日本植物病理学会報
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69 巻, 2 号
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  • 田口 義広, 百町 満朗, 堀之内 勇人, 川根 太
    2003 年 69 巻 2 号 p. 85-93
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネいもち病に対するBacillus subtilis IK-1080の生物防除エージェントとしての実用性を明らかにするため,本試験を行った.いもち病菌を拮抗微生物B. subtilis IK-1080株とPSA平板上で対峙培養すると,菌糸の生育を著しく抑制した.菌濃度1.0×106, 5.0×107, 1.0×108, 5.0×108および1.0×109cfu/mlのIK-1080懸濁液にいもち病菌胞子を1.0×103個/mlになるように混濁させてセロファン上で発芽させると5.0×107cfu/mlで胞子の付着器形成が,また,1.0×108cfu/mlで発芽率が抑制され始めた.5.0×108cfu/mlでは付着器形成率と発芽率はそれぞれ11.2および62.3%と対照の56.4, 96.3%に比べ著しく低下した.前述と同じ菌濃度の懸濁液5mlを4.5葉期の品種コシヒカリの葉に散布した後,1.0×104個/mlに調整したいもち病菌の胞子懸濁液を噴霧接種すると菌濃度が5.0×107cfu/ml以上で葉いもちに対する有意な発病抑制効果が認められた.また,発病度の抑制割合と付着器形成の抑制率との間には高い相関関係(r=0.9374, p<0.01)が認められた.いもち病菌胞子の接種14日後に形成された葉いもち病斑にIK-1080を散布すると7日後の病斑長は13mmでB. subtilisを散布しなかった対照区と差がなかった.一方,いもち病菌の接種前と接種14日後に2回散布すると病斑長は6mmとなり,病斑の伸長が顕著に抑制された.これらのことから,IK-1080を利用して葉いもちを防除するためには,病原菌が侵入する前に処理する必要があった.2000年に,山間地域のいもち病常発水田において,1.0×108cfu/mlに調整したIK-1080の懸濁液を出穂直前,出穂9日および18日後に散布したところ,対照の無処理区の穂いもちの発病度が29.7に対して,処理区では10.3となり,防除価も65.3と高い発病抑制効果が認められた.また,2001年に同じ水田で1.0×108cfu/mlと5.0×108cfu/mlのIK-1080懸濁液を出穂直前,出穂13および23日後の3回散布したところ,穂いもちの発病度は対照の無処理区が29.1に対し,それぞれの処理濃度で13.8, 7.7となり,防除価も52.5, 73.5と高く,いずれも発病抑制効果を示した.
  • 田口 義広, 百町 満朗, 杖田 浩二, 川根 太
    2003 年 69 巻 2 号 p. 94-101
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    IK-1080の菌濃度を1.0×108cfu/mlとした懸濁液1.0mlを,トマト果実の着果促進を目的としたホルモン処理と同時に花弁に散布すると,花弁における灰色かび病の発生は著しく抑制された.散布直後の花弁におけるIK-1080の菌量は1.9×107cfu/gだったが,処理後の花弁の菌量は7.9×109cfu/gとなり約400倍増加していた.無処理区の花弁上にはBotrytis属菌を含む10種類以上の糸状菌が認められたが,IK-1080を散布した花弁では5種類に減少し,Botrytis属菌は出現しなかった.このように菌相の単純化が認められた.トマト栽培では受粉に訪花昆虫のマルハナバチがよく用いられている.そこで,マルハナバチに,灰色かび病菌に拮抗的なIK-1080を運ばせることで花弁の灰色かび病が防除できるかを検討した.はじめに媒介用のアダプターを4種類試作した.箱型のアダプターは出巣したマルハナバチが帰巣しなくなった.箱内に1本の紐を渡した型と円筒の中にパフを敷いた型のアダプターは,帰巣しても巣に入りたがらない行動が認められ,花粉球の落下も多かった.一方,出入口分離型はマルハナバチの出巣個体数が1時間当たり12頭と多く,時間当たりの帰巣率も77.8%と高かった.また,マルハナバチの運んできた花粉球の落下が最も少なく,果実の着果率も96∼98%と高かった.この出入口分離型のアダプターを用いるとマルハナバチの身体に1頭当たり6.0×104cfuのIK-1080が付着していた.マルハナバチにIK-1080を運搬させると,訪花20日後の花弁の菌量は106∼107cfu/gと増加した.また,灰色かび病の発生は著しく抑制された.マルハナバチにIK-1080を運搬した花弁でも,ホルモンと同時処理の時と同じようにBotrytis属菌の出現は認められなかった.本法は著しく省力的で,アダプターに入れるIK-1080の量は1回当たり(7日間分)3gと少なかった.
