1. 同一條件の下に草丈約25cm前後に達したる稻苗に對し,同時に稻胡麻葉枯病菌胞子懸濁液を噴霧して接種し,凡ての條件を同一にせる明暗2個の接種箱内に別々に納め, 9-11時間の後取出して同一條件の下に置き,發病後其病斑數を調査せしに暗區の方の病斑數は明區のそれに優れり。
2. 稻胡麻葉枯病菌の點滴培養及び液體培養を行ひ, 4-8時間以内の分生胞子の發芽數竝に發芽管の長さを測定したるに共に暗區のものが明區のものに稍々優る傾向を示せり。
3. 1及び2に述べたる事實を綜合するに,暗區が明區よりも本菌の寄主體侵入に對し好都合なる原因の一部は一定時間内の本菌分生胞子の發芽竝に發芽管の伸長が暗所に於て明所に於けるよりも稍々良好なる傾向ある事實を以て説明し得るが如し。
4. 1に於て述べたると同樣の稻苗に,同時に接種し26-28℃の接種箱内に20-24時間保ち取出して後種々なる強さの日光の下に置きて發病後にその病斑數を調査せり。その結果を見るに白木綿を以て二重に被覆して遮光したるものは發病程度最も多く,標準區及び同じく一重に被覆したるものは順次に減少してこれに次ぎ,黒紙を以て被覆したるものは發病程度最小を示せり。
5. 1に於て述べたると同樣の稻苗を接種前に3-4日遮光し,接種して20-24時間26-28℃の接種箱内に保ちたる後温室内に竝置し發病程度を調査せり。その結果を見るに白木綿を以て一重に被覆して遮光したるものは發病程度最も多く,黒紙により被覆し最強の遮光を行ひたる稻苗及び標準區順次に減少して之れに次ぎ,白木綿を以て二重に覆ひたるものが最少を示せり。
6. 接種前遮光に於ても接種後遮光に於ても共に或程度の遮光は稻胡麻葉枯病の發生を助長する傾向あるも,遮光の度強きに過ぎれば反對に發病を抑制する傾向を示すものと看做し得るが如し。
抄録全体を表示