分析化学
Print ISSN : 0525-1931
51 巻, 8 号
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分析化学総説
  • 近藤 洋文
    2002 年51 巻8 号 p. 569-596
    発行日: 2002/08/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    磁気記録メディアは非常に幅広く使用されている記録メディアの一つであり, その記録密度は年々増加している. 最近では高感度な磁気抵抗型ヘッドと薄膜磁気記録媒体の導入により更にその速度は加速され, 例えばハードディスクでは年率100%の速度で増加し, 商品として50Mbit/mm2, 開発としては300Mbit/mm2の記録密度が達成されている. その構造としてはコバルトを主成分とした磁性層上に10nm以下のダイヤモンドライクカーボンが形成され, 単分子層レベルの膜厚のフッ素系潤滑剤が塗布される. この薄膜が注目される理由として, トライボロジー特性に大きく影響することがある. つまり最終的に磁気的な限界の前に, ヘッドメディアインタフェース技術によって記録密度の限界が決められる可能性が高いからである. 目的の高記録密度を達成するためにはヘッドメディア間距離を小さくしなければならず, 2nm以下のカーボン保護膜と1nm以下の潤滑剤の膜厚が求められる. そのスケールでは膜そのものの性質以上に, 潤滑剤とカーボン保護膜の相互作用の重要性が高まる. トライボロジー特性や磁気記録システムのライフタイムを確実にするためには潤滑剤は保護膜に強く結合させ, 高速回転によるスピンオフ, ヘッドメディア相互作用による潤滑剤の消耗, 空気中の水分や有機物による潤滑剤の置換を極力避けなければならない. また, 強く吸着された潤滑剤は摩擦を低下させ, 耐久性を改善する. ここではこれらの薄膜及びその相互作用についてXPS, FTIR, Raman, EELS, Augerによる評価手法はについて述べるとともに, 将来的な超薄膜の分析手法について言及する.
総合論文
  • 星野 仁
    2002 年51 巻8 号 p. 597-604
    発行日: 2002/08/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    超微量金属イオン分析におけるプレカラム錯体化/逆相分配高速液体クロマトグラフィー (RP-HPLC) の実用性能と, それを支える分離化学について概説した. 実用法の例として, (1) ベンゾイルヒドラゾン誘導体を用いる高純度水酸化アルカリ中のアルミニウム分析法, (2) 2,2'-ジヒドロキシアゾベンゼン錯体を利用する地下水中のアルミニウム定量法, (3) H-レソルシノールを用いる労働環境大気中のベリリウムモニタリング法, 及び (4) ヒドラゾン誘導体を用いる大気浮遊粉じん中のバナジウム及びニッケルの高感度計測法を示した. 更に, オンライン濃縮/HPLC系を用いるコバルトのppt検出へのアプローチも紹介した. このようなHPLC法の成功の要因として, (1) カラム内反応を利用する新たな選択性と, カラム分離によるピーク純度の向上による高感度性の獲得, (2) 分離と検出の両機能を狙う誘導体化・ラベル化の化学の進展 (HPLCとの結合により, 試薬とその錯体のスペクトル重なりは検出上の問題とならない), (3) 流通型検出器の高感度化 (吸光検出器のノイズレベル1×10-5吸光度, モル吸光係数2×104M-1cm-1程度の錯体で, サブppb検出が可能), を挙げ, 金属錯体が関与するカラム内反応, 特に錯体の分解反応に関する速度論的な視点が重要であることを強調した.
  • 辻 幸一
    2002 年51 巻8 号 p. 605-612
    発行日: 2002/08/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    特性X線を試料表面からすれすれの取り出し角度で検出する斜出射X線分析法をXRF, EPMA, PIXEに適用した. 斜出射測定により連続X線バックグラウンドが減少するとともに表面敏感性が向上し, 薄膜分析, 表面分析, 微粒子分析に有効であることが分かった. 薄膜分析においては膜厚や密度の評価が可能である. 斜出射法では励起プローブを垂直入射できる. よって, プローブサイズで限定される微小領域の表面・薄膜分析が可能となる点が特徴である. また, STMにX線分析を組み合わせる実験を行い, 新しいタイプの微小領域での元素分析法として研究を進めている.
テクニカルレター
報文
  • 橋本 哲夫, 中川 貴博, 薄田 隼人, 八幡 崇
    2002 年51 巻8 号 p. 625-632
    発行日: 2002/08/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    天然鉱物粒子の放射線誘起現象であるルミネセンス測定により, 年代や被曝量と関連した蓄積放射線線量の情報が得られる. ルミネセンスの信頼性高い測定のために, 単分画再現 (SAR) 法が適用可能なように, 黒体放射の影響を最少限にし, 小型X線照射設備を搭載したルミネセンス自動測定システムを開発した. 試料からの微弱なルミネセンスを効率良く冷却した光電子増倍管の感光面に導入するために, コア・ロッド型のガラス製ライトガイドパイプが有効であった. 本システムでは, 当研究室で発見された石英粒子からの赤色熱ルミネセンス (RTL) 以外に, 青色TL (BTL) はもとより, 発光ダイオードを励起光源とした石英粒子を用いた (青色) 光励起ルミネセンス (B-OSL) とともに, 長石粒子を用いる赤外光励起ルミネセンス (IRSL) も高感度で自動測定可能であることを確認した.
