日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
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83 巻 , 1 号
Remark on 100th of JJP Series 1
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追悼文
原著
  • 齋藤 まどか, 中島 雅己, 有江 力, 阿久津 克己
    2017 年 83 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー

    生体に必須な含硫アミノ酸の一種であるL-メチオニンがもたらす誘導抵抗性による,トマト萎凋病(Fusarium oxyspoum f. sp. lycopersici: FOL)に対する抑制効果を調査した.FOLの生育に影響が認められない濃度(100 μg/ml)でL-メチオニン溶液をトマト葉に噴霧処理し,2日後に1×106 bud cell/mlのFOL懸濁液に1時間浸漬することで接種を行った.接種後の植物体を新たな土壌に植え替え,接種4週間後に発病度を評価した結果,L-メチオニン処理区において萎凋症状が抑制されることが確認された.また,接種0,48時間後のトマト根におけるPR遺伝子の発現を解析した結果,FOL接種によって誘導されるPR遺伝子の発現がL-メチオニン処理によって増強されることが確認された.以上の結果から,L-メチオニンはトマトにプライミング誘導効果を付与し,FOLの感染時にPR遺伝子発現を増強することで本病に対して抑制効果を発揮する可能性が示唆された.

  • 澤田 宏之, 横澤 志織, 上松 寛, 西口 徹, 近藤 賢一
    2017 年 83 巻 1 号 p. 10-21
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー

    長野県内に所在するクルミ(Juglans regia)の産地では,2014年以降,葉や花穂,果実などに黒褐色の斑点症状を生じる病害が多発し,問題となっている.その罹病果実からは,やや中高で湿光を帯びた黄色集落を形成する細菌が分離された.分離菌をクルミに接種すると原病徴が再現され,そこからは接種菌が再分離できた.本菌はグラム陰性,好気性で1本の極鞭毛を有する桿菌であり,その主要な表現形質,16S rRNA遺伝子やqumAを標的としたPCR検定,および7つの必須遺伝子(atpDdnaKefpfyuAglnAgyrBおよびrpoD)を用いたmultilocus sequence analysis(MLSA)の結果に基づき,Xanthomonas arboricola Vauterin, Hoste, Kersters and Swings 1995と同定できた.また,API 20NEによる表現形質の検査,PCRに基づくタイプIIIエフェクター(T3E)の遺伝子構成の解析,MLSA解析,および接種試験の結果を精査すると,本菌はX. arboricola pv. juglandisXaj)に相当することが明らかとなった.なお,Xajには2つの系統〔walnut blight(WB)系統とvertical oozing canker(VOC)系統〕が存在するが,長野県の発生状況は前者の場合と一致していた.また,T3E遺伝子構成に関しても,本菌からWB系統に特異的なxopAHはPCR検出できるのに対し,VOC系統特異的なxopBの増幅は認められなかった.さらに,MLSA系統樹においても,本菌はWB系統とクラスターを組むことが確認できた.以上より,本菌はXajのWB系統に相当すると判断した.Xajによって引き起こされるwalnut blightが日本国内で見出されたのは本研究が初めてであることから,本病の病名として,その発生状況や病徴の実態に即した「クルミ黒斑細菌病」を適用することを提案したい.なお,WB系統は遺伝的に多様であるとされているが,本研究に供試した分離菌は均一性が高いことが確認できた.このことは,WB系統の中のある1つの菌系が,長野県内の各地へと分布を拡大するような経緯があったために,現在のような発生状況がもたらされた可能性を示している.

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平成28年度地域部会講演要旨
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