日本植物病理学会報
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28 巻, 4 号
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  • 谷 利一
    1963 年 28 巻 4 号 p. 187-194
    発行日: 1963/09/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カキ炭そ病罹病軟化果および無菌人工軟化果から, zone electrophoresis により, それぞれ2種の組織軟化酵素をえた。陰極側の酵素はpH4.0∼5.0で, 陽極側の酵素はpH4.5∼5.0で作用力が最も大きい。吸収スペクトルの極大は前者280mμ, 後者∼280mμにあり, 両酵素ともたんぱく分解酵素で失活するので, それぞれたんぱくあるいはたんぱく様物質といえる。カキ炭そ病菌が分泌する2種組織軟化酵素とは異なり, 軟化果肉から分離した酵素はジャガイモ切片よりもカキ果肉切片にたいして作用が強い。また, ペクチン, ペクチン酸, およびNa-CMC溶液をほとんど液化あるいは糖化せず, カキ果肉切片の酸素吸収にも直接的影響をあたえぬので, これらは Clostridium felsineum が生産する“macerating enzyme”に類似のものではないかと考える。
    前報および本報の結果から, カキ炭そ病罹病果の軟化はカキ炭そ病菌の侵入によつて異状化したカキ果自体が生産する2種 macerating enzyme にもとづくものであると結論した。
  • (第7報) 病徴と温度との関係
    田浜 康夫
    1963 年 28 巻 4 号 p. 195-197
    発行日: 1963/09/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 保毒ヒシモンヨコバイ放飼接種の結果発病した鉢植えの桑樹実生は自然温度においては4月の出芽当時は健全葉を着生し, その後徐々に病徴を現わす。
    2. 自然温度において徐々に病徴を現わしていた桑樹は30°Cの恒温室に入れると急激に病徴を発現する。
    3. 発病クワは37°Cの高温に約10日間保つと回復する。
  • 高橋 壯, 平井 篤造
    1963 年 28 巻 4 号 p. 198-200_1
    発行日: 1963/09/25
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    ケイ光抗体法 (直接法) によつて, タバコ葉組織内および種子表面におけるタバコモザイクウイルス (TMV) の検索を行なつた結果, 次の所見を得た。
    1. TMVは, モザイク症状を示したタバコ葉 (ブライトイエロー) では, その表皮組織, さく状組織, 海綿状組織および師管部に分布したが, 導管部からの検出は困難であつた。
    2. えそ斑点を形成した N. glutinosa 葉では, 茶かつ色斑点部位からTMVが検出されたが, その周囲の健全部には検出されなかつた。
    3. TMVを人為的に付着させたタバコ種子 (ブライトイエロー) の表面からもTMVの検出が可能であつた。
  • II. 細菌の増殖に及ぼす炭素源および窒素源の影響
    渡辺 実
    1963 年 28 巻 4 号 p. 201-208
    発行日: 1963/09/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 前報に引き続き, イネ白葉枯病々原細菌の増殖に及ぼす炭素源と窒素源の影響を調査した。
    2. 基礎培地は前報16)の組成にFeSO4・7H2O 0.001%, MgCl2・6H2O 0.1%およびMnSO4・4H2O 0.001%を添加したものである。
    3. 本細菌の増殖に最適の炭素源は sucrose で, その最適濃度は0.2∼1%である。sucrose に次いで glucose (0.2∼1%), mannose, galactose, maltose (1∼3%), succinic acid (1%) なども良好な炭素源である。fructose は加熱滅菌を行なうと細菌に全く利用されないが, 加熱せずにろ過滅菌を行なう時は良好な炭素源となる。なお, glutamic acid は炭素源として利用されないようである。
    4. 本細菌の窒素源としては無機態窒素は不良で, 有機態窒素を必要とする。l-glutamic acid (0.1%) が最も良好な窒素源で, l-cystine がこれに次ぐが, 増殖程度はl-glutamic acid の約半量であつた。これよりさらに不良であるが, 窒素源として dl-valine, l-leucine, dl-isoleucine, dl-β-phenylalanine, tyrosine, dl-methionine, l-arginine-HCl, l-asparagine, (NH4)2-HPO4などが若干利用された。さらにl-glutamic acid (0.1%)+l-cystine (0.05%)+(NH4)2HPO4 (0.3%) の組み合わせで顕著な増殖促進作用が認められ, yeast extract (0.2%) 添加区にかなり近い増殖が得られた。
    5. 以上の結果から, 本細菌の増殖に適当な合成培地の組成は次のようになる。l-glutamic acid 0.1%, l-cystine 0.05%, (NH4)2HPO4 0.3%, KH2PO4 0.2%, sucrose 0.5%, FeSO4・7H2O 0.001%, MgCl2・6H2O 0.1%, MnSO4・4H2O 0.001%, pH 6.5∼7.0。しかし本培地における増殖をジャガイモ輪腐病菌培地と比較すると, まだかなり不良であるので, 少なくとも天然培地と同等の増殖が得られるよう今後さらに改良を要すると考えられる。
  • (第2報) Cellocidin のイネ白葉枯病菌の生育, 呼吸並びに解糖系に対する作用
    沖本 陽一郎, 見里 朝正
    1963 年 28 巻 4 号 p. 209-215
