本報告はモザイク罹病の百合(
L. specioum f.
rubrum)の葉の表皮に於けるX體に就て記述した。
1. X體は他の多くの植物のモザイク罹病組織内に見られるX體に類似し,所謂Protoplasmic vacuolated bodyにして,通常1細胞に1個存在し,一般に核より大きく形は多種多様なるも核に比べて長形を呈し通常橢圓,紡錘,短筒及び準球形を呈する。
2. 著しく侵された罹病葉に於ては成熟せるX體が多數に形成せられ,嫩葉若くは僅かに發病した植物では之を缺くか又は極幼稚な小體を形成するに過ぎない。
3. X體はEosin, Erythrosin, Heidenhein's haematoxylin, RUGOL氏處方沃度沃度加里, Cotton blue, Bismark brown, Methylen blue, Sudan III, Safranin, Neutral red, N. redとMethylen blueの混合液, Gentian violet, Fuchsin, Orange G及びAnilin greenにて容易に染色せられる。但しX體の之等の色素に對する親和力は核の其に比すれば稍劣るものゝ如くで通常核より淡く染色せられる。核との染分に對しては0.5%のSafranin液にて染めた後N/5鹽酸にて處理する方法最も良く,内部の構造を檢するには0.5%のHeidenhein's haematoxylin染色法が最も良好である。
4. X體は酸に對しては比較的安定なるが,アルカリには甚だ弱く,N/5苛性曹達液にて著しく溶解せられる。而してアルカリに對する溶解の機構より考察する時は,本小體には外部を包圍する爲に特に分化せられた膜は存在せざるものゝ如くである。
5. X體竝に罹病葉に於ける核の水素イオン濃度は比色法に依て測定した結果に依れば兩者共に明かに酸性反應を呈し, pH價は4.0-4.8の間に存在するものゝ如くである。
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