キュウリべと病の病斑形成と光の関係について実験を行なった。その結果,
1. 接種後,暗処理すると病斑形成がいちじるしく減少した。しかし,接種前2日間の暗処理は,接種後自然光条件下におけば,何ら影響を与えなかった。
2. 接種後の暗処理時間を変え,処理時間を長くすればそれに伴って病斑の形成も少なくなる。とくに,3日間(接種中の暗処理時間を含む)および4日間の暗処理によって急激に病斑面積が減少した。
3. キュウリ葉の光合成量が飽和点に達しないような光の強さの範囲では,光の強さが弱くなるにしたがって病斑の形成が減少する。とくに補償点(0.05cal/cm
2/min)以下の光の強さでこの傾向がいちじるしかった。
4. 光合成阻害剤を使用してキュウリ葉の光合成と病斑形成との関係を調べた。キュウリ葉に光合成阻害剤を散布した場合,光合成阻害をおこすリニュロンでは病斑形成が減少したが,光合成阻害をおこさないシマジンでは減少しなかった。さらに,リニュロンの濃度を10-50ppmの範囲で処理すると,濃度が濃くなるほどキュウリ葉の光合成阻害がいちじるしくなり,それに伴って病斑形成が減少した。とくにリニュロンの濃度が30ppmになると,病斑の形成はいちじるしく低下する。かつこの濃度ではべと病菌の分生胞子発芽はまったく影響されなかった。
このようなことから,キュウリべと病では寄主の光合成が発病に関係し,光合成が低下すると病斑の形成が少なくなることが明らかになった。
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