日本植物病理学会報
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38 巻, 1 号
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  • 野津 幹雄, 山本 昌木
    1972 年 38 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    Exobasidium gracileの子実層で被覆されたサザンカ肥大葉の超薄切片を観察した。子実層や菌糸塊に接した感受体細胞においては菌糸や吸器は観察できなかった。菌糸は細胞間隙,中層,細胞壁に存在し,細胞壁を陥入させる場合もある。子実層の菌糸は比較的太く,核や液胞,脂質球が観察できるが,中層部にある菌糸の細い部分では観察できない。菌糸の存否に関係なく,肥大細胞の細胞壁の厚さは細胞により,あるいは1個の細胞の場所によって異なる。塊状の菌糸周辺には感受体細胞壁と同程度の電子密度の物質が充填している。肥大細胞の大部分は液胞が占めており,細胞質は細胞壁に沿ってきわめて薄い層で存在するので,葉緑体,ミトコンドリア,ゴルジ体などは細胞壁に近接した位置にある。葉緑体には発達したラメラや好オスミウム顆粒が認められる。肥大細胞は原形質分離はおこらず,細胞膜は細胞壁に密着している。
  • G.S. SHEKHAWAT, D.N. SRIVASTAVA
    1972 年 38 巻 1 号 p. 4-6_1
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    えい花および種子の生育ステージごとに,穂にイネ条斑細菌病菌を接種したところ,子房,雄ずいおよび胚乳はいずれも褐変もしくは黒変して枯死し,えいは褐変した。成熟した種子では,えいの内側に病原菌が残存しているのを発見した。
    幼芽は,発芽中にえいの内側で越冬した菌によって汚染される。鞘葉,不完全葉および第1葉は,それぞれ開口した気孔,半開口および正常な気孔を通して,順次感染する。第1葉の伸長によって,病原菌は地上部へと運ばれる。出穂時の種子感染は,止葉上の噴出菌泥によっておこる。
  • G.S. SHEKHAWAT, D.N. SRIVASTAVA
    1972 年 38 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ条斑細菌病菌,Xanthomonas translucens f. sp. oryza (Fang et al.) Pordesimo (=X. oryzicola Fang et al.)の生存,寄主範囲および発病に及ぼす諸要因について研究した。
    発病圃場からの種子は次の作期にまくと,圃場条件でも室内条件でも発病苗を生じた。これらの苗からは細菌が分離され,その病原性が確かめられた。しかし,このような種子では細菌感染を示す病徴が見られず,病原細菌も分離されなかった。病原細菌は病植物の遺体では永存せず,室内で保存した葉および細菌塊中でもそれぞれ90日および75日までしか生存しない。この病原細菌は30種のイネ科植物,トウモロコシを含む8種の禾穀類,4種のCyperus属植物を侵さない。
    若いイネの葉は本病に感受性高く,古くなるに従って抵抗性になる。感染には高湿度(関係湿度83.0-89.5%)または早朝の結露が2-3日間続くことが必要である。病斑の拡大は湿度に関係なく中程度の温度(26.1-30.5°C)で促進され,低い温度(22.4°C以下)では抑制される。
  • 1. 圃場における伝染速度の推定とそれに及ぼす2, 3要因の影響
    千葉 末作, 千葉 順逸, 島田 慶世, 香川 寛
    1972 年 38 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1966年から1969年までの4年間に,種々の条件で栽培したイネに発生した葉いもちの進展曲線y=Y/1+ke-rt(生長曲線式)とy=y0er(t-t2/2T)の2式に対する適合度を比較した結果,後者の適合度(決定係数による)の方が高かった。後者を用いて伝染速度(r)に影響する2, 3の要因について検討した。
    伝染速度は第1回調査期の病斑数との間に有意な負の相関関係が認められた。これは病斑数が増すと伝染速度を低下させる密度効果が存在することを示した。この密度効果を除くために伝染速度を初期病斑数によって補正し,それによって種々の要因の伝染速度に及ぼす影響をみた結果は次のようである。
    追肥や晩植は伝染速度を大きくする作用がある。伝染速度には品種間差異が認められる。伝染速度の各種処理(品種・追肥の時期・移植期)区間の差は年次間差異や追肥量による差より小さく,伝染速度におよぼす気象や追肥量の影響が品種・追肥・期移植期などによる影響より大きいことを示した。
  • V.K. GUPTA, S.P. RAYCHAUDHURI
    1972 年 38 巻 1 号 p. 22-24
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カテキン,没食子酸,ガロタンニン,エラグ酸の4種の化合物について,ジャガイモYウイルスに対する試験管内および培養組織内での阻害効果を試験した。カテキンとガロタンニンは試験管内でそれぞれ39.5%および48.1%の阻害を示したが,没食子酸とエラグ酸とでは阻害が比較的少なかった。培養カルス組織内でのウイルスの増殖に対しては,没食子酸とガロタンニンとがそれぞれ67.5%および66.7%と高い阻害を示したが,他の2化合物では阻害は少なかった。
