日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
29 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 植原 一雄
    1964 年 29 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1964/01/31
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    phytoalexin (PA) は, その生成された植物の種類あるいはその生成に関与した病原菌の種類によつて, それぞれ異なるものか否かをしらべた。
    エンドウの莢に Ascochyta pisi, Glomerella cingulata および Gibberella zeae の分生胞子浮遊液をつけて得られた3種類のPA滲出液, ならびにソラマメの葉, ナタネの莢およびカラスノエンドウの莢にそれぞれ G. cingulata の分生胞子浮遊液をつけて得られた3種類のPA滲出液から, それぞれPAを石油エーテルで振出し, 紫外線吸収スペクトルを測定した。その結果PAはその生成される植物の種類によつて特異なものであり, その生成に関与する病原菌の種類によつては影響をうけないものと考えた。
  • イネ汁液による酢酸フェニル水銀の解毒について
    山田 忠男
    1964 年 29 巻 1 号 p. 6-12
    発行日: 1964/01/31
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. ごまはがれ病菌胞子の発芽をPMAで阻害する実験において, イネ汁液を添加すると, 蒸留水中ではPMA 0.1ppmで発芽を抑制するのに, この程度の量では阻害が全く起こらず, PMAを数10ppmまで加えてはじめて発芽阻害を起こすことができた。
    2. イネ汁液のPMA解毒は, ほぼ有効物質の含量に比例し, 有効物質は保存中にも酸化減少し, 透析すると大部分はたんぱく質区分に, 一部分は低分子区分に存在することがわかつた。
    3. イネ汁液の代わりにシステイン, 還元型グルタチオン, 卵アルブミン, イーストエキス, チオ硫酸ソーダなどチオール化合物を添加すると, イネ汁液と同様にPMAを解毒した。
    4. アミノ酸, ビタミン, 糖, 無機塩で-SHを含まない物質を添加しても, PMAの解毒は起こらなかつた。
    5. 以上によつて, PMAの解毒は-SHのみによつておこり, イネ汁液を添加した場合, 胞子の発芽強化もあるが, 解毒は-SHによつておこり, 主としてたんぱく質-SHにより, 一部は還元型グルタチオンなど低分子-SHによるメルカプチド結合の結果であることがわかつた。
  • 向 秀夫, 伊阪 実人
    1964 年 29 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 1964/01/31
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 全国各地のイネ白葉枯病発生地の本病罹病葉より分離した118菌株のうち, 病原性の異なる代表的20菌株を用いて, イネ白葉枯病菌X. oryzae の生理的性質について実験を行なつた。
    2. 実験に用いたイネ白葉枯病菌はいずれの菌株も硝酸塩を還元せず, methylene-blue を還元する。アンモニアを生成し, インドールの生成はなく, 硫化水素を発生しゼラチンを徐々に溶解するが, 牛乳を凝固および消化することがない。リトマスミルクを青変する。石山3)の実験結果とは, methylene-blue の還元, 硫化水素の発生程度, アンモニア産生の有無, ゼラチンの溶解, 牛乳の消化などの点で異なる。
    3. ゼラチンの溶解と病原性との間には比較的密接な関係がみられた。
    4. 糖類および高級アルコールの分解能では, xylose, arabinose, glucose, levulose, galactose, mannose, sucrose などを分解し酸を生成するが, rhamnose, maltose, lactose, raffinose, dextrin, starch, inulin, glycerol, mannitol, sorbitol, salicin などは分解しない。arabinose は菌株によつて分解しないものがあつた。
    5. 菌株によつて凝集反応の遅速, 強弱がややみとめられたが, 抗X. oryzae (22-SR-2) 血清との反応はいずれも陽性を示した。
  • 田部井 英夫
    1964 年 29 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 1964/01/31
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1952年に岡山県下でカラスムギに細菌寄生による新病害が発生した。この病害は普通葉に1∼2cm大の黄色楕円形病斑を形成するが, 病勢が進行すると中心部は褐色となり, 周囲に明瞭な黄色 halo を形成する。この病徴から本病をカラスムギかさ枯病とよぶことにした。葉の病斑から分離した病原細菌について細菌学的性質を検査した結果, 本菌はわが国では未確認であつた Pseudomonas coronafaciens (Elliot) Stevens であることを明らかにした。本細菌は噴霧接種ではカラスムギにのみ病原性を示すが, 傷痍接種ではカラスムギの他にオオムギ, ビールムギ, ハダカムギ, ライムギ, コムギ, イネ, オカボ, キビ, チモシーグラス, オーチャードグラス, ブロームグラス, イタリアンライグラス, プレリーグラス, スズメノテッポウ, ヒエガエリ, カズノコグサ, カモジグサ, イヌムギ, スズメノカタビラおよびトマトなどに病原性を有することがわかつた。
