日本植物病理学会報
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64 巻, 5 号
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  • 竪石 秀明, 最勝寺 俊英, 鈴木 塘二, 千田 常明
    1998 年 64 巻 5 号 p. 443-450
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    アゾール系シクロペンタノール誘導体イプコナゾール[code name: KNF-317 (1RS, 2SR, 5RS; 1RS, 2SR, 5SR)-2-(4-Chlorobenzyl)-5-isopropyl-1-(1H-1,2,4-triazol-1-ylmethyl) cyclopentanol]には担子菌類,子のう菌類,不完全菌類,接合菌類に対する広い抗菌活性が認められた。また本化合物は種子消毒剤としてイネの主要な種子伝染性病害であるばか苗病,ごま葉枯病,いもち病に対して,さらに,リゾープス,トリコデルマによる苗立枯病に対しても高い防除効果を示した。本剤はおのおのの種子処理方法や条件において,イネばか苗病に対して安定して高い防除効果を示した。そこで,これに関連して有効成分の籾付着保持量,籾中濃度を検討した。各処理方法において浸種後のイプコナゾールの籾中での濃度はほぼ一定しており,また種子消毒後の異なる浸種条件下でもイネばか苗病に対して安定した防除効果を示すのに十分な量のイプコナゾールが籾中へ移行していると推察された。種籾からのイネばか苗病菌の分離頻度と籾の各部分のイプコナゾールの分布を調べた結果,ばか苗病菌の分離頻度の高い籾殻に本剤が多く分布して,籾内での同菌の増殖を抑制し,殺菌的,あるいは静菌的に収穫期までばか苗病の発生を抑えていることが示唆された。また同菌のジベレリン生産性に対する作用を検討した結果,本剤はジベレリン生産阻害能を有しており,これも発病抑止に補完的に関与する可能性が示唆された。
  • 高松 進, 中野 真奈美, 横田 英之, 久能 均
    1998 年 64 巻 5 号 p. 451-457
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ラージパッチ菌Rhizoctonia solani AG-2-2 IV PE-42菌株から全DNAを抽出し電気泳動を行ったところ,染色体DNA以外に3.0kbのバンドが認められた。このバンドは制限酵素によって切断されることから2本鎖DNAプラスミドであると考えられたので,PE-42プラスミドと命名した。アガロースゲルから回収したPE-42プラスミドDNAをプローブとして,ラージパッチ菌およびその他の日本芝の病原菌から抽出したDNAとハイブリダイゼーションを行ったところ,ラージパッチ菌ではすべての菌株で明瞭なシグナルが検出されたが,その他の病原菌ではシグナルは全く検出されなかった。また,さまざまな菌糸融合群および培養型を含むR. solani菌株から抽出したDNAを用いてPE-42プラスミドDNAとのハイブリダイゼーションを行ったところ,ラージパッチ菌株からのみシグナルが認められ,その他の菌株ではシグナルは全く認められなかった。さまざまな発病段階のラージパッチ罹病芝,イエローパッチ罹病芝および健全な芝からDNAを抽出し,PE-42プラスミドDNAとハイブリダイズさせたところ,ラージパッチ罹病芝から抽出したDNAのみでシグナルが検出された。以上の結果から,PE-42プラスミドDNAはラージパッチの遺伝子診断のためのプローブとして有用であると考えられた。
  • Yu-Huan GU
    1998 年 64 巻 5 号 p. 458-461
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Ampelomyces quisqualisは麦芽,酵母エキス寒天培地上では柄子殻のみを形成し,分生子を形成しなかったが,麦芽,酵母エキス液体培地で培養すると7日間で柄子殻および分生子を形成した。振とう培養によって分生子形成量は増大した。各種植物の煎汁で液体培地を調製して本菌の分生子形成量に及ぼす影響を調べたところ,ニンジン,トマト,キュウリの順に形成量を増大させたが,ジャガイモ培地中では菌の成育が見られなかった。ニンジン液体培地で形成させた本菌の分生子とOidium euonymi-japonicaeの分生子とを湿室内のスライドガラス上で培養したところ,前者が後者の表面に寄生している様相が確認された。
  • 金森 裕之, 露無 慎二
    1998 年 64 巻 5 号 p. 462-470
