日本植物病理学会報
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63 巻, 2 号
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  • 脇本 哲
    1997 年 63 巻 2 号 p. 67-68
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 植原 珠樹, 荒瀬 栄, 本田 雄一, 朴 杓允, 野津 幹雄
    1997 年 63 巻 2 号 p. 69-77
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネいもち病菌が胞子発芽時に生成する基本的親和性成立に関与する毒素で,本菌の宿主植物であるイネおよびオオムギ葉と非宿主植物であるシコクビエ葉を1, 6または12時間処理し,電顕を用いてその作用を観察し画像解析により検討した。毒素による初期変性は処理1時間後から認められ,ミトコンドリアの基質は消失し,クリステ含有率は低下した。これらの毒素作用はミトコンドリアに特異的であり,他の細胞内器官には変化は認められなかった。この現象はオオムギおよびイネの表皮,葉肉および維管束細胞において認められ,さらにイネ葉では毒素生成菌株に感受性であるイネ品種と抵抗性であるイネ品種の双方のミトコンドリアに観察された。一方,非宿主植物のシコクピエではいずれの処理時間においても毒素による微細構造変化は認められなかった。毒素によるミトコンドリアの変性は,イネいもち病菌の宿主植物に種レベルでのみ認められ,毒素の感染誘導活性とよく一致した。これらの結果は,毒素による宿主細胞のミトコンドリア変性はイネいもち病菌が宿主植物との間に基本的親和性を確立するために必要不可欠な現象であることを示唆している。
  • 内藤 陽子, 本田 雄一, 熊谷 忠
    1997 年 63 巻 2 号 p. 78-82
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ガラス室内の自然光下で紫外線(UV-B: 290-320nm)付加照射を行い, Fusarium oxysporum f. sp. spinaciae (F.o.s.) によるホウレンソウ萎ちょう病の発生に及ぼす影響を調査した。F.o.s.接種土壌では,紫外線付加照射によってホウレンソウ萎ちょう病が誘発され,病原菌の接種濃度が低い方が紫外線付加照射による発病率の増加が大きくなった。また,ホウレンソウ胚軸にF.o.s.を針接種し,接種直後に紫外線付加照射を開始したところ,土壌接種の場合と同様に紫外線付加照射によって萎ちょう病の発病の誘発が顕著に増加した。土壌接種実験および針接種実験の両実験で,すべての立枯個体および一部の無病徴個体の根部から接種菌が再分離され,接種区で栽培したホウレンソウがF.o.s.を保菌していた割合は,紫外線付加照射区,無照射区とも実験終了時には80%以上となった。しかし,針接種実験で保菌率を経時的に調査したところ,紫外線付加照射開始後3日目ですでに保菌率に差が認められた。以上の結果から,紫外線(UV-B)の付加照射は,ホウレンソウ根内におけるFusariumの伸展を促進する可能性があるとともに,ホウレンソウ萎ちょう病の発生を顕著に誘発することが明らかになった。
  • 中保 一浩
    1997 年 63 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    青枯病抵抗性トマト台木品種LS-89と感受性品種ポンデローザの植物体内における青枯病菌の分布と増殖を調べた。30°Cのグロースチャンバー内で断根した30日苗を青枯病菌8107S懸濁液(107cfu/ml)に浸漬し接種した。ポンデローザでは接種14日目のすべての主根,茎部の試料から病原細菌が検出された。根部,茎部の青枯病菌密度は接種10日目には生重量1g当たり108あるいは109個に増加した。一方,接種したLS-89は無病徴感染し,接種14日目の主根と胚軸上部での青枯病菌の検出率は90%以上であった。茎からの検出率は第1-2葉間の茎部で約80%であり上位の茎部にいくに従い低下した(第5-6葉間の茎部で30%)。青枯病菌密度は接種4日目に主根,胚軸上部および第1-2葉間の茎部において生重量1g当たり106個まで増殖したが,その後は一定であった。胚軸上部の横断面の光顕観察により,青枯病菌はポンデローザの一次および二次木部組織に広く認められたが, LS-89では一次木部組織の一部のみに分布していた。以上の結果,抵抗性LS-89では青枯病菌の一次木部組織での局在化と植物体内での移行抑制が認められた。
  • 佐野 輝男, 李 世訪, 尾形 正, 落合 政文, 鈴木 千代吉, 大沼 幸男, 四方 英四郎
    1997 年 63 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    日本(福島県と山形県)で栽培されているセイヨウナシからウイロイドを検出した.塩基配列を解析した結果,フランスでセイヨウナシからの分離が報告されている pear blister canker viroid(PBCVd)と同定された.福島分離株は312塩基,山形分離株は313塩基よりなり,両分離株間の違いは僅か1カ所で,福島分離株の54番目と55番目の塩基の間に山形分離株では一塩基余分にAが付加されていた.フランス分離株(P2098T, Hemandez et al.,1992)と比較して福島分離株では塩基置換17カ所,挿入3カ所,欠失6カ所の合計26カ所,山形分離株ではさらに挿入1カ所の合計27カ所で変異が認められた.本ウイロイドと福島県および山形県で発生が報告されているセイヨウナシ粗皮病,くぼみ果病との関係を検討した結果,福島県から採集した粗皮病罹病セイヨウナシでは50% (6/12)また山形県から採集したくぼみ果病罹病セイヨウナシでは37.5% (3/8)からPBCVdが検出され,共に健全セイヨウナシの0% (0/9)と日本ナシの0% (0/8)に比べ明らかに高い検出率を示した.
