本邦のアブラナ科植物から分離されたタバコ・モザイク・ウイルス(TMV)の系統,すなわちTMV-C(C)およびワサビ系(W)を他のTMVの系統,すなわちHolmes' Ribgrass系統(HR), Lychnis系統(Ly),本邦の普通系統OM及びO,ササゲ系統(BC-B)及びそのタバコ型(BC-T)及び06とをアブラナ科(主として
Brassica属),ナス科,ウリ科及び数種のアカザ科,マメ科の植物およびヘラオオバコに接種し,その寄主範囲を比較した。C及びWはアブラナ科18種のすべてにHRは11種,Lyは15種に全身感染した。OMは
Brassica属5種に時に全身感染したが,濃度は低かった。06, BC-B, Oは6種の
Brassica属に接種したが,いずれも全身感染しなかった。タバコ品種やその他の
Nicotiana属植物およびペチユニヤに対してHR, C, WおよびLyなどは多くの場合局所壊疽斑点のみを生じ,全身病徴を出すものは少なかった。多くのウリ科植物のうち,ツルレイシ(
M. Charantia)のみが,上記4系統のほかOMに対し局所病斑を生じた。インゲン(
Ph. vulgaris)にはHR, C, W及びLyは局所病斑を生じなかった。これらの系統はヘラオオバコ(
P. lanceolata)に初期病斑を生じ,HR,時にLyが全身感染した。HR, C, W及びLyの寄主範囲と外被蛋白のアミノ酸組成の類似性から,これら4系統を区別しHR系統群と称することを提案した。
抄録全体を表示