日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
38 巻, 4 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • とくに病原性,ファージ感受性および生物学的性質への影響
    後藤 正夫, M.P. STARR
    1972 年 38 巻 4 号 p. 267-274
    発行日: 1972/09/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Xanthomonas phaseoliおよびX. begoniaeX. citriのテンペレート・ファージを感染させると,これらの細菌は溶原化され,同じテンペレート・ファージを放出した.溶原化された細菌は寄主植物を通過してもその溶原性を失わなかった。これらの細菌の他のファージに対する感受性には,溶原化によって大きな変化が起る場合が多かったが,病原性および炭水化物分解性には何ら変化は認められなかった。一度溶原化された細菌も,培養中に,他のファージに対する感受性を異にしたクローンを生ずることが単集落培養によって明らかになった。同様に寄主範囲を異にするファージを放出するクローンの出現も認められた。
  • 八木田 秀幸, 小室 康雄
    1972 年 38 巻 4 号 p. 275-283
    発行日: 1972/09/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1) クワ・モザイク病の発生の多い畑の土壌に健全クワ実生苗を植え付けたところ,植付後6∼17ヵ月後に輪紋,ひだ葉の病徴が生じ,本病が土壌伝染することが確認された。これら病株からはカウピーに汁液伝染可能な球状ウイルスが検出された。本ウイルスは最近土崎らが報告したクワ輪紋ウイルスと同じものと考えられた。
    2) 病土を7日間風乾すると土壌伝染性が失われた。一方,対照の非乾燥区では土壌伝染がみとめられた。輪紋,ひだ葉を現わすものは,従来からその発生に地域性がみられており,本病の土壌伝染には土壌線虫が関与するものと想定された。そこで発病地土壌から線虫(ドリライムス目3属)が検出されるかどうかを調べた。その結果,Longidorus属線虫の1種が高い頻度で検出されることがわかった。
    3) この線虫は農事試験場大島康臣氏によってLongidorus martini Mernyと同定された。なおわが国では本線虫はクワ以外の作物から検出された例は知られていない。
    4) 本線虫によるクワ輪紋ウイルスの伝搬の有無を知るため,病土から分離した線虫を直接健全クワ実生苗の根元に注入接種する試験とL. martiniの密度の高い土壌に,ひだ葉症状のクワを植付け,その土壌から線虫を分離してクワ実生苗の根元に注入する試験を行なった。伝搬の有無は実生クワにおける病徴の有無と線虫を放飼後3∼12ヵ月後にそのクワから検定植物にウイルスの回収試験を行なって判定した。その結果,検定植物によるウイルスの回収試験から,供試31本中10本の実生クワにウイルスの伝搬が認められ,本線虫によってクワ輪紋ウイルスが伝搬されることが明らかになった。病土周辺から分離したXiphinema sp.によるクワ輪紋ウイルスの伝搬試験の結果は陰性であった。
    なおわが国でウイルスがLongidorus属線虫によって伝搬されることが確認されたのは本論文が最初である。
    5) 土壌伝染およびL. martiniの伝搬試験を行なったクワのうち,伝搬の認められたクワには輪紋,ひだ葉および葉脈えその各病徴を発現し,それらの罹病葉のいずれからもカウピーなどに汁液伝染する球状ウイルスが分離された。このウイルスはカウピー,Chenopodium amaranticolorに汁液伝染するほかC. quinoa C. muraleにも汁液接種により感染がみられた。またクワ輪紋ウイルスの抗血清と寒天ゲル内拡散法で陽性の結果を示した。クワ輪紋ウイルスは現在のところクワに輪紋とともにひだ葉症状も生ずるものと思われる。
    なお,本ウイルスはtomato black ring virusとは血清反応が認められなかった。
  • 横沢 菱三, 生越 明, 酒井 隆太郎
    1972 年 38 巻 4 号 p. 284-289
    発行日: 1972/09/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1) A. raphaniの遊走子は宿主,非宿主にかかわりなく,その根および胚軸に局部的に集積する。
    2) 遊走子の集積は発芽後13日までの子苗について見ると,根よりも胚軸部,特に胚軸基部で常に多かった。
    3) カンラン子苗に均一に遊走子を接種した時,菌の侵入増殖は根部より,胚軸部で激しかった。
    4) 寄主植物であるカンランでは,遊走子は胚軸に集積し,そこから集団的に菌糸で侵入し,植物体内およびその表面で増殖することが認められた。
    5) A. raphaniの遊走子,病土を用いてカンラン子苗に種々の方法で接種した結果,胚軸基部に病原菌の接する条件で,立枯の発生が著しく,根部のみ病原菌に接する条件では発病は軽微あるいは皆無であった。
