日本植物病理学会報
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追悼文
原著
  • 内橋 嘉一, 高野 仁, 田中 雅也, 田坂 勝次, 神頭 武嗣
    2024 年 90 巻 1 号 p. 5-13
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル 認証あり

    308 nmをピークとするLED光源(UVL308)と,311 nmをピークとするLED光源(UVL311)によるイチゴうどんこ病および炭疽病の発病抑制を検討した.中発生条件の冬期,秋冬期の試験では,UVL308区のうどんこ病防除価はそれぞれ91.9,86.9と高く,UVL311区の74.8,61.0を大きく上回った.一方,多発生条件の春期の試験では防除価はUVL308区で62.4,UVL311区で64.5となり,殺菌剤との併用が必要と考えられた.これらの試験結果を一般化線形混合モデル(GLMM)で解析した結果,UVL308の無照射に対する回帰係数の推定値は-1.82,UVL311では-1.55と発病を抑制する効果が認められた(p<0.01).また,UVL308区は炭疽病に対する発病抑制はあるものの,その程度は低く,UVL311区の発病抑制は判然としなかった.UVL308の波長領域のうち,55.3%が290 nmから310 nmの波長域に含まれたのに対して,UVL311では38.9%にとどまったことが両者の発病抑制の差の要因であると考えられた.さらに,いずれの試験でも葉の傷害などの生育障害は見られなかった.以上のことから,UVL308はイチゴうどんこ病を高度に抑制,炭疽病を抑制し,UVL311はうどんこ病を抑制することが明らかになった.今後,LED光源の特性を活かした波長域の最適化や照射強度の調節により,UV-Bを活用した新たな病害虫同時防除法の開発にこの結果を活用できる.

  • 猫塚 修一, 藤田 章宏
    2024 年 90 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,一般園地における褐斑病の流行初期と盛期の発生について,一次感染開始日と前年秋期の発生の影響を解析した.岩手県内の3地域における一次感染開始日(平均)は,1998~2016年まではリンゴ品種「ふじ」の落花期以降であったが,2017年~2022年は開花期であった.過去25年間(1998~2022年)の巡回調査結果863事例を使用し,園地レベルでの発生の有無を応答変数,各要因を説明変数とするロジスティック回帰分析を実施した.その結果,流行初期と盛期の発生は「開花期感染」や「前年秋期の発生」と有意な関連があり,両要因を説明変数とする一次感染モデルにより説明できることがわかった.また,75事例の発生園地率を用いた地域レベルの解析では,流行盛期の発生量の概評「多」(発生園地率43.3%超)について,「開花期感染」と「前年秋期の発生量」を説明変数とする一次感染モデルによって説明することが可能であった.流行盛期の発生量に関する一次感染モデルの判別的中率は87%であり,二次感染モデルの場合(88%)と同様に80%以上の精度を示した.以上の結果から,褐斑病の流行盛期の発生には一次感染の時期や量が緊密に関連しており,特に開花期感染は広域的な発生をもたらす重大なリスク要因であることが示された.

令和5年度地域部会講演要旨
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