    発行日: 1963/09/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. cellocidin のX. oryzae に対する生育阻止最小濃度 (寒天稀釈塗抹法) は10ppmであつたが, 液体振盪培地中で菌接種6時間後に作用させた場合には4ppmの濃度でほぼ完全に阻害を示した。
    2. cellocidin はX. oryzae の自家呼吸に対し, 10ppmで約50%を阻害したが, 100ppmでも完全には阻害を示さなかつた。基質を利用した際に増加する酸素吸収に対しては, glucose, gluconate, pyruvate, acetate を基質とした際には100ppmで完全に阻害し, 10ppmでもかなりの阻害が認められた。succinate を基質にした際の呼吸阻害は100ppmの濃度でも弱かつた。
    3. X. oryzae の解糖系として Embden-Meyerhof 系のほかに6PG分裂系が強く働いていることを推定した。cellocidin は Embden-Meyerhof 系に対しては10∼100ppmで阻害を示したが, 6PG分裂系には阻害作用が認められなかつた。
  • ふけ米菌 (Absidia sp.) 胞子にたいする臭化メチルの殺菌効果について
    松野 守男, 柳井 昭二
    1963 年 28 巻 4 号 p. 216-220
    発行日: 1963/09/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ふけ米菌 (Absidia sp.) 胞子を使い, 臭化メチルの殺菌効果についてしらべた。顕微鏡下で直接死滅率を計測し, また死滅率の高いところはシャーレ上のコロニー数と推定胞子数より死滅率をだした。
    湿度75%では温度が25°Cより30°Cに上昇しても, くん蒸効果はさほどあがらなかつた。
    くん蒸時間の延長による効果は非常にすくなく, 湿度75%, 温度30°C, ガス濃度72mg/l, 72時間でなお100%死滅するにいたらなかつた。
    くん蒸時間を対数値とし, 死滅率をプロビット値におきかえたくん蒸時間・死滅率回帰直線は, 湿度が一定のときは温度, ガス濃度に関係なく, Absidia sp. 固有の傾斜値を示すことがわかつた。
    湿度が高くなると, くん蒸効果はいちじるしく増大する。
  • 吉井 甫
    1963 年 28 巻 4 号 p. 221-227
    発行日: 1963/09/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    わが国各地から集めたダイコンモザイクウイルス (turnip mosaic virus の1系統) 120分離株はすべて, Nicotiana glutinosa には無病徴のまま局在感染するかまたは全身感染して, 多くは黄斑を生じ, Brassica のうち“c”genome をもつカンランなどには, その植物がごく若い時にのみきわめて軽微な輪紋モザイクを生じるが, 成植物は無病徴または無感染である。今, 各国から報告された turnip mosaic virus のうち, わが国のダイコンモザイクウイルスとほぼ同じ寄生的性質を有するものを集めてこれを turnip mosaic virus の ordinary strain とし, カンランに明らかな ring spot necrosis を生じ, かつ N. glutinosa に判然たるモザイクを生じるものを cabbage strain とし, 文献によつてそれらの分布を調査した。
    その結果, ordinary strain は東洋原産のものと考えられ, cabbage strain はカンランの野生種またはその原種の原産地である英国ないし西欧にかたまって発生しているのでこの地域が原産地と考えられ, 北米大陸には両系統が相前後して欧州から, さらにはまた東洋から侵入し, 両者が共存していると考えられる。
  • 西村 正暘, 佐々木 睦男
    1963 年 28 巻 4 号 p. 228-234
    発行日: 1963/09/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Pellicularia filamentosa (ラジノクローバーの葉腐れ病菌株) の培養ろ液から葉に黒色壊死を起こさす毒性物質の分離を行ない, その有毒な酸性分画に8コの物質が混在することを認め (物質I∼物質VIII), それらをそれぞれ結晶として単離した。
    それらのラジノクローバーに対する葉の壊死毒性と種子の発芽阻害ならびにその後の芽生えの生育抑制毒性を調べた結果, 物質I, III, IVおよびVが著しい毒効果を示した。
    それら8コの物質の理化学的性質を検討して, それぞれ物質Iはフェニル酢酸, 物質IVはメタ・ハイドロオキシ・フェニル酢酸, 物質Vはパラ・ハイドロオキシ・フェニル酢酸, 物質VIはコハク酸, 物質VIIは乳酸および物質VIIIはシュウ酸であることを確認した。なお物質II (m.p. 176°C) および物質III (m.p. 142°C) は未確認酸である。
    なおメタ・ハイドロオキシ・フェニル酢酸はフェニル酢酸を経て代謝されることを知つた。
  • 下村 徹, 平井 篤造, 横山 伊久女
    1963 年 28 巻 4 号 p. 235-240_1
    発行日: 1963/09/25
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1. ろ紙電気泳動法によつて, TMV感染タバコ葉の可溶たんぱくを, 健全たんぱくとウイルスたんぱくとに分けることができた。
    2. アクチジオンあるいはチオウラシルを感染葉に作用させると, 生じたウイルス量は無処理のものより少なくなるが, その少ないウイルスたんぱくは, ろ紙電気泳動によつてさらに2つの分画に分けられる。これに対して薬剤無処理のウイルスたんぱくは, 原点付近の1つのピークに集まる。
    3. 抗ウイルス剤の作用下に生じたウイルスたんぱくの性質について考察を行なつた。
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