    6) これらの結果からA. raphaniによるカンラン立枯現象は胚軸基部に局部的に集積した遊走子から生じる菌糸の集団侵入によると想定される。
  • 酒井 隆太郎, 佐藤 倫造, 伊藤 滋郎, 坂村 貞雄
    1972 年 38 巻 4 号 p. 290-298
    発行日: 1972/09/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    アカクローバ罹病葉から分離したPhyllosticta sp.菌の培養濾液から,自然感染葉病斑類似の障害を起こす物質として,既に報告したphyllosinolについで新物質phyllostineを分離した。本物質はphyllosinolについで多量に生産され,その化学構造はphyllosinolに類似する。本報告ではphyllostineとphyllosinolの植物および微生物に対する生理活性を比較した。Phyllostineは低濃度(10-8∼10-4M)で幼植物の生育,特に根部の生育を促進するが高濃度(10-4M)で阻害する。また小豆Cuttingの下胚軸において不定根の形成を促進する。これらの活性は一般にphyllosinolより高い。またphyllostineは幅広い抗菌スペクトルを有し,阻害はphyllosinolの2∼8倍の活性を示した。また抗菌力は各種のSH-化合物により抑制が認められ,また2-hydroxymethyl-1,4-quinoneとの抗菌力の比較試験等から,phyllostineの抗菌作用は,本物質の有するα,β-不飽和ケントおよびエポキシ基によると考えられる。
  • 2. 伝染速度と葉鞘検定によるいもち病抵抗力
    千葉 末作, 千葉 順逸, 島田 慶世, 香川 寛
    1972 年 38 巻 4 号 p. 299-305
    発行日: 1972/09/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    伝染速度に対する抵抗力の影響を解析するために1966年から1969年までの間イネを追肥および移植時期を変えて栽培し,葉いもち病斑数の推移と葉鞘検定による葉いもち抵抗力を調査した。葉いもち病斑数については式y=y0er(t-t2/2T)によって伝染速度を求め,さらにこれを初期病斑数によって補正した補正伝染速度を求めた。本報ではこれを単に伝染速度とした。また式rs=2.3/(t2-t1)・log10y2/y1を用いて短期間伝染速度rsを求めた。伸展度については好適気温に達した後の伸展度の平均値を求めた。この平均伸展度を用いて追肥・移植時期および品種間の差異を検討し,さらにはこれら各処理区の伝染速度と平均伸展度との関係を検討した。
    平均伸展度は追肥および晩植によって大きくなり,これらの処理によりイネの葉いもち抵抗力は低下することを示す。また平均伸展度は品種によって異なる。平均伸展度に対する伝染速度の回帰は正で有意であり,伝染速度は平均伸展度が大きいほど大きい。また推定感染時期の伸展度に対する短期間伝染速度の回帰は正で有意である。これは抵抗力が伝染速度を決める主因の一つであることを示す。そして伝染速度の抵抗力依存度はおよそ40%であるが,これら両伝染速度におよぼす抵抗力の影響は年次によって異なる。このことは環境の年次間変異の主因子である気象条件の伝染速度におよぼす影響がいかに大きいかを示している。
  • 第X報 ビート苗立枯病を起因する数種Pythium
    高橋 実, 田中 寛, 一谷 多喜郎, Romeo V. ALICBUSAN
    1972 年 38 巻 4 号 p. 306-312_2
    発行日: 1972/09/01
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    ビートの栽培はわが国では北海道において,古くから行なわれている。以前暖地への導入が試みられたことがあり,その時苗立枯病が主な病害であった。その病原菌として,Pythium aphanidermatum, P. spinosum, Pythium spp.など数種のPythiumが分離され,新種としてPythium betae M. Takahashi n. sp.を同定した。
    P. betaeの胞子のうは通常球形で発芽管を生ずるが,まれに球のう内に6-10個の遊走子を形成する。蔵卵器は球形,頂生,通常2-3の長い刺状突起を有するが,まれに平滑,径14.3-21.3μ。卵胞子は蔵卵器内に通常充満する。雄精器は異株生,まれに同株生,1蔵卵器に1-2個側着する。本新種は三重県下でビート苗立枯病菌として分離された。
  • 第XI報 ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム処理をしたカボチャ胚軸部に現われる水浸状病斑
    一谷 多喜郎, 米谷 冨男, 高橋 実
    1972 年 38 巻 4 号 p. 313-322_2
    発行日: 1972/09/01
