1. ヒメトビウンカの4代にわたりイネ縞葉枯ウイルスを継代接種した実験で,最初の接種源が少なくとも1.25×10
6倍に希釈されたが,これを注射したウンカによるウイルスの伝搬が認められた。保毒虫汁液の希釈限度は100~1,000倍にあるから,この結果は,イネ縞葉枯ウイルスのヒメトビウンカ体内での増殖を示すと考えられる。
2. 保毒虫汁液を注射したウンカからウイルスの検出を試みた結果,注射2, 5日後の虫体からは検出されなかったが,10日後は10倍,15日後は50倍希釈液から検出された。
3. 保毒虫の体液と脂肪体,卵および雄性内部生殖器官からウイルスが検出された。しかし消化管からは検出されなかった。
4. 高見の塩類溶液にD-グルコースと各培養部分の汁液を加えたものを培養液とし,病イネに2日間飼育後,脚,翅,消化管,マルピギー氏管,内部生殖器官を摘除した成雄虫の頭,胸,腹部を13日間,また病イネに3日間飼育した雌雄の成虫から摘出した内部生殖器官を12日間,それぞれ懸滴法で培養した結果,培養前には検出されなかったウイルスが,培養後には腹部と雌雄の各内部生殖器官から検出された。
5. ウンカの血球,生殖細胞,唾腺,真皮細胞および脂肪体の核と細胞質の形態には,保毒の有無による明らかな差異は認められなかった。
6. ウンカの各組織器官におけるヒアルロン酸, RNA, DNA,リポイド,リン脂質の含量およびacid-ならびにalkaline phosphataseの活性には,保毒に伴なう明りょうな変化がみられなかった。しかし脂肪体と菌器におけるグリコーゲンとLillie法で検出される多糖類の含量は,保毒虫では無毒虫より少ない傾向がみられた。
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