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カンキツかいよう病菌において,Xanthomonas属菌のavrBs3遺伝子ファミリー特有の構造をもつ3つの領域をクローニングし,塩基配列を決定した。これら領域のうち2つは病徴発現までの日数は異なるもののカンキツ葉におけるかいよう形成能をもつが,1つにはなかった。また,これら3つのavrBs3相同領域間および既報のpthAとの違いは構造領域内の102bpを1単位とした繰返し配列のみに存在した。したがって,カンキツ葉でのかいよう形成に必要とされる本領域の繰返し配列における情報が得られた。また,上記3領域は,開始コドンの上流247bpから,終止コドンの下流111bpまでにおよんでいた。すなわち,これら領域はDe Feyterらによって報告されているLZ (Leucine zipper), NLS (Nuclear Localization Signals),逆方向反復配列(LTR)を共通してもっていた。前述の3領域の塩基配列は,これら領域が細胞内で容易に移動可能であることを示唆した。
  • 三木 淳一, 勝屋 聡
    1998 年 64 巻 5 号 p. 471-473
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    日本各地のたばこ畑から収集したタバコ黒根病菌(Thielaviopsis basicola) 42菌株を供試し,日本の栽培品種であるBY4(本病に感受性),MC1およびバーレー21(中度抵抗性)に対する病原力を調べた。いずれの菌株もBY4に対しては平均罹病指数(DI: 0=健全∼5=全根黒変)が3.4以上を示したが,MC1およびバーレー21に対しては罹病指数が連続的に0.8∼4.3の間に分布し,病原力に差が認められた。これら42菌株を,抵抗性品種に対する病原力をもとに,(1)強病原力系統(DIが3以上),(2)中病原力系統(DIが2より大きく,3未満),および(3)弱病原力系統(DIが2以下)の3系統に分類した。各病原力系統から3菌株ずつ,計9菌株を用い,本病に対する抵抗性遺伝子構成が異なるタバコ5品種に対する病原力を調べた。各菌株とも,DelcrestおよびHicks Broadleafの平均罹病指数は,MC1およびバーレー21の指数と同程度であった。Riwaka 5, NFT706およびVirginia Goldの3品種に対する強病原力系統の3菌株の罹病指数は,それぞれ4.2, 2.5および4.2であり,中および弱病原力系統の6菌株の罹病指数は,1.0以下であった。実際の葉たばこ生産において大きな被害を与える可能性がある強病原力菌株を判別するには,抵抗性品種のRiwaka 5と罹病性品種のBY4への接種が必要であると考えられた。
  • 西村 典夫, 中島 智, 沢柳 利実, 難波 成任, 塩見 敏樹, 松田 泉, 土崎 常男
    1998 年 64 巻 5 号 p. 474-477
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    従来ヒメフタテンヨコバイにより伝搬されるとして知られているミツバてんぐ巣病ファイトプラズマ(CJW-P)とタマネギ萎黄病ファイトプラズマ(OY-P)が,ヒシモンヨコバイ(H. sellatus)によっても伝搬されることを明らかにした。また,CJW-PあるいはOY-Pを獲得吸汁終了後18日以上経過したヒシモンヨコバイからPCR法によってCJW-PあるいはOY-Pがそれぞれ検出され,CJW-PおよびOY-Pがヒシモンヨコバイ体内で増殖することが明らかになった。しかし,ヒシモンヨコバイ媒介性のクワ萎縮病ファイトプラズマ(MD-P)は,ヒメフタテンヨコバイ(M. striifrons)では伝搬されなかった。また,シュンギクがMD-Pの宿主となることを新たに明らかにした。
  • 高橋 葉子, 鎌形 泰代, 松村 健, 上田 一郎, Gaylord I. MINK, Philip H. BERGER
    1998 年 64 巻 5 号 p. 478-480
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    北大圃場より分離したインゲンマメモザイクウイルス(BCMV)アズキモザイク系統(AzM-JH)のゲノムについて3'末端領域2167塩基の配列を決定した。外被タンパク質(CP)のアミノ酸配列は,既報のワシントン分離株(BCMV-AzM-W), dendrobium mosaic virus (DeMV)とそれぞれ93.9%, 90.5%の高い相同性を示したが,BCMV-AzM-WとDeMVに共通するN末端の2アミノ酸の欠失は見られなかった。3'末端非翻訳領域は保存性が高く,BCMV-AzM-JHとBCMV各系統との間に90%以上の相同性があった。CPのアミノ酸配列と3'末端非翻訳領域の塩基配列のそれぞれに基づいて,BCMVグループの系統解析をしたところ,BCMV-AzM-JHはBCMV-AzM-W, DeMV, BCMV-US4, BCMV-NL2と一群をなし,これらは進化的に近縁であることが示された。