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    人工気象室において甘栗カボチャ幼苗をHoagland液で水耕栽培し,根部にジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム(NaDEDC)処理を行ない,Pythium ultimum(77号菌)を胚軸に接種して出現する病徴を記載した。
    幼苗は若干徒長したが,接種によりガラス室のポット栽培と類似の褐色病斑を胚軸上に形成した。幼苗のcuttingは接種後ほとんどすべて水浸状病斑を形成した。幼苗の胚軸の上端部から髄腔にNaDEDCの注入処理を行なうと,水浸状拡大病斑の顕著な形成がみられたが,結果は不規則であった。Hoagland液および処理時間内に根から胚軸に吸収されたNaDEDCは,ともに供試菌の菌糸発育にまったく影響しなかった。10-4M NaDEDCの根部処理は幼苗に薬害を与えることなく,胚軸上に一様な水浸状拡大病斑の形成を促進した。上記および既報の結果から,NaDEDCの根部処理による水浸状拡大病斑の形成は寄主感受性の増大にもとづくものと考えられる。
  • 桐山 清
    1972 年 38 巻 4 号 p. 323-332
    発行日: 1972/09/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. わが国で発生するタバコ巻葉病は,病微のはげしさが異なるが,温室で接木実験の結果,その差はウイルスの系統の差異ではなく,環境条件の差によるものと思われる。
    2. LCV寄主として,N. knightiana, N. pauciflora, N. bigeloviiなど16種の野生種が新しく追加された。
    3. キレート化合物の添加,病葉のフェノール抽出物のタバコ葉への注射などの機械的接種試験結果はすべて陰性であった。
    4. タバコ(Bright Yellow)の罹病葉からブタノール処理後,高速遠心を行なってウイルスを純化した。この試料は超遠心分析で単一のピークを示し,260mμで最高,238mμで最低の紫外線吸収曲線を示した。逆染色した試料の電顕観察により直径約30mμの球状粒子が認められた。
    5. この純化試料をウサギに注射し,力価64∼128倍の抗血清を得た。この抗血清はLCVと特異的に反応する抗体を含むことが,同種および異種抗原との沈降反応,寒天ゲル拡散法および吸収試験で確かめられた。汁液接種に成功していないウイルスの血清反応の利用度は,きわめて大きいと思われる。
  • 呉 文川
    1972 年 38 巻 4 号 p. 333-341
    発行日: 1972/09/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Xanthomonas citriのSmooth菌株XCJ18より放出され,Smooth菌株XCJ19で増殖したテンペレートファージPXC7は,周縁が不規則で小型の不透明な溶菌斑を形成する。このファージは,77°Cで10分,クロロホルムで1分,あるいはUV (15W, 40cm)で75秒照射することによって完全に不活化される。
    Smooth菌株XCJ19(S)が,PXC7に感染して溶原化すると,そのファージが高頻度の自然誘発をすることによって,溶原性Dwarf型変換体(D (PXC7))となる。同変換体からは溶原性S型復帰突然変異体(S (PXC7)),抵抗性S型復帰突然変異体(SrPXC7)および感受性S型復帰体(SD)を二次的に生ずる。D (PXC7)の一部の菌体は鎖状となり,Sに対して感染性をもつヴィルレントファージCP2に抵抗性となる。
    S (PXC7)とSrPXC7はテンペレートファージPXC7を吸着しなくなるとともにヴィルレントファージCP2に対して抵抗性となる。この事から,Xanthomonas citriにおけるPXC7の吸着部位はPXC7のみに特異的ではなく,CP2にも共通であり,吸着部位の変化がS (PXC7)とSrPXC7の細胞に防禦的装置をあたえて,CP2による感染とPXC7による重複感染とをともに阻止するものと推論される。これらの変化にともなって,S (PXC7)もSrPXC7もともに一部の菌体が鎖状となる。しかし,変換した菌の形態,ファージ吸着能,ファージ感受性などの性状はSDには見られない。したがって,これらの変換はXCJ19が溶原化したあと,その溶原性を維持するかあるいは抵抗性に変化することによって起こるものであることがわかる。
    S, D (PXC7), S (PXC7), SrPXC7およびSDを多針法で夏カンの葉にそれぞれ接種すると,すべてのS型菌は同程度によく増殖し,9∼11日で最大発病率を示す。一方,D (PXC7)は増殖が悪く,潜伏期間が長くなり,21日目になって95%程度の発病率を示し,しかも病斑は小さい。S (PXC7)とSrPXC7とは葉組織内でもそれぞれの集落特徴と溶原性あるいは抵抗性をたもち変化がみられないが,D (PXC7)では9日後から一部の細胞に溶原性または感受性のS型菌に復帰したものが見出される。これらの結果から,Xanthomonas citri XCJ19株に由来するもののうち,S型菌は,ファージPXC7に対する溶原性,抵抗性,あるいは感受性のいかんをとわず,野生株と同程度にいずれも病原力が強く,しかもその強弱の差がみられないのに対し,Dwarf型菌(D (PXC7))はファージPXC7の高頻度自然誘発によって増殖が著しく抑えられるために弱い病原力を示すことがわかる。
