1 健全なサツマイモ茎部道管を顕微鏡観察すると糸状菌の存在が観察され,その切片から非病原性
F. oxysporumを分離した。
2 本菌株はサツマイモはもちろん,キュウリ,ユウガオ,マクワウリ,ダイコン,キャベツおよびトマトに病原性を示さなかった。
3 Fusarium属菌7種12菌株をそれぞれ前接種した場合の発病抑制効果は,
F. oxysporumとくにサツマイモから分離した非病原性菌株の前接種効果が最も高かった。
4 本菌株のジャガイモ煎汁液体培地5∼7日間振とう培養菌体懸濁液に,サツマイモつる割病感受性品種「ベニコマチ」の新鮮な切口を浸漬し,つる割病菌汚染土に植付けた場合,処理苗の発病は無処理苗に比べて著るしく抑制された。一方,本菌株の土壌灌注の発病抑制効果は不十分であった。
5 前接種菌体濃度は高いほど発病抑制効果が顕著であり,浸漬時間は長くなるほど効果が増大した。菌体濃度10
8個/ml,17時間浸漬した場合,発病抑制効果は最も高かった。
6 本菌株の前接種は,土壌伝染の他に本病の主要な伝染経路である苗伝染による発病抑制にも有効であった。汚染圃場で防除試験を行った場合にも,菌体懸濁液(10
8個/ml)に1時間,苗浸漬処理した場合には,ベノミル剤500倍30分間浸漬処理に近い防除効果を示した。さらに,遠心分離機で沈澱濃縮した菌体を苗の切口に塗布する処理方法も有効であった。
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