  • 陳 煌焜, 郭 章信, 陳 隆鐘
    1998 年 64 巻 5 号 p. 481-484
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1997年7月,台湾屏棟県塩埔町で種名・品種名不詳のスパシフィルム(Spathiphyllum spp.)および品種緑巨人(Spathiphyllum sp. cv. ‘Sensation’)に根腐葉斑病(root and petiole rot)が発生した。主な病徴は根腐,葉の褐色壊死病斑,全葉黄化および葉柄下垂で,罹病組織からCylindrocladium spathiphylli Schoultios. El-Gholl and Alfieriが分離された。分離菌の菌糸は無色,菌柄は菌糸から単生し,菌柄先端の頂のうの多くは頭状でスプーン状ないし楕円形のものもあった。分生子柄は無色,二叉に分枝し,分枝先端部に2∼4個のフィアライドが形成された。分生子は連続的にフィアライドから生じて棚状の束となり,無色,円筒形,1∼3隔壁のものが多く,大きさは平均80.5×6.0μmであった。菌糸体は培地上で生育旺盛,初め白色,徐々に菌叢中央から赤褐色に変わった。菌糸生長および分生子発芽の最適温度は24°Cであった。台湾における本病の発生の報告はこれが最初である。
  • 豊田 和弘, 河原 智治, 水越 留美, 小山 昌史, 一瀬 勇規, 山田 哲治, 白石 友紀
    1998 年 64 巻 5 号 p. 485-487
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    エリシターの認識とそのシグナル伝達機構を解析する目的で,エンドウ上胚軸組織におけるジアシルグリセロール生成量を調べた。この結果,エリシター処理組織においては,処理後1分以内に急速なジアシルグリセロールの生成が認められたが,ホスホリパーゼCの阻害剤であるネオマイシンやエンドウ褐紋病菌のサプレッサーの共存下には,その生成は著しく阻害された。この結果は,細胞内におけるイノシトール3リン酸を定量した既報の結果と一致し,ホスホリパーゼC活性の一過的上昇がエリシターシグナルの伝達に必須であることを強く示唆する。このことは,細胞内のジアシルグリセロール濃度の上昇を引き起こすジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤(R59022)で処理された組織では,エリシターの処理によって誘導されるファイトアレキシンの生成量が約4倍に増加することからも支持された。
  • 瓦谷 光男, 草刈 眞一, 木村 雅敏, 瀧澤 啓信, 西橋 秀治
    1998 年 64 巻 5 号 p. 489-493
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    β-1, 3-グルカナーゼ活性の新しい測定法pNPG4分解法は,従来のDNS法に比べて高い感度と良好な直線性を示した。操作も,DNS法に必要な試薬の調製や加熱処理が不要なため,簡便であった。
    半身萎ちょう病菌接種ナスのβ-1, 3-グルカナーゼ活性は,病徴発現の4日前∼1日後にあたる接種14∼19日後に,無接種株の1.5倍以上に上昇した。また,本病自然感染ナスにおいても,病徴発現株の無症葉でβ-1, 3-グルカナーゼ活性の上昇がみられた。これらの結果から,無症葉のβ-1, 3-グルカナーゼ活性をpNPG4分解法により測定することで,半身萎ちょう病を判定できると思われる。
    半身萎ちょう病と初期病徴が似ている青枯病においては,β-1, 3-グルカナーゼ活性の増加はみられなかったが,うどんこ病罹病葉では,同酵素の活性がやや上昇した。
  • 門田 育生, 西山 幸司
    1998 年 64 巻 5 号 p. 494-500