  • 白川 隆, 小宮 友紀子, 我孫子 和雄
    2003 年 69 巻 2 号 p. 102-106
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    スイカ果実汚斑細菌病菌・Acidovorax avenae subsp. citrulli (Aac)の種子と発芽苗での動態を解析した.その結果,4∼30°CのAacは汚染種子上で26ヶ月以上生存し,伝染源となり得ることが明らかとなった.この時,種子上のAac数が1cfu/seedであっても育苗環境によっては高率で発病する可能性があることが示された.この発病は,湿潤環境下で多く,乾燥条件下では少なかった.この要因を検証するために,異なる湿度環境におけるスイカ発芽苗上でのAacの密度変動を調査した.噴霧接種により湿潤環境区では101cfu/g fresh weightであったAac数は2日後には106cfu/g fresh weight, 4日後には107∼108cfu/g fresh weightとなり,接種2日後から発病が観察された.一方,乾燥区でも2∼3日後に104cfu/g fresh weightとなったが発病を認めなかった.同様な結果は,Aacに汚染した種子を播種した場合でも認められた.
  • 田口 義広, 渡辺 秀樹, 川根 太, 百町 満朗
    2003 年 69 巻 2 号 p. 107-116
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    施設内で温風暖房機のダクトを用いて,1999年11月から2000年4月まで,Bacillus subtilis IK-1080水和剤を,粉体のまま毎日散布したところ,キュウリ果実の灰色かび病の発生を完全に抑制した.一方,慣行の殺菌剤散布区では,2月に8.3%, 4月には25.2%の果実に灰色かび病の発生が認められた.IK-1080製剤をダクト散布した区から採取したキュウリ花弁に,実験室内で灰色かび病菌を追接種しても,病原菌の菌叢生育は著しく抑制された.IK-1080製剤をダクト散布すると,ダクトに開けた吐出口の風速と吐出口の周辺に浮遊するIK-1080の菌量の間には高い正の相関が認められた.ダクト散布開始後35日のキュウリの葉上には,上位葉で3.4×104cfu/cm2,中位葉で1.1×104cfu/cm2,および下位葉で2.3×104cfu/cm2のIK-1080の菌量が認められ,さらに,花弁では1日後に4.6×107cfu/g, 35日後に2.0×109cfu/gであり,果実や茎からもIK-1080が高率に分離された.一方,無処理区のキュウリ葉からはIK-1080は全く分離されなかった.施設内の周囲に主ダクトを,それぞれの畦に枝ダクトを配置し,ダクトに上向きに開けた直径5cmの吐出口の風速を約10m/sとすると,IK-1080は施設内全体に均一に散布された.無処理区のキュウリ花弁からはCladosporium属菌,Alternaria属菌,Mycosphaerella属菌,Nigrospom属菌,Fusarium属菌,Botrytis属菌および未同定菌1~4が発生した.一方,IK-1080製剤をダクト散布した区の花弁からはMycosphaerella属菌,Fusarium属菌,Botrytis属菌,未同定菌3および4は全く検出されず,糸状菌相の単純化が少なくとも属レベルで認められた.
