マイクロウェーブ加熱分解/誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)による土壌中の
235U及び
238Uの同位体比分析法を開発した.マイクロウェーブ加熱分解では,硝酸-過酸化水素の混酸を用いることで,ケイ酸塩中の天然ウランの溶解を抑制した.また,同位体比を精確に求めるために,岩石標準物質中のウラン同位体比を実試料の同位体比の指標とし,ICP-MSのセルパス電圧をMSのマスバイアス校正に利用した.これらの効果により,放射能を含む標準線源を使用せずにウランの同位体比を0.37% の精度で測定できた.
235U及び
238Uはそれぞれ定量でき,それらの検出下限値はそれぞれ0.010 μg/kgであった.原子力災害などの緊急時において,本法は,従来法である完全酸分解/ICP-MSあるいは
α線スペクトロメトリーと比較すると迅速で広範囲の状況把握が可能である.さらに,東京電力福島第一原子力発電所から7~80 kmの範囲(福島県下115箇所)でモニタリング調査を行った.その結果,サンプリングの地域によってウラン総量に差異はあるものの,同位体比はほぼ一定の天然同位体比であることが確認された.
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