  • 稲葉 忠興, 梶原 敏宏
    1972 年 38 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    キュウリべと病菌菌糸の伸長に対する明処理または暗処理の影響を解剖学的に観察した。その結果,
    1. 菌糸数および吸器数は接種2日後までは変化しなかったが,接種3日後から急激に増加しはじめ,かつ明処理および暗処理の差が明瞭になり明処理の方が暗処理より増加がいちじるしかった。接種5日後の菌糸数および吸器数は,明処理の値を100とすれば暗処理の値は34-57であった。
    2. 接種5日後の菌糸幅は明処理では平均5.4μ,暗処理では平均4.6μで暗処理すると菌糸の幅がせまくなった。
    このように,キュリべと病感染葉を暗黒下におくと病斑中の菌糸の密度や幅がいちじるしく減少するが,これがさきに報告したように感染葉を暗黒処理すると病斑の発現が抑制される原因になっているのであろうと推察される。
  • 発生予察の1方法
    清沢 茂久
    1972 年 38 巻 1 号 p. 30-40
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    長野農試で栗林・市川により得られた飛散胞子数に関するデーターを次の3式を用いて解析した。
    y=Y/1+ke-rt (1), y=Y'/1+ke-rt (2), y=y0er(t-t2/2T) (3)
    ここでk=(Y-y0)/y0あるいは(Y'-y0)/y0, Yはその年の最終病斑数(累積胞子数),Y'はこれまでに得られたYの最大値,y0伝染開始期の病斑数,rは伝染速度あるいは菌の増殖率,tは時間(日)Tは病斑数の増加が止る時期。累積胞子曲線は(1)式にもっともよく合うが,この式はYをあらかじめ決められないため発生予察への利用価値が少ない。(2)式と(3)式を比較すると(3)式の方がよく合う。したがって,(3)式は発生予察に利用しうるものと考えられる。(3)式に実測曲線をあてはめ,横軸にlogeyを,縦軸に(t-t2/2T)をとって図を書いたところ,1本の直線よりもむしろ屈折した2本の直線を描いた。このことから,logyを用いて発生予察する方法を考案した。
  • 清沢 茂久, 塩見 正衛
    1972 年 38 巻 1 号 p. 41-51
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    病害防除のための多系混合方式の効果を知るために,罹病性品種の単独栽培と抵抗性品種と罹病性品種の混合栽培における病勢進展の比較に関する模凝試験を電子計算機を利用して行なった。
    種々の病原菌の飛散胞子の分布はy=βe-αdに従う(yは病斑数あるいは胞子数,dはメートル単位の距離,αとβはそれぞれ飛散勾配と伝染源植物上の病斑数)。
    もし株間距離を距離の1単位としてとったときのαの値が0.2以下であるならば,罹病性植物集団の中に1:1の割合で抵抗性植物を混合したことによる病勢進展の抑制はLeonardの(y'/y0)=mn(y/y0) (y, y'はそれぞれ単独栽培と混合栽培におけるn伝染世代後の病斑数,y0は伝染開始期の病斑数,mは罹病性植物の混合比率)で表わされる。抵抗性品種混合の効果はαが0.2以上になると上式で示されるよりもその効果は小さくなる。
    実際の圃場では,重複感染がCammackが指摘した外部からの胞子の混入や伝染世代の増加と同様株に飛散胞子分布曲線の平担化に重要な役割を果しているものと考えられた。
  • 清沢 茂久
    1972 年 38 巻 1 号 p. 52-59
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    病害抵抗性品種の混合栽培と交替栽培のいずれが抵抗性品種のより効果的な利用方法であるかを知るための方法を理論的に検討した。
    病原菌の標準条件(環境の年次変動のない条件)の下での年間増殖曲線がdy/dτ=yλ(yは各年の伝染開始期の病斑数,τは年数),したがってy=y0eλτで表わされるとき,混合栽培のときの寿命(罹病化までの年数)(T')とそれらの品種を交替栽培(1品種が罹病化する直前に第2の品種に切換える)したときの寿命(T)との間にはT/T'=vλc'c(vは用いた品種数λc'λcはそれぞれ混合栽培と交替栽培圃場での病斑の年間増加率すなわち菌の適応力)の関係がある。この年間の菌の増殖率(λ)と年内の増殖率(r)との間には,年内の増殖がy=y0erty=y0er(t-t2/2T)で表わされるときには,rtE+logeθ=λあるいはr(T/2)+logeθ=λで表わされる。tEあるいはTはそれぞれの式の病斑数の増加が終つた時期である。年内の菌の増殖に密度効果が存在するときにはこのような簡単な関係式は得られない。
    それゆえ,年内の増殖曲線の性質について,とくに密度効果の有無について知ることが問題の解決に必須である。長野県豊科町での31年間の累積胞子曲線について検討した結果からは密度効果は認められなかった。