  • 吉田 政博, 小林 研三, 古賀 成司, 山口 武夫
    2003 年 69 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    メロンがんしゅ病放線菌接種後のメロンの病徴発現様相を調べ,接種方法と発病との関係,メロンの生育ステージと発病との関係およびメロンの地上部組織における病原性発現の特徴について検討した.栽培中の株元土壌に灌注接種したメロンと汚染土壌に播種したメロンでの本病の潜伏期間は約7∼14日であった.また,汚染土壌に直接播種したメロンの方がより激しく発病した.こぶ組織は根の分岐部に多くみられ,特に汚染土壌に播種したメロンの最初のこぶ形成部位は主根と一次分枝根の分岐部であり,その後,さらに高次の分枝根の分岐部でも認められた.こぶの形成数は,播種42日後頃までは著しく増加したが,49日後頃からは新しいこぶの形成は減少した.罹病メロンは播種49日後までに,草丈で約40%,葉数で約15%の生育抑制を受けた.異なった生育ステージのメロンへの接種後の病徴発現では,播種後14日齢のメロンで最も激しく発病し,それ以上では加齢とともに発病が軽減された.これらの病徴発現の特徴から,本病の病徴はメロンが若く根系の発達が著しい時期に激しく現れるように考えられた.一方,本病原放線菌は菌体の注入接種によりメロンの地上部組織でも,接種組織の肥大を呈する病徴を起こした.この病徴の発現は胚軸で最も早く激しく現れ,次いで茎,葉柄の順であり,胞子体より菌糸体での接種においてより顕著に現れた.
  • 梅本 清作, 大谷 徹, 矢内 浩二, 竹内 妙子
    2003 年 69 巻 2 号 p. 124-131
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ナシ病害防除のための薬剤散布回数を大幅に削減した技術を開発するために,1993∼2001年,千葉県において圃場試験を実施した.試験には,防除効果が高くて残効が長く,また薬害発生の少ない殺菌剤を選択した.そして,散布した殺菌剤の残効があると推定される期間は降雨があっても更なる殺菌剤の散布は行わず,残効が切れたと判断された後の最初の降雨の前日に次の散布を行った.また,黒星病の耕種的防除として落葉の処理や発病果叢基部の切除等も行った.その結果,試験開始年である1993年の「千葉県なし病害虫防除暦‘幸水’・‘豊水’」の中に記載されている,春から収穫直前までの殺菌剤の合計散布回数15回に比べて7回程度に半減した散布でも,黒星病など主要病害の実用的防除が可能であることが現地ナシ園で実証された.
  • 矢野 和孝, 川田 洋一, 佐藤 豊三
    2003 年 69 巻 2 号 p. 132-135
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    A new disease of eggplant was found in greenhouses in Kochi Prefecture, Japan in 1996. Numerous black pycnidia were produced on brown lesions that developed from the cut surface of lateral shoots. Pycnidia were ostiolate, subglobose to pyriform, and averaged 301×248μm. Conidia were born mostly holoblastically on sometimes branched conidiophores, hyaline, aseptate, oblong to fusiform, 13.8-20.0×4.4-5.6 (mean=17.2×5.0)μm, with a truncate base. The fungus was identified as Fusicoccum aesculi on the basis of its characteristics. The symptoms were reproduced by wound inoculation, and the fungus was re-isolated. Stem blight of eggplant was proposed for the name of the new disease.
  • 篠原 弘亮, 月星 隆雄, 門田 育生, 西山 幸司, 對馬 誠也
    2003 年 69 巻 2 号 p. 136-139
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    A new bacterial blight with halo was found on leaves of rye (Secale cereale L.) in Tsukuba, Japan in April 1998. The bacterium isolated from the lesions of the leaves was pathogenic to rye and oats, but not to rice. The causal bacterium was elucidated as a pathovar of Pseudomonas syringae on the basis of bacteriological properties. In addition, tabA-specific bands were detected from these isolates by PCR with tabA-specific primers. From these results, the causal bacterium was identified as Pseudomonas syringae pv. coronafaciens, and the name “bacterial halo blight” was proposed for the disease.
  • 2003 年 69 巻 2 号 p. 155-162
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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