分析化学
Print ISSN : 0525-1931
54 巻, 12 号
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総合論文
  • 今任 稔彦
    2005 年54 巻12 号 p. 1123-1136
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/06
    ジャーナル フリー
    フロー系分析法は,バッチ系分析法と比べて感度,精度,再現性あるいは分析速度などに関して多くの利点がある.流れに基づく分析法は分析に含まれる多くの操作を自動的にかつ迅速に行える.したがって,化学センサーを流れ系で用いることができれば,その性能を更に向上することができる.特に,イオン電極を用いる電位差分析法では,その簡便性や測定範囲の広さから,流れ系分析に広く利用されている.この総合論文では,著者らがこれまでに行ってきた化学センサーの流れ系への応用について(1)親油性イオン交換樹脂や疎水性のイオン交換体に基づく硝酸イオンセンサー,ビタミンB1イオンセンサー,四フッ化ホウ素酸イオンセンサー及び界面活性剤イオンセンサー,(2)各種緩衝液と対応する電極検出器を用いるフロー滴定法,たとえばpHガラス電極とpH緩衝液,銅イオンセンサーと銅イオン濃度緩衝液,酸化還元電極と電位緩衝液を用いるフロー滴定法,(3)ボロン酸高分子膜や抗体あるいは抗原固定化膜を用いる表面プラズモン共鳴センサーによる糖や種々の内分泌撹乱物質,(4)水環境汚染のバイオマーカーであるビテロジェニンのビーズインジェクションによるシークエンシャルインジェクション分析法に関して報告する.
  • 松岡 史郎, 吉村 和久
    2005 年54 巻12 号 p. 1137-1147
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/06
    ジャーナル フリー
    試料の前処理法の一つである固相濃縮法は,固相に濃縮した目的成分を脱着後に定量するため,脱着の段階で目的成分が希釈され,濃縮効率の点からは最善の方法とは言えない.そこで,固相に濃縮された目的成分に関する情報を直接取り出せれば,高感度定量が可能となると考え,イオン交換体などの少量の固相に濃縮した着色化学種の光吸収を,直接分光測定する固相分光法を開発した.更に,数十mm3の固相を光路部に保持させたセルの開発に成功し,流れ分析を可能にした.感度は固相と試料溶液の体積比に比例するので,体積比を大きくとれば溶液法の100~1000倍高感度になり,10 cm3程度の試料溶液を用いれば,μg dm-3~sub-μg dm-3レベルの成分を前濃縮なしで定量可能であった.本法は化学反応を利用するため,超微量成分のスペシエーションに適している.またマルチチャンネル検出器を用いれば,多成分系にも適用できることが確認された.
報文
  • 渋沢 庸一, 竹内 尚子, 神藤 平三郎, 伊東 洋一郎
    2005 年54 巻12 号 p. 1149-1154
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/06
    ジャーナル フリー
    高速向流クロマトグラフィー(HSCCC)により,鶏卵卵黄中のホスファチジルコリン(PC),ホスファチジルエタノールアミン(PE)の大量分離を行った.各種有機溶媒と水系とから構成される34種類の二相,三相系について,各相の比を求めるとともに,二相系では上層と下層間,三相系では上層と中間層間におけるPC,PEのミセルの形成状態や分配係数を求めた.その結果,酢酸メチル,n -ヘキサン,アセトニトリル,水から構成される二相又は三相系では,PEはミセルを形成した.クロロホルム : n -ヘプタン : n -ブタノール : メタノール : 60% 酢酸=2 : 3 : 2 : 3 : 5 の二相系の上層を固定相,下層を移動相に用いて(流量: 1 ml/min),鶏卵卵黄の高速向流クロマトグラフィー(HSCCC)分離を試みた.PC,PEのリン脂質は,単純脂質から完全に相互分離が可能であった.HSCCC画分中のPC,PE,単純脂質は薄層クロマトグラフィーにより確認した.