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Acidovorax属植物病原細菌2種3亜種13菌株を供試し,それらの病原性をイネを含む5種の植物に対して調査した。つぎに,各菌株の生菌あるいは菌体成分がイネ褐条病細菌の病斑伸展を抑制する活性について調査し,その活性とイネに対する病原性との関係を解析した。その結果,2種3亜種は供試植物に対する病原性の有無で明瞭に区別され,イネ褐条病細菌3株とトウモロコシ褐条病細菌MAFF 302183株をイネ親和性菌,残りの9株を非親和性菌と判定した。A. avenae MAFF 301505株(イネ褐条病細菌)の細菌懸濁液に非親和性菌9株あるいは親和性菌であるがMAFF 301505株に対する抗菌物質を生産するMAFF 302183株の各生菌をそれぞれ混合して接種すると,イネ褐条病細菌単独で接種した場合と比較して明らかに病斑の伸展が抑制された。また,MAFF 301505株に各菌株から得た菌体成分(CE)を混合して接種すると,各菌株の親和性とは無関係に病斑の伸展を抑制する場合と抑制しない場合とに二分され,病斑の伸展を抑制したCEにはすべて抗菌物質が含まれていた。つぎに,非親和性菌9株の生菌を前接種すると,その6時間後に二次接種したMAFF 301505株が形成する病斑の伸展は抑制された。一方,CEを前接種すると,すべての菌株のCEが二次接種菌の病斑の伸展を抑制したが,その抑制程度は非親和性菌のCEが親和性菌のCEに比べて強かった。供試菌株の生菌はMAFF 301576株を除いてタバコ過敏感反応を誘導したが,CEは誘導しなかった。したがって,CE中にはイネ体に前接種することによりイネ褐条病細菌の病瑳形成を抑制するがタバコ過敏感反応は誘導しない物質が含まれていることが示唆される。また,親和性菌から得たCEと非親和性菌から得たCEの病斑形成を抑制する活性の違いは本細菌の親和性に関係すると推測できる。
  • 塩見 敏樹, 田中 穣, 澤柳 利実, 山本 伸一, 土崎 常男, 難波 成任
    1998 年 64 巻 5 号 p. 501-505
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    A symptomatic mutant with mild symptoms derived from a greenhouse-maintained isolate of onion yellows phytoplasma after using garland chrysanthemum and leafhopper vector, Macrosteles striifrons for about 10 years. From comparing characteristics of the wild type and symptomatic mutant, the symptomatic mutant was similar to the wild type in its host range, transmission pattern and incubation periods in the infected plants and insects, and differed only in the symptoms in diseased plants.
  • 萩原 廣, 我孫子 和雄, 井 智史, 冨川 章, 黒田 克利, 岡本 潤
    1998 年 64 巻 5 号 p. 506-509
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    In autumun 1997 powdery mildew of perennial statice was found in Mie and Oita prefecture, Japan. Many white, powdery mycelial colonies appeared on leaves, stems and branches of the plants. The fungus successfully caused disease on perennial statice after artificial inoculation, but not on Limonium sinuatum. Conidia were cylindrical, (29-) 36-54 (-62)×14-20μm in size, formed singly on conidiophores straightly erected on the aerial mycelia. Lobed appressoria differentiated on the germ tubes from conidia. No cleistothecia were observed. On the basis of morphological characters of the conidial stage, the fungus was found to be an Oidium sp. of the Erysiphe polygoni type.
  • 1998 年 64 巻 5 号 p. 517
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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