  • 津田 盛也, 上山 昭則, 中野 益男, 藤野 安彦
    1972 年 38 巻 1 号 p. 60-67
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネごま葉枯病菌の脂質および脂肪酸組成を検討した。Folch (1957)法に準じて本菌をクロロホルム-メタノール(2:1, v/v)で処理して総脂質を得た。総脂質をけい酸カラムクロマトグラフィーによって非極性脂質と極性脂質に分画し,それぞれの組成を調べた。総脂質の80%以上が非極性脂質であって,おもな構成脂質はトリグリセリドであった。極性脂質画分には,ホスファチジルエタノールアミン,ホスファチジルコリン,セラミドモノヘキソシド,未同定の脂質が認められた。ついで本菌の脂肪酸組成を調べるためにStoffelら(1965)の方法に従って,総脂質,非極性脂質,極性脂質の各画分を処理し,ガスクロマトグラフィーによって調べた。その結果,本菌の主要構成脂肪酸はC16:0, C18:0, C18:1,およびC18:2であった。中でもC18:2がもっとも多かった。極性脂質画分に検出されたセラミドモノヘキソシドは植物病原菌においてはいまだ報告されていないものである。
  • H.E. KAUFFMAN, R.S.K.V.S. PANTULU
    1972 年 38 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    インドの稲作地帯38ヵ所から採集したXanthomonas oryzae 161菌株の4分別イネ品種に対する病原力とファージ7株に対する溶菌反応を検定した。品種BJ1はもっとも幅広い抵抗性を示し,Malagkit SungsongとEarly Prolificがこれにつぎ,台中在来1号は2菌株を除くすべての菌株に感受性であった。菌株間にかなりの病原力の差が見られるが,レースの存在は証明されなかった。ファージ株に対する溶菌反応の差もいちじるしかった。
  • 下村 徹
    1972 年 38 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. N. glutinosaまたはXanthi ncの葉へTMVを接種してこの葉にlocal lesionを形成させたのち,この株をそのまま一定の温度(22°C)に保った場合に,TMVが茎頂部の新葉へ移行することはないが,lesion形成後30°C(この温度では通常TMVに全身感染する)に保った場合にも,TMVが新葉へ移行する場合は少ない。
    2. 接種後22°Cに保った場合の接種葉の葉柄部分からはTMVはまったく検出されないか,されても微量である。また,これらの株を30°Cに移した場合は,TMVは接種葉のlesion周縁の外観健全な組織から多量に検出されるのにもかかわらず,その葉柄部分からは多量には検出されず,同じ株の新葉からはまったく検出されない場合が多い。葉にlesionが形成されたのちでは,葉から茎へのTMVの移行が,中肋から葉柄基部にいたる部位で阻止されるのではないかと考えられる。
    3. 接種葉の葉身におけるlesion形成に伴って中肋または葉柄の一部に褐変が起きている場合には,その部分を中心にその周辺の篩部ならびに柔組織にわたる部位でのカローズの集積がいちじるしい。これらのカローズの集積とTMV移行の阻止との関係について考察した。
  • 蔡 碧, 新海 昭, 向 秀夫, 中村 重正
    1972 年 38 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1. 発病前のサツマイモの葉ではマイコプラズマ様微生物(MLO)が観察されなかったが,初期病徴の発現に伴って棍棒状および分岐状のMLO粒子が多数観察された。
    2. 典型的な病徴を示すサツマイモおよびアサガオでは,寄主によってMLOの形態に差が認められなかったが,葉脈・葉柄・茎・花弁および根の各器官はで粒子の形態,分布にわずかの差が観察された。とくに成熟した篩管部においてはMLOは細胞膜に沿って多く存在し,茎の生長点付近および花弁の未成熟な篩管部ではMLOは細胞質の中にも存在し分裂増殖中と思われる粒子が多かつた。
    3. MLOの細胞間移動中と思われる像が篩孔で多数観察された。
    4. 罹病植物の細胞ではリボゾーム,endoplasmic reticulumの増加およびvesicleのかなり発達したmultivesicular bodyが観察された。
    5. 罹病植物の篩管部の細胞には,液胞内に大きさ0.1μから2μ,電子密度の高い方形の結晶体が特異的に観察された。
  • 宮本 雄一, 雨宮 良幹
    1972 年 38 巻 1 号 p. 86-87
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 山田 員人, 梶原 敏宏, 尾添 茂
    1972 年 38 巻 1 号 p. 88-89
    発行日: 1972/01/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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