オオムギうどんこ病における特異性解明の第一段階として,オオムギ品種,五畝四石,Turkey 290, Trebi IおよびMonte Cristoの第一葉にオオムギうどんこ病菌レースIとIXを接種し,第一葉における初期感染過程を比較観察した。その結果,いずれの宿主,病原菌の組合せにおいても付着器形成期までは差を認めなかった。差が認められるのは,貫穿過程以後であって,第一吸器形成率は,抵抗性の強いものほど低かった。親和性の組合せでは,接種48時間後において,発芽胞子の80%以上が吸器を形成し,菌叢集団は時間の経過に比例して接種6日目まで同調的に伸展した。それに反して,非親和性のMonte Cristo, Trebi IおよびTurkey 290では,それぞれの発芽胞子の約1, 20および25%が吸器を形成し,菌糸も伸長するが,その伸長の程度は親和性に比べ著しく劣り,同調的でなかった。なお,吸器を形成しなかったほとんどのものはパピラ段階で侵入を停止していた。吸器形成後に観察される崩壊葉肉細胞(CMC)の菌叢当りの形成数を調べたところ,品種間と菌叢間のいずれの比較においても,それは抵抗性の強弱と相関しなかった。したがって,CMC形成の程度はうどんこ病抵抗性の第一義的要因ではないと考えられる。一方,CMC形成の速さ(発現の時期)は,抵抗性が強いものほど早く現れた。しかし,接種後24∼30時間では,強度抵抗性の組合せでCMCが観察されたが,菌糸伸長においては,抵抗性の組合せとの間に有為差は認められなかった。
以上から,オオムギうどんこ病抵抗性にあずかる特異性の決定はCMCの発現する以前,すなわち侵入糸が表皮細胞に侵入する段階で行われると考える。
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