ナシ黒星病菌のベノミル剤に対する感受性の簡易検定法として,病斑上の分生胞子を直接薬剤含有培地上に移植し,一定時間培養後鏡検し,発芽管に隔膜が形成される場合,これを耐性菌とする検定方法について検討した。
1. 培養条件は,温度を15Cに定めたところ,主として細菌など雑菌の増殖はよく抑え,多くの供試菌では培養48時間で判定できたが,一部の菌では隔膜の形成が遅れるため,72時間培養後に判定する方が正確だった。
2. ベノミルおよびチオファネートメチル剤の洗礼を受けていないナシ黒星病菌分生胞子のベノミル剤に対する感受性は,MICがすべて0.19μg/mlであったが,ベノミルおよびチオファネートメチル剤の防除効果の低下しているナシ園から採取した菌のMICは0.19μg/mlである例は少数で,大多数1.56μg/mlまたはそれより高濃度であり,まだ両剤の効果が持続しているナシ園から採取した菌のMICは1.56μg/mlまたはそれより高濃度である例が少数あったが大多数0.19μg/mlであった。
3. 子のう胞子も分生胞子と同様に検定でき,ベノミルおよびチオファネートメチル剤の洗礼を受けていない黒星病菌のベノミル剤に対するMICは0.19μg/mlであり,両剤の防除効果の低下しているナシ園から採取した菌のMICは大多数1.56μg/mlまたはそれより高濃度であった。
4. ベノミルまたはチオファネートメチル剤のどちらか一方の薬剤を供試して検定すれば,両剤に対する耐性の有無を検定できる。
5. 本検定方法と菌そう生育法との検定精度を比較したところ,差がなかった。また,本検定方法では多数の菌を短時間に検定することができた。
6. 薬剤の影響を受け,発芽管に隔膜の形成が認められない黒星病菌はナシ(品種長十郎)葉に病原性がなかった。
7. この検定方法を発芽管隔膜法と称することにした。
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