラニン(2.7×10-2mol/l)使用時は5.4であった.DM-BSEDは,全量25mlに対して0.07%溶液1mlの添加が最適であった.生成錯体の組成はアルミニウム1に対してシップ塩基1であり,蛍光量子収率及び蛍光感度指標はそれぞれ0.35及び0.12μmを示した.本法により0.01~5μg/25mlの範囲でアルミニウムが定量可能であった.過剰のアミノ酸は妨害イオンのマスキング効果を示した.
  • 横藤田 敬子, 滝山 一善
    1986 年 35 巻 5 号 p. 494-496
    発行日: 1986/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    A calcium ion selective electrode has been applied for the analysis of foodstuffs. The ashes obtained from foodstuffs were dissolved in hydrochloric acid and diluted with water to a certain volume. An aliquot portion of the solution was mixed with potassium chloride and the buffer solution of pH 5.0. After that it was diluted with water to a certain volume. The concentration of calcium was measured with a calcium ion selective electrode. Phosphate contained in foodstuffs had no effect, but perchloric acid used for ashing interfered with the present method. When the foodstuffs decomposed by perchloric acid, the calcium determination was carried out after the addition of EDTA solution.
  • 吉村 菊子, 穂積 啓一郎, 北村 桂介, 北出 達也, 岡元 由紀子
    1986 年 35 巻 5 号 p. 496-499
    発行日: 1986/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    A glow discharge of 2-propyn-1-ol (propargyl alcohol) was applied to the surface of silica gel plates to form thin film of hydrophilic and transparent plasma-polymer. By using this plate, chemical interactions with azo dyes, amino acids, and cholesterols were examined in reference to the individual Rf-values obtained by the thin-layer chromatography. The effect of the plasma-coating process was evaluated by the ratios of Rf-values on the coated plates to those on the uncoated plates. It has been found that the change of polymer film thickness from 500 Å to 20000 Å did not alter the Rf-values of the compounds tested and the coated plates exhibited the same sharpness of the spots, developing rate of the solvents, and the standard deviations of Rf-values as the uncoated ones. Higher migration rate of azo dyeson the coated plates was observed by using benzene as a developing solvent, while higher and lower rates were obtained with the amino acids depending upon the combinations of functional groups of the compounds and the developing solvents. Cholesterol esters showed higher migration rate with the developing solvent of lower polarity. The ratios of Rf-values (coated/uncoated) thus obtained suggested certain interaction between the polymer film and the chemical structures of the organic compounds.
  • 中村 栄子, 並木 博
    1986 年 35 巻 5 号 p. 499-501
    発行日: 1986/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    For collection of mercury in air, use of KMnO4-coated glass beads was proposed. A 500 ml of glass bead (1432 mesh) was immersed in HF(5%)/KF(20 %) solution for 2 h, washed with water, placed in an eggplant-shape flask containing 200 ml of water and 10 g of KMnO4, and then dried at 80°C under reduced pressure while occationally shaking. The surface of glass beads was thus coated with KMnO4, amount of which was estimated to be 6 mg per 1 g of glass beads. Air sample, usually 150 l, was passed at a flow rate. 5 l/min through a glass column (80 mm×11 mm i.d.) packed with 3 g of the KMnO4-coated glass beads. Then, a reductant solution consisting of H2SO4(1 M) SnCl2 (5%)-NH2OH · HCl(5%) was fed to the column and mercury adsorbed was eluted for successive determination by atomic absorption spectrometry. Although interference due to sulfur dioxide was serious, it could be eliminated by passing the air sample to 0.1 M basic H2O2(0.3%). The concentration of mercury in the air varied between (421)ng/m3.
  • 江藤 元則, 徳森 尚志
    1986 年 35 巻 5 号 p. T39-T42
    発行日: 1986/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    誘導結合プラズマ発光分析法をアルミナ担持貴金属触媒中の白金,ロジウムの定量に応用した.本法では試料を分解後,テルル共沈法により白金,ロジウムを主成分のアルミニウムより分離した.試料の分解及びテルル共沈の諸条件について検討した結果,試料の分解には過酸化ナトリウムによる融解が適しており,テルル共沈法によりロジウムを完全に捕集するためには,テルルと塩化スズ(II)を添加後90℃で3時間以上加熱する必要があることが分かった.又,試料と同じアルミナ担体を用いて本法の回収率を求めたところ,98.5~100%の範囲内であった.本法を実試料に適用した結果,0.01~3%の白金及びロジウムを含む試料について相対標準偏差0.3~0.9%の精度で定量できた。
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