1. ウスプルン処理果袋は製造の年に梨黒斑病の防除上有効である許りでなく, 製造の翌年引き続いて使用してもその効力は落ちない。
2. 梨葉上に於いてボルドー液は撒布後11∼12日に至るも40∼50%の梨黒斑病菌胞子発芽率を示し, SR-406は8∼10日, マンゼートは5∼7日, OB-21とダイセーンは5日前後, 何れも50%の発芽率を示す。ウスプルンは撒布当日は顕著に発芽抑制するが, 2日目以後急速に抑制力を失う。
3. ウスプルンの葉上撒布後の胞子発芽抑制力急減の傾向は濃度800, 1000, 2000, 3000倍の何れでも等しい。
4. ウスプルンのスライド上撒布後の発芽抑制力減退は葉上に於けると同様である。但し直射日光下では日陰下に比べて遙かに激しく減退する。スライド上及び葉上に於けるこの減退は, 6, 8, 30時間と経過時間の増すと共に大となる。
5. ウスプルン並に試作品セレサン乳剤は撒布後直射日光に曝されるとき, 4時間にして殆んど発芽抑制力を失うが, 試作品セレサン水和剤は24時間に至るも殆んど抑制力を失わない。
6. 種籾をウスプルンに浸漬後, 梨黒斑病菌, 稲胡麻葉枯病菌で接種して, 菌の発芽抑制力を検したところ, 種籾の消毒後, 時間の経過と共に表面に於ける発芽抑制力は可成り急速に落ちる。この場合水銀そのものは144日目でも明白に検出された。
7. 撒布効果は, ポット試験と圃場試験と一致し, ウスプルン, ボルドー, OB-21, ウスプルン石灰などのうち, ウスプルンボルドー混用区もつともすぐれ, 次に両液の交互撒布, ウスプルン単用, ウスプルン石灰の順であつた。
8. 新梢に於ける諸種薬剤撒布後の黒斑病菌による室内接種試験の結果は, ウスプルン液が極めて有効で, SR-406, ボルドー, OB-21, ダイセーン, マンゼート等がこれに次いだ。
而してウスプルン液撒布後の経過時間の多少と感染の難易との間に, 特に関係あるようには見られなかつた。
9. 葉上に於ける発芽抑制力の急速な減退にも拘らず, 終局に至つて著しい発病抑制力をもつウスプルンの性質については, 今後極めて多くの問題を残している。
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