  • 海道 正典, 森 正之, 三瀬 和之, 奥野 哲郎, 古澤 巖
    1997 年 63 巻 2 号 p. 95-98
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    形質転換植物におけるプロムモザイクウイルス(BMV) RNAの蓄積量を増加させるため,タバコ輪点ウイルスのサテライトRNA由来のリボザイム配列を利用し,植物内で転写されたウイルスRNAの複製効率の増加を試みた.カリフラワーモザイクウイルス35SプロモーターとBMV RNAのcDNAとターミネーター配列を含むプラスミドのcDNA配列の3'末端にリボザイム配列を挿入したプラスミドを作製し, BMVの局部病斑宿主であるChenopodium amaranticolorに接種した結果,リボザイム配列を持たない対照プラスミドに比べて,約4倍の感染性を示した.同様の遺伝子カセットをタバコに導入した結果,これら形質転換植物におけるBMV RNAの蓄積レベルは,リボザイム配列を持たない対照植物におけるBMV RNA蓄積の20倍であった.
  • 西岡 正憲, 古屋 成人, 中島 信彦, 松山 宣明
    1997 年 63 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    日本およびタイ国各地で分離されたErwinia属細菌80菌株のAgrobacterium tumefaciens, Clavibacter michiganensis subsp. michiganensis, Pseudomonas cepacia, P. solanacearum, P. syringae pv. syringae, Xanthomonas campestris pv. citri, X. oryzae pv. oryzaeに対する抗菌物質産生性を調べた.その結果E. carotovora subsp. carotovora, E. chrysanthemi pv. chrysanthemi, E. chrysanthemi pv. zeae, E.chrysanthemi (pathovar未同定)を含む39菌株が7種指示菌の少なくとも1菌種に対して抗細菌活性を示す物質を産生した.一方,P. cepaciaおよびX. campestris pv. citriに対し抗細菌活性を示す物質産生性菌株は認められなかった.タイ国産のE. carotovora subsp. carotovora 4菌株は平板培地上においてC. michiganensis subsp. michiganensis, X. oryzae pv. oryzaeおよびP. solanacearumに対して顕著な増殖阻止円を形成した.またタイ国産のE. carotovora subsp. carotovora 493-1株は,ジャガイモーショ糖半合成液体培地あるいはジャガイモ煮汁液体培地で振とう培養した場合, P. solanacearumに対し抗菌活性を有する物質を産生した.
