日本植物病理学会報
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50 巻, 1 号
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  • 小川 奎, 駒田 旦
    1984 年 50 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1 健全なサツマイモ茎部道管を顕微鏡観察すると糸状菌の存在が観察され,その切片から非病原性F. oxysporumを分離した。
    2 本菌株はサツマイモはもちろん,キュウリ,ユウガオ,マクワウリ,ダイコン,キャベツおよびトマトに病原性を示さなかった。
    3 Fusarium属菌7種12菌株をそれぞれ前接種した場合の発病抑制効果は,F. oxysporumとくにサツマイモから分離した非病原性菌株の前接種効果が最も高かった。
    4 本菌株のジャガイモ煎汁液体培地5∼7日間振とう培養菌体懸濁液に,サツマイモつる割病感受性品種「ベニコマチ」の新鮮な切口を浸漬し,つる割病菌汚染土に植付けた場合,処理苗の発病は無処理苗に比べて著るしく抑制された。一方,本菌株の土壌灌注の発病抑制効果は不十分であった。
    5 前接種菌体濃度は高いほど発病抑制効果が顕著であり,浸漬時間は長くなるほど効果が増大した。菌体濃度108個/ml,17時間浸漬した場合,発病抑制効果は最も高かった。
    6 本菌株の前接種は,土壌伝染の他に本病の主要な伝染経路である苗伝染による発病抑制にも有効であった。汚染圃場で防除試験を行った場合にも,菌体懸濁液(108個/ml)に1時間,苗浸漬処理した場合には,ベノミル剤500倍30分間浸漬処理に近い防除効果を示した。さらに,遠心分離機で沈澱濃縮した菌体を苗の切口に塗布する処理方法も有効であった。
  • 走査型および透過型電顕による観察
    尾上 孝利, 谷 利一, 佐川 寛典
    1984 年 50 巻 1 号 p. 10-18
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    走査型(SEM)および透過型(TEM)電子顕微鏡を用いて冠さび菌罹病葉内を観察し,菌体と宿主細胞の接触面の微細構造を検討した。罹病組織内を走行する細胞間菌糸(Ih)は葉肉細胞と部分的に密着している。TEM像では接触部周辺で宿主細胞壁の突出と粘着性物質が認められ,SEM像ではこの部位は不明瞭な境界として観察される。吸器母細胞(HMC)とIhとの間には隔壁がみられ,SEM所見によるとHMCの先端はかぎ型に曲がり,中央はやや膨んだ形態をしている。HMCはかぎ型の先端部で葉肉細胞に密着するが,侵入糸は先端よりやや内側から伸長する。侵入糸の宿主細胞壁貫入には酵素的分解とHMCの物理的力が関与する可能性が示唆される。SEM像によると吸器体は長楕円体で,neck部にはやや膨んだ環状のneckbandがみられる。
  • 井上 正保, 穂坂 まち子, 松本 勤
    1984 年 50 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    純化したTMV-OMでBALB/cマウスを免疫し,この脾細胞とマウス骨髄細胞腫を融合させて抗体産生細胞を作成した。つぎに,単クローン化した18株をマウス腹腔内に接種して,高力価のモノクローン抗体を含む腹水を得た。腹水の抗体価は培養上清のそれに比べて100∼1,000倍も高く,高力価の抗体は1.6×107倍の終末希釈倍数(PHA価)を示した。これらのモノクローン抗体を用いて,TMV-OMの抗原性を寒天ゲル内二重拡散法,RPHI法およびPHA法によって解析した。18株の抗体産生細胞のうち,TMV-OMに特異的に反応する抗体を産生する株が5株,両系統の共通抗原に対する抗体を産生するもの9株,TMV-Tに特異的に反応する抗体を産生するものが4株であった。この結果はTMV-OMの抗原決定基が少なくとも3種類存在することを示している。しかしながら,PHI法によって,さらにTMV-OMの抗原分析を試みたところ,TMV-OMに特異的に反応する抗体の産生に関与する抗原決定基が2種類,TMV-OMとTMV-Tの両系統に反応する抗体の産生に関与する抗原決定基が3種類,TMV-Tに特異的に反応する抗体の産生に関与するそれが1種類存在することがわかった。したがって,本研究の方法によって,TMV-OMの抗原決定基を6種類確かめることができた。
  • Ho-shii CHANG, Ing-mei SHU, Wen-hsiung KO
    1984 年 50 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Phytophthora melonisの分離菌株Pm-1, Pm-2およびPm-3は,P. parasiticaのA2和合型に卵胞子形成を誘導するが,A1型では起こらない。また,,これらの分離菌株は,P. parasitica A2型の刺激に感応して,卵胞子を形成するが,そのA1型には無感応である。このことは,これらの分離株が,ホルモンα1を産生し,かつ,ホルモンα2を受容する能力を有することを示す。したがって,これらの分離菌株は,いずれも有性型グループI-1に属する。一方,分離菌株Pm-4, Pm-5およびPm-6は,単独培養において卵胞子の形成が可能ではあるが,自己対峙やP. parasitica A2型との対峙では卵胞子形成がみられない。しかし,P. parasitica A1型との対峙においては卵胞子を形成し,また,同時にP. parasitica A1型にも卵胞子の形成がみられる。このことから,これらの分離菌株は,ホルモンα2を産生し,かつ,ホルモンα1を受容する能力を有することがわかる。P. parasitica A2型との対峙においてホルモンα1の産生やホルモンα2の受容能力について知ることができなかったのは,抑制効果が働いたためである。