  • 佐々木 葉吏子, 大黒谷 亜希, 糠塚 いそし, 大関 邦夫
    2005 年54 巻12 号 p. 1155-1160
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/06
    ジャーナル フリー
    アンモニアとホルムアルデヒドをほとんど同じマニホールドで分析可能なフローインジェクション分析法(FIA)を確立した.すなわち,モノクロラミンと1-ナフトールの反応に基づくアンモニアのFIAを最適化し,更にアンモニアとホルムアルデヒドが反応してヘキサメチレンテトラミンを生成する反応と組み合わせて間接的にホルムアルデヒドを定量した.アンモニアについては少なくとも0~2 μg ml-1の範囲で検量線は直線となり,2 μg ml-1における相対標準偏差は0.12%(n =3),検出限界は15 ng ml-1であった.ホルムアルデヒドについては,検量線は負の傾きを持ち,0~1 μg ml-1の範囲で直線となった.また,1 μg ml-1における相対標準偏差は0.79%(n =3),検出限界は13 ng ml-1であった.1試料の分析に要する時間は,アンモニアでは8分8秒,ホルムアルデヒドでは14分50秒であり,いずれの場合も約5分30秒間隔で試料を注入することが可能であった.この方法を,空気中ホルムアルデヒドの除去法の検討に応用した.
  • 原田 誠, 木戸 智応, 岡田 哲男
    2005 年54 巻12 号 p. 1161-1168
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/06
    ジャーナル フリー
    細管内に溶液を流したとき,レイノルズ数が1より小さくなる条件では流れは層流-細管中心で最大となるパラボラ型の流速分布を持つポアズイユ流となる.このポアズイユ流を利用した,拡散係数の異なる物質の分離が可能かどうか検討した.拡散係数が大きい場合,物質は主に平均流速で移動し,拡散係数が小さい場合には平均流速の2倍である最大流速に依存して検出される.拡散係数の大小は細管径,細管長,流量によって分けられる.これらの事実を明らかにするためにcupic-interpolated pseudo-particle(CIP)法によるシミュレーションを行った.CIP法は物質の流れを数値的に解析する方法である.CIPシミュレートによって,物質の細管内での分離挙動に対しそれぞれの因子がどのように影響するのかを解明することができた.また,試料投入時の位置を調整することで,細管の層流だけで物質分離が可能であることを示唆することができた.
  • 友常 優子, 川上 智彦, 戸祭 智, 野口 恒行, 伊藤 剛士, 蓼沼 克嘉, 北岡 光夫, 北森 武彦
    2005 年54 巻12 号 p. 1169-1174
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/06
    ジャーナル フリー
    微少流体による分析を行うマイクロ総合分析システム(μTAS)において,用いる送液ポンプの流量の精度は分析精度に直接影響する.開発したガス圧駆動型無脈動送液ポンプ(μFPump)をμTASに適用し,シリンジポンプやダイヤフラムポンプと比較し,それぞれのポンプによる送液の分析精度に与える影響を検討した.JIS K 0102(工業排水試験法)の亜硝酸性窒素(NO2)分析法をモデルとし,分析反応・検出場としてガラス製マイクロチップ,検出器として熱レンズ顕微鏡を用いて分析精度の比較を行った.その結果,μFPumpの場合,繰り返し分析精度(CV)0.70~2.0%,検出下限値(3σ)0.0058 μg/mlが得られ,脈動のあるポンプに比べ高い分析精度が得られることが確認された.μTASによる精度の高い分析を行うためには,無脈動状態で安定に送液することが重要であることが示唆された.
  • 黒澤 きよ子, 蓼沼 克嘉, 武藤 学, 江角 浩安, 神田 征夫
    2005 年54 巻12 号 p. 1175-1182
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/06
    ジャーナル フリー
    シックハウス原因物質などの気体試料中の微量成分を測定する場合,一般的な固体捕集法では溶媒抽出-濃縮や加熱脱着等の複雑な処理が必要である.そこで,デニューダとクロスフローネブライザを組み合わせた簡便で高精度の連続ガスサンプラーを開発した.吸収液と試料気体を同時にネブライザに導入すると,試料気体と接触しながらデニューダ管内壁を液滴状の吸収液が流れる.このときの流量比を最適化すると,目的成分が吸収液に高効率で捕集される.ホルムアルデヒドによる捕集試験の結果,気体試料流量2.0 l/min,吸収液(純水)流量0.1 ml/min(気液体積比20000 : 1)の条件で,長時間安定して95% 以上の回収率が得られ,抽出-濃縮等の処理を必要とせずに室内濃度指針値の1/10以下の分析が可能であった.今後は他の揮発性有機化合物(VOC)成分や大気汚染物質の捕集及び可搬型の検出器と組み合わせた現場型モニタシステム,呼気によるがん診断技術などに応用し実用化していく計画である.
