1. タケ・ササ類生葉の越冬前のいもち病斑(1977年9-10月採集)は紡錘形が多く,越冬中または越冬後の病斑(1978年1-7月採集)は不規則大型が多かった。
2. 1978年3月下旬以降
Pyricularia属菌が寄生したタケを8県下(鹿児島・熊本・広島・岡山・島根・鳥取・滋賀・和歌山),ササを6県下(広島・岡山・島根・鳥取・滋賀・和歌山)で採集した。これらはすべて越冬病斑葉であった。
3. 供試したタケ菌16菌株,ササ菌5菌株はすべて供試したタケ・ササに病原性を示した。タケ菌・ササ菌とも噴霧法で人工接種が可能であった。
4. 供試したタケ菌13菌株のうち5菌株,ササ菌3菌株のうち1菌株がイネ(新2号・愛知旭の両方または新2号)に病原性を示した。
5. タケ菌T300菌株は新2号・愛知旭・石狩白毛に罹病性病斑を形成したので,007レースと判定した。
6. 供試したイネ菌10菌株のうち,8菌株はタケに9菌株はササに病原性を示した。T-2, C-1, C-8, N-2の各レースはタケ・ササ両方に病原性を示した。また,噴霧法で接種が可能であった。
7. 1978年1月下旬から8月下旬の島根県下での調査によると,
Pyricularia属菌はタケ・ササ類の生葉の病斑内で菌糸の形態で越冬する。越冬後も罹病葉は生存を続け,8月下旬に採集された。湿室処理により病斑上に高発芽率の分生胞子が形成された。
8. 1977年秋,タケ菌(T300)を人工接種した鉢植えのビロウドナリヒラと自然発病のケナシナリヒラを鉢植えにして室内においた。罹病葉は越冬し,8月中旬まで生存したものもあった。湿室処理により病斑上に分生胞子を形成した。
9. 1978年6月22日,島根県能義郡広瀬町布部の水田に隣接した場所で見つけたマダケの罹病葉率は6.9% (583/8454)であり,越冬病斑であった。
10. 1978年,島根県下のタケ・ササの生葉の越冬病斑上で,分生胞子初形成は5月10-13日に認められた。タケの第1次初発病は6月1-5日に認められた。タケ・ササ類の生葉上のdisease cycleがあるようである。
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