日本植物病理学会報
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33 巻, Special 号
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  • 後藤 和夫, 高坂 〓爾, 柳田 騏策, 高橋 喜夫, 鈴木 橋雄, 山田 昌雄, 松本 省平, 進藤 敬助, John G. ATKINS ...
    1967 年 33 巻 Special 号 p. 1-88
    発行日: 1967/03/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    日米科学協力の一環として,いもち病菌の病原型の国際分型品種のセットを選び出す目的で,日米両国間で1963~1965の3年間に亘り共同研究が行なわれた。当初は米国・日本・中華民国において,かねて用いられた分型品種39品種が主に検討された。研究の進捗につれて12の国際分型品種候補が選ばれた。この12品種によると20余の米作国から得られたいもち病菌の菌株が59菌型に分けられることが明かになつた。この12品種から最後に国際分型品種として8品種が選ばれた。これらはRaminad Str. 3 (A), Zenith (B), NP-125 (C), Usen (D), Dular (E), Kanto 51 (F), Sha-tiao-tsao-S (G), Caloro (H)である。これらに対する病原性によつて前述の菌株を順次A~Hの8群に分け,合計32の国際菌型が特性づけられた。その実験方法の要点も記述された。
  • 高橋 喜夫
    1967 年 33 巻 Special 号 p. 89-100
    発行日: 1967/03/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    イネのいもち病抵抗性判定のため,穂孕期の個体を使つて,止葉次葉の葉鞘部に接種し,被害度Dを算出する方法を先に報じたが,F2個体の検定,品種間差異の検定等に諸種の欠点を持つていた。例えば処理後の観察に時間がかかりすぎること,あるいは同一生育期にある個体を同時に入手し難いことなどである。これ等の欠点を少くするために,次に述べるような方法を,4つの実験にもとづいて提案した。
    1. 本葉7葉以上穂孕期までのいづれの生育期にあるものも検定材料として使つてよい。
    2. 但し,比較すべき検定材料は,現在展出中の葉を基準として,各接種部位の成熟度を整一にする。すなわち,展出葉葉身がその下の葉の1/3以下の時は,展出葉の2枚下の葉の葉鞘を,展出葉の葉身が下の葉の1/3以上の時は1枚下の葉の葉鞘を使う。
    3. 筆者がさきに報じた被害度Dのかわりに,最高伸展度H.Dを測定値として各個体の抵抗性を測定する。
    4. 1個体の最高伸展度H.Dとは次のようなものである。その個体上の侵入菌糸の伸展値の中,最高の値をゆう。
    5. このH.Dによつて各個体の抵抗性の程度を次の4段階に大別する。
    R(強抵抗性)……原則としてH.D 2以下。また,1葉鞘中大部分の附着器が2以下の値を示し,極くまれに(1あるいは2個)3を示す附着器のある場合。これを(3)で表現する。
    M.R……H.D 3。この様な個体は一般的には強抵抗性に属すが,前者よりやや弱い。現在一般に使われている幼苗噴霧接種によつて判定するとRに判定される場合が多いが,時によるとS型の病斑を生ずる事がある。
    M.S……H.D (4)あるいは(6)。1葉鞘中大部分の附着器が3以下で,1あるいは2個の付着器が,4あるいは6を示す場合である。幼苗噴霧接種の場合,時により,あるいは個人的判断の基準の違いによつて,Sと判定され,あるいはM,またはしばしばRとさえ判定される。
    S(罹病性)……H.D 4以上。
    以上の方法によると,観測に要する時間がD算出のための観測時間に比べて非常に少くなる。また個体検定の信頼度が高く,1品種の特性(抵抗性についての)を判定するのに3個体前後の検定で十分である。原則的には1品種1個体でよい。
    以上の結果により,次の提案をした。
    1. 菌型判定の場合,2, 3回の噴霧接種によつて,その結果の変異の大きい場合は葉鞘検定を利用すると明確にできる。
    2. 噴霧接種のための環境整備の困難な所,例えば,熱帯地方で大型の低温接種室設置に困難な所などは,葉鞘検定法が有効である。
  • 鈴木 橋雄
    1967 年 33 巻 Special 号 p. 101-114
    発行日: 1967/03/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1. いもち病研究上の1支障は分生胞子形成および病原性,その他いもち病菌の特質を保持させる適切な培地が知られていなかつたことである。この1理由はいもち病菌は,たとえ,単一胞子分離菌であつても,きわめて複雑なヘテロカリオンであり,培養中にヘテロカリオシスに基ずいて現われる諸種の現象,特にapparent attenuationを阻止する培地が知られていなかつたことのようである。
    2. 比較的成分の安定な半合成培地(Tween寒天培地と呼ぶこととしたい)は従来いもち病菌の培養に使用されていた寒天培地よりapparent attenuationが現われ難いようであつた。その成分は次のとおりである。
    粉末酵母エキス 0.6% MgSO4・7H2O 0.06%
    ブドウ糖 0.4 CaCl2 0.10
    Tween 80 0.06 FeCl3・6H2O 痕跡
    K2HPO4 0.06 寒天 2.0
    3. いもち病菌の栄養要求は付着器型をGenetic markerとして類別した生態種(biologic species, race)によつて異なるようである。Tween寒天培地および1%ショ糖加ジャガイモ寒天培地は生態種C-1(後藤らのものと異なる)に,前者はwild typeに属するS-2, C-2, SD-2あるいはCD-2などに,後者はmutant typeに属するS-0, C-0, SD-0あるいはCD-0に好適で,それぞれ数年間継続培養してもapparent attenuation (mutant typeでは分生胞子形成)は認められなかつた。
    4. いもち病菌の栄養要求は付着器型をgenetic markerとして類別したホモカリオンの生態種によつて異なつているようであるから,各生態種の栄養要求を栄養生理の基礎的研究を行なつた後,それぞれに好適な保存培地を研究作製すべきであると思われた。
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