  • 川口 章, 久米 龍一, 松本 公平, 益子 道生, 安藤 巌, 堤内 正美
    1997 年 63 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    SSF-126のイネといもち病菌の相互作用に及ぼす影響を調べる一環として,予めSSF-126で処理した「愛知旭」幼苗第8葉にいもち病菌親和性レース003を接種して, H2O2生成とperoxidase (PO)活性の経時変動を測定した。その結果,無接種葉においてはSSF-126処理の有無に関わらずH2O2, POとも変動が認められなかった。一方,接種葉ではSSF-126処理区においてH2O2生成が約10時間早まり,生成濃度も著しく増高した。また, PO活性も早期に増大し,見かけ上非親和性品種(フクニシキ)と同様な推移を示したが,以上の結果とこれまでの報告から,本剤のいもち病制御作用は直接にイネの抵抗性を誘導した結果ではなく,イネ中の成分(フラボノイド類)との協同によって抗菌性を発揮した結果,非親和反応が生じたものと推察した。
  • 楠目 俊三, 玉田 哲男, 服部 洋, 土屋 俊雄, 久保 勝照, 阿部 秀夫, 難波 成任, 土崎 常男, 岸 國平, 柏崎 哲
    1997 年 63 巻 2 号 p. 107-109
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1991年,恵庭市においてコムギ(品種チホクコムギ)にモザイク症状が認められ,電顕観察および血清試験によって,北海道ではこれまで報告がなかったコムギ縞萎縮ウイルス(WYMV)が同定された。WYMVは恵庭市,長沼町,千歳市にわたる丘陵地帯と伊達市で広く発生していた。恵庭市で採集したWYMV分離株は,汁液接種により北海道の秋播コムギ品種チホクコムギ,ホロシリコムギに感染したが,従来感受性品種とされてきた畠田小麦には全く感染しなかったため,新しい系統と考えられた。伊達市のWYMV汚染圃場における品種比較試験において,現在の主力品種ホクシンは,従来のチホクコムギ,ホロシリコムギに比べて,病徴が激しく減収も大きかったことから, WYMV抵抗性の新品種の育成が望まれる。
  • 久米 龍一, 新川 求, 川口 章, 八隅 慶一郎, 益子 道生, 白石 友紀
    1997 年 63 巻 2 号 p. 110-112
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネいもち病に対して高い防除活性を示すSSF-126は,イネいもち病菌(Pyricularia oryzae)のスライドグラス上での分生胞子発芽やセロファン膜侵入を1.0ppm以上の濃度においても完全には阻害せず,また,メラニン合成阻害も示さなかった。しかし,イネ体磨砕物の共存下では発芽を顕著に阻害した。以上の結果とこれまでの報告から,(1) SSF-126は侵入したイネいもち病菌の呼吸を阻害するが, (2)いもち病菌体にシアン耐性呼吸鎖が誘導される。しかし, (3)イネ体中のフラボノイド化合物によってこの誘導過程が阻害され,その結果いもち病菌は侵入後蔓延出来ず発病に至らないと推定した。これは本剤がいもち病菌のイネ体侵入後に活性を発現するというこれまでの知見をよく説明しており,新規制御剤開発の指標となる機構の一つと考えられた。
  • ガラ イワヤン, 近藤 秀樹, 前田 孚憲, 井上 成信, 玉田 哲男
    1997 年 63 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1995年,岡山県倉敷市において採集した,激しい萎縮,葉の奇形とモザイクを示したサギソウから分離されたpotyvirusは,ウイルス粒子の形態,感染細胞内所見,アブラムシ伝搬性,宿主範囲,血清学的類縁関係からカボチャモザイクウイルス(WMV 2)と同定された。本ウイルスの宿主範囲および病徴は,数種の植物において,既報の分離株のそれらと異なっていた。外被タンパク質(CP)遺伝子を含むウイルスゲノムの3'末端領域の塩基配列を決定し,既報の5分離株のそれと比較した結果, CPのアミノ酸配列で87-97%, 3'非翻訳領域で94-97%の相同性が認められた。WMV 2のサギソウにおける発生の報告は初めてであり,ウイルス病の和名をサギソウ萎縮病としたい。
  • 草野 成夫, 下村 克己
    1997 年 63 巻 2 号 p. 119-123
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    RT-PCRによりスモモ斑入果病の病原Hop stunt viroid-plumを検出するための条件を検討した。最適プライマーは, 6種類のプライマーペアの内,相補的な合成オリゴヌクレオチド・プライマーとしてHSVc-(1): 5'-GGCTCCTTTCTCAGGTAAG-3'(領域61-79),相同的な合成オリゴヌクレオチド・プライマーとしてHSVs-(2): 5'-CCGGGGCAACTCTTCTCAGAATCCA-3'(領域80-104)であった。本法の検出感度は,罹病抽出試料の希釈限界から判断して,従来のポリアクリルアミドゲル電気泳動法(2次元電気泳動法またはリターンゲル電気泳動法)と比較し,約10,000倍と高かった。また,核酸抽出過程でCF-11セルロースカラムを使用することにより,増幅阻害物質を除去することができた。非フェノール性試薬のセパジーンRV-Rは,罹病スモモ樹の樹皮および根の場合十分なDNA断片が増幅されたが,葉では増幅がわずかであった。PCR産物(大石早生李およびソルダム)をダイレクトシークエンスしたところ,既報の山梨県で発生した斑入果症状を示す太陽から検出されたウイロイドの塩基配列と完全に一致した。
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