タバコモザイクウイルス(TMV)に対して罹病性および抵抗性のトマト品種または育成系統を用い,TMV-OM(普通系)接種と同時に,抗生物質クロモマイシンA
3 (CMA)またはTMV蛋白を根あるいは茎から吸収させ,トマト内のウイルス量を化学定量して,抵抗性の誘導が起ったかどうかを実験した。同時にこれらの処理によるトマト葉のペルオキシダーゼ(PO)活性の変化を生化学的に定量し,またはエレクトロフォーカスイング(EF)法を用いたゲル電気泳動により,POの各アイソザイム(IZ)群を分別して定量した。
1) CMAの5, 10, 30ppm液吸収によって,トマトの罹病性品種福寿2号(F2)では,抵抗性があまり誘導されなかったが,抵抗性の瑞光(ZK), GCR236 (G236), GCR-237 (G237), GCR-267 (G267)ではそれぞれ抵抗性がさらに誘導され,ウイルス量は少なくなった。10ppm CMAによるZKでの抵抗性誘導は,接種直後1日間,2日間処理でも,連続7日間処理したものと同じ程度に起った。
2) 1, 7, 8.4ppmのTMV蛋白液2mlを接種直後1日間トマトに吸収させることにより,罹病性のF2,抵抗性のZKとも,抵抗性が誘導された。
3) 60ppmのCMAを2日間施用したトマトでは,EF法によるゲル電気泳動で,罹病性F2ではPO-IZ群の活性合計が対照の無処理区より減少し,抵抗性のG237では反対に増加した。特に後者では第II群IZ (pH 6付近)の増加が顕著であった。
4) 10ppmのTMV蛋白を5ml吸収させたトマトでは,生化学的なPOの定量およびEF法によるゲル電気泳動の結果からも,罹病性のF2,抵抗性のG237ともに,PO活性が対照区よりも増加した。
5) 以上の結果から,主としてウイルス抵抗性誘導物質および抵抗性の誘導とPO活性との関係について考察した。
抄録全体を表示