東京都南多摩郡で採集したカンランのモザイク症状株から分離したウイルスについて実験を行ない, 次の結果を得た。これと同種と考えられるウイルスは, ほかにダイコンとヨウシュナタネからも得られている。
(1) このウイルスはアブラナ科作物各種に病原性が強く, 他の科の植物には病原性が認められなかつた。
(2) カンラン, ハナヤサイでは vein-clearing や vein-banding, いぼ状の enation, えそ斑点などの病徴があらわれ, これは低温では持続したが, 最低気温が20℃を下らない時期には, 一度発現した病徴がまもなくかくれた。ダイコン, コカブでは mosaic や萎縮があらわれ, この病徴は高温においてもかくれることなく持続した。
(3) 耐熱性は75~80℃10分, 耐稀釈性は20,000~10,000倍, 耐保存性は22℃で25~35日であつた。
(4) モモアカアブラムシとダイコンアブラムシとにより容易に伝搬され, non-persistent 型であつた。
(5) 熱処理→クロロホルム処理→硫安による塩析および分画遠心の反復操作により, ウイルスを純化した。ウイルス粒子とみなされるものは, 直径約10~13mμの球状粒子で多面体と推定され, この粒子の大きさは Day の報告と著しく異なつた。純化標品は260mμに紫外線吸収の極大があり, また接種試験で高い病原性を示した。
(6) 抗ダイコンPウイルス血清, 抗ダイコンRウイルス血清, 抗CMV血清とは反応しなかつた。
(7) 本ウイルスは諸外国で知られている cauliflower mosaic virus (Tompkins, 1937) と同じか, あるいはきわめて類似したウイルスであると考える。
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