  • 酒井 忠雄, 藤本 俊一, 樋口 慶郎, 手嶋 紀雄
    2005 年54 巻12 号 p. 1183-1188
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/06
    ジャーナル フリー
    JIS K 0102では100~500 ng ml-1 範囲のフェノール類の定量は容易であるが,10~50 ng ml-1レベルになると検出が困難となり,溶媒抽出法を用いる必要がある.しかし,操作の煩雑性,研究環境の汚染等を考慮すると固相抽出法の導入が好ましい.そこで,OASIS HLBによる固相抽出と4-アミノアンチピリン発色法を組み合わせたフローインジェクション分析法を検討したところ,0.25~10 ng ml-1のフェノールを23分ごとに自動測定することができた.フェノール類濃縮後,メタノールで溶離し,pH 10に調整した4-アミノアンチピリンとフェリシアン化カリウムにより発色させ,その吸光度を505 nmで測定する.相対標準偏差も上記の濃度範囲内で1% 以下と良好で,水試料中の微量フェノール類の定量に応用できた.
  • 鈴木 雅登, 安川 智之, 珠玖 仁, 末永 智一
    2005 年54 巻12 号 p. 1189-1195
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/06
    ジャーナル フリー
    微生物の膜損傷に起因した生死状態に基づき分離が可能なチップデバイスを作製した.微生物に作用する誘電泳動力の差を利用し,生菌の捕捉と膜損傷を与えた菌の排出を行った.微生物分離チップは凹凸を有するバンドを配列させたcastellated型の透明電極(ITO)基板,直線流路パターン(幅2 mm,長さ35 mm)を有したシリコンスペーサ,入口と出口を備えたアクリル板から構成されている.無処理の大腸菌と熱処理した大腸菌をLive/Dead蛍光染色し,200 mMスクロース水溶液中に混合させた.大腸菌を流量440 μm/sでチップへ導入し,挙動を蛍光顕微鏡で観察した.ITO基板に正弦波(100 kHz,20 Vpeak-peak)を印加すると,大腸菌に正の誘電泳動が作用し電極間に捕捉された.周波数を7 MHzに切り替えると,死んでいる大腸菌への正の誘電泳動力が弱まり,電極から解放されチップから排出された.このチップを利用すると簡便で迅速な大腸菌の生死分離ができる.
  • 長谷部 靖, 白井 貴行, 長島 知宏, 顧 Tingting, 内山 俊一
    2005 年54 巻12 号 p. 1197-1204
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/06
    ジャーナル フリー
    微小カーボン繊維の3次元集積体である多孔性カーボンフェルト(CF)にチオニン(TN)を吸着固定化し,還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)のフローインジェクション分析(FIA)のための電気化学検出器を作製した.ピーク電流値を指標とするNADHのフローアンペロメトリーの最適条件は,印加電位+0.2 V(vs. Ag/AgCl),キャリヤー流量2.5 ml min-1,pH 8.0,であり,試料注入量が200 μlのとき,ピーク電流値をもとに作製した検量線は1 μMから100 μMの範囲で良好な直線性(感度: 1.21 μA μM-1)を示し,検出限界(S/N =3)は5 × 10-7 Mであった.測定の再現性は,相対標準偏差で1.35~1.70%(n =10)であり,分析速度は最大で72試料/時間であった.また,電気量からファラデー則に基づき絶対定量を行うクーロメトリー用検出器としての応答特性を評価したところ,NADHの電解効率はキャリヤー流量及びサンプル注入量に依存し,印可電位+0.2 V,キャリヤー流量0.6~0.8 ml min-1において100 μMのNADH(注入量20 μl)に対してほぼ100% の電解効率が得られた.