  • 第2報 キュウリうどんこ病菌の生育過程に及ぼす大豆レシチンの影響
    本間 保男, 有本 裕, 見里 朝正
    1984 年 50 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    大豆レシチンは野菜類うどんこ病の防除薬剤として実用化されている。予防的に植物体に散布後の影響については明らかにしたので,本実験では,キュウリうどんこ病菌(Sphaerotheca fuliginea)生育の各過程に大豆レシチン処理を試み,次のような結果が得られた。1) 直接大豆レシチン2,000ppmを散布することによって,分生胞子発芽の77%を阻害した。2) 菌糸伸長は大豆レシチン処理により,無処理の約1/2抑制された。3) 分生子梗形成の抑制率は33%であって,あまり抑制的ではなかった。4) 分生胞子形成は約20時間で無処理1分生子梗あたり5個であったが,大豆レシチン処理では1.5個形成された。5) 新生分生胞子に大豆レシチンを処理したところ,分生子梗側の胞子から収縮し,上部へと進んだ。このような分生胞子を接種しても感染力は弱く,そのうえ,大豆レシチンは分生胞子の飛散を73%抑制した。
  • 佐藤 守
    1984 年 50 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Pseudomonas syringae pv. moriのハロー毒素産生系統Ym5-1は,pYM5と命名された分子量約39メガルトンの1個のプラスミドを含有していた。このプラスミドの伝達能および毒素産生性に関する機能について検討した。まず,Ym5-1株とP. syringae pv. tabaci BR2 (RSF1010)との接合によりRSF1010を導入した。次に,接合菌株Ym5-1 (RSF1010)を供与菌としてE. coli SK1592あるいはP. syringae pv. moriの非ハロー系統Ni27と接合させた結果,RSF1010は受容菌当たり10-6-10-7の率でその移行が確認された。さらに,Ni27との接合においては,RSF1010のみならず,pYM5自身も共に移行した転移伝達株Ni27 (pYM5, RSF1010)が,107株中5株得られた。以上の結果から,pYM5が伝達性プラスミドであることが確認された。一方,Ni27 (pYM5, RSF1010)の5株は,いずれもクワに対してハロー病徴を示さなかった。また,菌株Ym5-1に対してトランスポゾン導入により病原性を喪失させた変異株は,制限酵素Hind III処理によっても区別できない野生型と同じpYM5を保持していた。したがって,Ym5-1株のハロー毒素産生能は,pYM5によって支配されていないと結論できる。
  • 築尾 嘉章, 杉本 利哉, 遠藤 利光
    1984 年 50 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    テンサイの一系統「TK-76-49/2mm-CMS」の採種圃において炭そ病菌によると認められる病害が大発生し,同系統のテンサイ(原料用)でも本病が発生した。病斑は主として葉柄にあらわれ,採種テンサイでは花茎,葉および開花期に花の各部分が侵害され,激しい場合は黒変,枯死した。これらの病斑部から炭そ病菌が高率で分離された。分離供試菌はテンサイ,飼料ビート,食用ビート,フダンソウなどアカザ科植物に対し,強い病原性を有したが,ダイズ,ネギ属には示さなかった。供試菌はColletotrichum dematium f. spinaciae (Ellis et Halst.) v. Arxと同定された。原料テンサイ畑での発病は品種・系統間で明瞭な差が認められたのでフダンソウ属植物12種に対し,接種実験を行った結果,いずれの品種も発病したが,特に「TK-76-49/2mm-CMS」および「TK-76-49/2mm-CMS」を種子親とした雑種第1代品種など4品種・系統が著しく罹病性であった。日本ではテンサイの炭そ病としてC. omnivorum (=C. dematium)による心葉黒枯病が報告されているが,病原性が確認されていない。今回発生した本病の病原は上記と同一と考えられるが,病徴が大きく異なる。したがって著者らは心葉黒枯病をテンサイ炭そ病(Sugar beet anthracnose)と改名することを提案した。
  • 豊田 秀吉, 田中 昇, 平井 篤造
    1984 年 50 巻 1 号 p. 53-62
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トマト萎ちょう病菌培養ろ液に対して抵抗性のトマトを作製するため,その培養ろ液のトマトカルスの増殖に及ぼす影響を調べ,それに対して抵抗性を示すカルスの誘導と選抜を試みた。培養ろ液はトマト萎ちょう病菌をリチャーズ培地で1か月培養したものから調製した。そのろ液をオートクレイブ処理またはミリポアフィルターでろ過し,各々について萎ちょう症の発現を調べたところ,前者では萎ちょう症の出現が遅れたが,後者では粗ろ液と同程度の萎ちょう症が発現した。トマトの発芽種子と腋芽から誘導したカルスに各々の培養ろ液を処理したところ,カルスの生存細胞率は培養ろ液の希釈倍数に対応した。また,生存細胞率が50%以下になると,そのカルスに褐変化が認められた。つぎに,突然変異誘起剤N-methy-N'-nitro-N-nitrosoguanidineを種々の濃度でトマトに処理したところ,50μg/mlの濃度で,オートクレイブ処理培養ろ液に対して抵抗性を示すカルスがもっとも高い頻度でえられた。これらのカルスは数回の継代培養後にもオートクレイブ処理培養ろ液に対して抵抗性を示した。しかし,ミリポアフィルターでろ過した培養ろ液に対して抵抗性を示すカルスは選抜されなかった。