  • 金子 順恵, 大畑 昌輝, 古田 直紀, 久保 祐也, 稲葉 次紀
    2002 年51 巻8 号 p. 633-640
    発行日: 2002/08/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    廃棄物処理の際に生じる焼却飛灰は有害汚染元素を多く含んでいる. この焼却飛灰の無害化・減量化のために, アークプラズマ処理について研究を行った. 焼却飛灰とそれをアークプラズマ処理して得られたスラグの成分及び溶出元素を誘導結合プラズマ発光分析法 (ICP-AES), ICP質量分析法 (ICP-MS) を用いて測定した. 結果, 焼却飛灰にはSb, As, Cd, Pb, Seなどの有害元素が濃縮されていることが分かった. 親銅・親鉄元素はアークプラズマ処理の際に, 短時間 (約10分) でほとんど揮散してしまうことが明らかになった. また, 親銅及び親鉄元素はアークプラズマ処理により溶出しにくくなった. 一つのバッチで生成したスラグを砕いて, 粒径を変化させたスラグに対する溶出実験では, 粒径を変化させても親銅元素の溶出濃度に変化がないことが分かった.
ノート
テクニカルレター
  • 栗原 建二, 土屋 文代, 東海林 忠生
    2002 年51 巻8 号 p. 647-652
    発行日: 2002/08/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    樹脂の耐光性や耐熱性を増すために光安定剤として各種ヒンダードアミン系添加剤 (HALS) が使用されているが, 分子量が500~数千と幅広く, しかも揮発性が低くガスクロマトグラフィ― (GC) の分析に適さないものが多い. このため, 最近では水酸化テトラメチルアンモニウム共存下で熱分解を行うガスクロマトグラフ/質量分析測定 (Py-GC/MS) が多用されている. 著者らは高周波加熱法を用いてHALSの前処理の検討を行った. HALS標準化合物2mgに水酸化カリウム-メタノール溶液 (KOH/MeOH溶液) 15μlを添加, 315℃で3分間熱抽出した. 得られた抽出液をトリメチルシリルエーテル化 (TMS化) 後, GC/MSで分析したところ, 各種HALSの基本構造を示す特徴的な低分子量化合物を1~3成分検出した. また, 自動車鋼板用の上塗り塗料に使われているアクリル樹脂によく使用されるHALSを1%添加した試料樹脂塗膜を試作し, これを同様に処理し, 抽出物をGC/MS測定したところ, 添加したHALSに特徴的な低分子量化合物が確認された. 以上から, これらのHALSにKOH/MeOH添加熱抽出法を用いることにより, HALSの基本構成化合物を示す種々の特徴的な低分子量化合物が得られた. したがって, 樹脂試料などに含有されるHALSを容易にGC/MSで確認できることが分かった.
  • 山口 仁志, 伊藤 真二, 五十嵐 淑郎, 小林 剛
    2002 年51 巻8 号 p. 653-656
    発行日: 2002/08/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    高純度銅中の微量ケイ素定量はJIS法では対応できない. また, 二酸化ケイ素の状態で含まれるケイ素についても対象外である. そこで二酸化ケイ素を含む全ケイ素の定量にフッ化物分離法の適応を検討した. 二酸化ケイ素を分解して四フッ化ケイ素を生成するのに必要なフッ化水素酸量等, 最適条件について詳細に検討を行った. その結果, 二酸化ケイ素の状態を含むサブppmのケイ素定量が可能となった. また, 試料量0.5gのときの検出限界は0.1ppmであった.
速報
博士論文要録
  • 加藤 亮
    2002 年51 巻8 号 p. 661-662
    発行日: 2002/08/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    The development of artificial receptors for anions is of current interest in host-guest chemistry. In a dissertation, chromogenic thiourea based receptors were designed, and their anion sensing functions were evaluated by 1H-NMR and UV-Vis spectroscopies. In acetonitrile-water, 1,3-di(4-nitrophenyl) thiourea exhibited an effective color change for acetate and aliphatic carboxylates, based on a strong hydrogen bond-mediated complexation of the receptor with these anions. Essentially no responses were observed for various inorganic anions, such as dihydrogenphosphate and halide anions. The application of the receptors to food analysis, was also examined; the receptors were found to be useful for the determination of acetate in vinegar. As charged receptors, isothiourea-based anion receptors were designed, and their anion recognition function at the 1,2-dichloroethane/water interface was examined by dynamic interfacial tensiometry. The complexation kinetics of a thiourea-induced isothiourea receptor with such anions as H2PO4- and Cl- was dependent on the receptor concentration. Both the saturated interfacial concentration and the adsorption constant of the thiourea-induced isothiourea receptor were found to be larger than those of a mono-substituted isothiourea receptor, exhibiting formation of an effective hydrogen bonding between isothiourea group and anion at the interface. Thus, the importance of the hydrogen bonding functions of the thiourea and isothiourea for anion recognition in the bulk solutions as well as at liquid/liquid interfaces was clarified in the present study.
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