技術論文
  • 吉原 将明, 櫻川 昭雄, 三橋 周
    2005 年54 巻12 号 p. 1205-1210
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/06
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全の悪化の指標として用いられているクレアチニンを定量するため,キトサンを担体とした固定化酵素を充填した反応カラムを組み込んだフローインジェクション分析法の開発を試みた.固定化酵素はSchiff塩基反応によるグルタルアルデヒド架橋法により,キトサンビーズにクレアチニンデイミナーゼを固定化(CD-IE)し調製した.リン酸緩衝溶液をキャリヤーとし,その流れの中に試料を注入する.注入された試料はCD-IEカラムで,アンモニアに変換され,その後,水酸化カリウムで塩基性とし,ガス拡散装置に導入され,クレゾールレッド及び2-{4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル}エタンスルホン酸の流路と合流し,波長555 nmにおける吸光度を測定した.本法では,CD-IEカラムでクレアチニンからアンモニアに変換され,アンモニアの濃度により間接的にクレアチンが定量される.尿検査自動分析の校正用のコントロール尿について,標準添加法を適用して得られた定量値は参照値とほぼ一致した.
ノート
  • 轟木 堅一郎, 有坂 雅恵, 中島 佳彦, 吉田 秀幸, 能田 均, 山口 政俊
    2005 年54 巻12 号 p. 1211-1214
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/06
    ジャーナル フリー
    We have developed a fluorescence derivatization method of 5-hydroxyindoles (serotonin, 5-hydroxyindole-3-acetic acid, N -acetylserotonin) based on benzylamine derivatization, followed by photocatalytic oxidation. In the present study, a photocatalyst, which was titanium dioxide supported on a diatomaceous earth particle, was used instead of potassium hexacyanoferrate(III) as a chemical oxidizing agent employed in the conventional method. The resulting fluorescent derivatives were separated by reversed-phase liquid chromatography on an ODS column by using a mixture of acetonitrile and 250 mM acetate buffer (pH 4.6) and detected spectrofluorimetrically at 465 nm with excitation at 350 nm. The detection limit (signal-to-noise ratio = 3) for N -acetylserotonin was 16 fmol per 20 μl injection.
  • 吉川 賢治, 岡村 美穂, 井口 美紀, 櫻川 昭雄
    2005 年54 巻12 号 p. 1215-1218
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/06
    ジャーナル フリー
    From the viewpoint of a graphite carbon column with excellent durability, it was applied to the ion chromatography (IC) of several organic acids. The carbon column was permanently coated with the cetyltrimethylammonium ion, and the elution behaviors of several organic acids (acetic acid, lactic acid, succinic acid, malic acid, tartaric acid, citric acid) and inorganic anions (Cl, NO2, NO3, SO42−) were examined according to an ion chromatography that combined conductivity detector using a mobile phase of the benzoic acid system, when an ion-exchange ability was given to the graphite carbon column. Tartaric acid and citric acid, etc. with large valency showed tendency to which the width of each peak extended and the retention time increased. However it was possible to separate excellently for the analytes detected within ten minutes. The calibration curves obtained from the peak areas for the organic acids and inorganic anions were linear, with good correlation coefficients of 0.999. The relative standard deviations (RSD) of the peak areas were between 0.4 and 1.0 for six repeated measurements. The developed method was then applied to the determination of organic acids in several food samples.
  • 中野(太田) 朋子, 齊藤 敬, 佐藤 純
    2005 年54 巻12 号 p. 1219-1222
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/06
    ジャーナル フリー
    Radium isotopes (228Ra and 226Ra) in river-water samples from Japan having low concentrations were attempted to be collected by a Mn-impregnated acrylic fiber. The method was aimed at the in-situ collection of Ra isotopes in large amounts of river water by making effective use of the flow of the river to observe the 228Ra/226Ra activity ratio. Measurements of the 228Ra/226Ra activity ratios were made by non-destructive γ-ray spectrometry. Although the collection efficiency of Ra isotopes by Mn-impregnated acrylic fiber was observed to be dependent on the water pH and temperature, the Ra isotopes in river water in an effective range of pH and temperature could be successfully collected. The 228Ra/226Ra activity ratios observed in several rivers of Japan by the present method were in the range of 1.1∼2.9, which is slightly higher than those observed in rivers of the continental area.
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