日本植物病理学会報
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87 巻, 3 号
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会長講演
学会賞受賞者講演
学術奨励賞受賞者研究要旨
原著
  • 佐藤 裕, 平山 和幸, 戸田 武, 奈良 知春, 古屋 廣光
    2021 年87 巻3 号 p. 133-145
    発行日: 2021/08/25
    公開日: 2021/09/16
    ジャーナル フリー

    2011年,秋田県および青森県の収穫期前後のリンゴ果実に,直径5 mm未満でほぼ円形の小黒斑の発生が増加し,その後も毎年,多発する園地が認められている.この小黒斑から白色菌叢の糸状菌が高率で分離され,同菌を樹上の果実に接種するとこの病斑に酷似する斑点が発生し,それから接種に用いた糸状菌が容易に再分離された.接種試験に用いた菌株は,形態的および分子生物学的特徴に基づいてPhlyctema vagabunda Desmazières [Syn. Neofabraea alba (E. J. Guthrie) Verkley, Gloeosporium album Osterw.]と同定された.これらのことから,同菌はリンゴ果実に侵入して小黒斑を生じる植物病原菌であり,近年この地域で発生している本症はPhlyctema vagabundaの感染によると推察された.P. vagabundaは諸外国でリンゴやナシの果実に発生するbull’s-eye rotの病原菌であり,同病の症状は我が国で黄腐病とされる病気と酷似する.そこで貯蔵中のリンゴ果実に発生した黄腐病の病斑から糸状菌を分離したところ同菌が容易に分離され,分離菌をリンゴ果実に有傷接種したところ黄腐病の典型的な病斑が形成された.これらのことから,リンゴ黄腐病の一部は同種によるものと考えられた.また,小黒斑から分離された菌をリンゴ果実に有傷接種した時にも黄腐病に酷似する病斑が形成された.以上の結果をもとに,黄腐病の病原としてP. vagabundaを追加すること,およびその英名をbull’s-eye rotとすることを提案した.また,これまで黄腐病および諸外国で見られるbull’s-eye rotは収穫後に発生する貯蔵病として知られているが,貯蔵中に見られるのと同様の大型の腐敗性病斑が樹上でも発生することが明らかとなった.収穫前の腐敗性病斑の発生は諸外国においても報告は見当たらない.

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