  • VI. キュウリ・モザイク・ウイルス感染組織の代謝変動の解析
    加藤 盛, 三沢 正生
    1972 年 38 巻 4 号 p. 342-349
    発行日: 1972/09/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    CMV接種組織内のウイルス侵入細胞は,核のDNA量を測定することによって検出することが出来る。本実験ではこれを利用して,接種組織におけるウイルスの移動および代謝変動の2, 3について検討した。
    1) CMV接種組織では,接種4時間後までは感染細胞の多くは表皮組織にあり,また4時間目では柵状細胞にも感染がみられ,更に8時間目では海綿状細胞でも感染が認められるようになる。このような感染細胞数の増加は大略36時間で停止するが,ウィルスの増殖はその時期から急速となる。
    2) 呼吸変動は感染初期にみられるが,この変動は感染細胞数の増加とのみ高い相関がみられ,ウイルスの増殖量とは密接な関係はみられない。また,ウイルスの最高増殖時においても,ウイルス合成に要するエネルギーは,呼吸の変動をもたらす程大きなものではない。
    3) 酵素活性の変動を,従来の方法による測定値に新らたに「感染細胞率」を加味した方式によって解析した。この方式の目的は感染初期における微量の代謝変動やウイルス感染細胞自体の真の変動のみを検出・測定することである。したがってその結果は従来の方法による場合と異なる。Peroxidase活性では,感染直後の著しい増進はみられるが,4時間目以後には低下し,以後5日目までは増進はない。この感染による異常増進はperoxidase分布の多い表皮細胞層の感染時に起り,ほかの細胞層の感染時には起らない。
    4) Polyphenol oxidase活性は接種後2時間目まで急激に低下する。この低下は,感染細胞での低下のみならず,周辺の非感染細胞内での活性阻害も含むものである。
    5) 本報告で示した「感染細胞率」や,それを加味した代謝変動の解析法によって,従来不明であった点について内容的に明らかにし得ると共に,呼吸など今まで相違の多い結果についても,かなり統一的な見解を得ることが出来る。
  • 日比 忠明, 与良 清
    1972 年 38 巻 4 号 p. 350-356_4
    発行日: 1972/09/01
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    タバコ葉肉組織から酵素処理によりプロトプラストを調製し,これにタバコモザイクウイルス(TMV)を接種後,プロトプラストにおけるTMVの感染・増殖過程を経時的に電顕観察した。その結果,TMV粒子は接種直後に粒子先端部で細胞膜に吸着し,10分以内にプロトプラスト1個あたり約10~102個の粒子がphagocytosisによりプロトプラスト内にとり込まれた。とり込まれた粒子のうち,接種30分後ではその46%,接種6時間後ではその72%の粒子がphagosome中から消失することが観察された。assemblyされたウイルス粒子は接種9~12時間後に最初に細胞質基質中に散在ないしは小集塊をなして認められるようになり,その後時間とともにその数を増して,接種48時間後にはプロトプラスト1個あたり約106個のTMV粒子が結晶状に配列して存在していることが観察された。48時間後までに,核,葉緑体,ミトコンドリアにはウイルス感染に伴う形態異常は認められず,またそれらの内部にウイルス粒子はまったく観察されなかった。
  • 久能 均
    1972 年 38 巻 4 号 p. 357-358_1
    発行日: 1972/09/01
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
  • 西原 夏樹
    1972 年 38 巻 4 号 p. 359-361
    発行日: 1972/09/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1972 年 38 巻 4 号 p. 362a
    発行日: 1972年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1972 年 38 巻 4 号 p. 362b
    発行日: 1972年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1972 年 38 巻 4 号 p. 362c
    発行日: 1972年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
feedback
Top