  • 宇杉 富雄, 桑原 達雄, 土崎 常男
    1984 年 50 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ELISAによるWYMV, BYMVおよびSBWMVの検出を試みた。本試験においていずれの場合もγ-グロブリンは2μg/mlで,conjugateは調製原液の800倍希釈液を用いた。
    PBS-Tによる感染葉磨砕液中のウイルスは,WYMVで25,600倍,BYMVで6,400倍,SBWMVで12,800倍希釈まで反応した。
    本法によって育種試験中のコムギのWYMVおよびSBWMVの検定は容易となった。
    病根の磨砕用緩衝液としてPBS-Tを用いると,SBWMVは検出されたが,WYMVおよびBYMVは検出されなかった。WYMVおよびBYMVは0.1M, pH 7.0クエン酸緩衝液を用いることによって検出された。根におけるウイルスの濃度は葉よりも低かった。
    本法において抗WYMV血清はWYMV, WSSMVおよびBYMVと強く反応し,抗BYMV血清はBYMVとは強く反応したが,WYMVおよびWSSMVとは弱かった。しかし,いずれの抗血清もRNMVおよびOMVとはほとんど反応しなかった。
  • 上杉 康彦, 加野 准子, 児玉 治, 赤塚 尹己
    1984 年 50 巻 1 号 p. 69-71
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 堀野 修
    1984 年 50 巻 1 号 p. 72-76
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    This paper reports the results of transmission and scanning electron microscopical examination of water pore apertures in Leersia japonica and Oryza sativa. Emphasis is placed on the interaction between hydathodal invasion of Xanthomonas campestris pv. oryzae and physical structure of water pore. Electron micrographs revealed that the resistance of L. japonica to the hydathodal invasion was attributed to the morphological feature of outer ledges on the upper side of guard cells. The results suggest that well-developed outer ledges in L. japonica prevent the invasion of the causal bacterium.
  • 古屋 廣光
    1984 年 50 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    In 1982 and 1983, eyespot or foot rot of winter wheat, which has not been reported in Japan, was found at first in the Hachirogata reclaimed land in Akita prefecture. The brown and elliptical or “eye” shaped lesions formed on basal leaf sheaths and culms were most diagnostic. The severely infected culms were easily lodged by the wind. The causal fungus was frequently isolated from the diseased tissues and was identified as Pseudocercosporella herpotrichoides (Fron) Deighton based on the morphological characteristics of conidia produced on a dead tiller and on culture medium.
  • 1984 年 50 巻 1 号 p. 82-92
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 50 巻 1 号 p. 92-101
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 50 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 50 巻 1 号 p. 106-113
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 50 巻 1 号 p. 114-130
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 50 巻 1 号 p. 131-144
    発行日: 1984/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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