  • 大島 信行, 根本 正康
    1964 年 29 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 1964/01/31
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 1961年の夏, 北海道の斜里, 宇登呂および狩太から採集されたジャガイモ (品種: 紅丸) に発生した新ウイルス性萎黄病について記載し, 2,3の伝染試験を行なつた。
    2. トマトおよびジャガイモに現われた病徴は, 従来北海道において知られていたジャガイモ天ぐ巣病, エゾギク萎黄病 (ジャガイモ萎黄病タイプI)あるいはジャガイモ萎黄病タイプIIのいずれとも異なるので, これらと区別してジャガイモ萎黄病タイプIIIと命名した。
    3. このジャガイモ萎黄病タイプIIIと従来の萎黄病との比較検討を行なうために, 接木によりいろいろのナス科植物への伝染試験を行なつた。
    4. この結果, ジャガイモ, トマトを含む5属14種の植物に感染し, それぞれ特徴ある病徴を現わした。
    5. ペチュニアは罹病トマトからは感染せず, Datura stramonium あるいはD. tatula の罹病枝を割りつぎしたとき感染し, 病徴を現わした。また, Nicotiana glauca は不顕性保毒植物であることがわかつた。
    6. 感染植物の中でトマトの病徴はカナダのジャガイモ天ぐ巣病の一系統に, Datura metel はジャガイモ天ぐ巣病に, またナスはエゾギク萎黄病, tomato stolbur virus の初期病徴に幾分似通つているが, 大部分の植物は病徴からは従来のものとはつきり区別できるものが多い。
  • I. ほ場における観察
    酒井 隆太郎, 富山 宏平
    1964 年 29 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1964/01/31
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    従来ジャガイモの疫病抵抗性品種間差とパーオキシダーゼ活性との間に密接な相関があることが一般に認められ, 抵抗性品種の選抜にパーオキシダーゼ活性の差を利用できるとされた。しかし生育後期程パーオキシダーゼ活性が高まるにもかかわらず罹病度が大きい事実, 下葉の方がパーオキシダーゼ活性が高いにもかかわらず罹病度が大きい事実は以上の見解にむじゆんする。
    本研究の結果によれば各品種はおのおのその熟期の早晩にしたがつてパーオキシダーゼ活性の成熟に伴う消長曲線を異にし, その曲線は晩生品種程後期まで上昇を続ける, ゆえにパーオキシダーゼの生育各時期の測定値の総平均は熟期に比例する。すでに熟期と抵抗性が相関することは良く知られているからパーオキシダーゼ活性は直接熟期と相関しその結果2次的に抵抗性と相関すると結論される。そう結論することによつて上述のむじゆんは解決される。また実際に接種試験あるいは, ほ場観察の結果による抵抗性品種間差との相関は成熟後期に始めて顕著になる。
  • (第8報) 熱処理による回復
    田浜 康夫
    1964 年 29 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 1964/01/31
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    桑樹萎縮病に罹病した枝条を高温に一定期間処理すると病徴は完全に回復する。すなわち熱気45°Cに2.5日間以上, 50°Cに1日間以上, 温湯50°Cに4時間以上, 55°Cに40分以上にそれぞれ処理した場合である。
  • 第5報 Penicillium islandicum (黄変米菌) の胞子, 菌糸および米粒内侵入菌糸に対する臭化メチルの殺菌効果
    柳井 昭二, 松野 守男, 松浦 慎治
    1964 年 29 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 1964/01/31
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1. オートクレーブで殺菌した玄米に, Penicillium islandicum を接種し, 米粒上の胞子と菌糸および粒内侵入菌糸について, 臭化メチルの殺菌効果を比較した。
    2. 米粒上の胞子と菌糸の臭化メチルに対する抵抗性は胞子の方が強く, 菌糸では45mg/l, 25℃, 18時間くん蒸で完全に殺菌できたが, 胞子では50mg/lを必要とした。
    3. 粒内侵入菌糸は米粒組識内にあるため, その侵入深度によつて殺菌効果に差異があり, 皮部および糊粉層侵入菌糸と殿粉層侵入菌糸とでは, 明らかに後者の方が大であつた。
    4. 米粒組識の中心部に侵入している菌糸は, 米粒表面の附着胞子とほぼ同程度の薬量 (50mg/l, 25℃, 18時間くん蒸) で殺菌できた。
  • 小室 康雄, 岩木 満朗
    1964 年 29 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 1964/01/31
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. TMVが単子葉植物のウキクサ上で増殖することが以下の実験によつて明らかになつた。
    i) ウキクサに対しカーボランダム法で汁液接種すると, 接種葉から3∼5日で少量のTMVが検出され, 10, 15, 20日と時日の経過とともに検出されるウイルス量が多くなる。
    ii) ウイルス濃度をかえてウキクサに接種した場合, 10万倍希釈でもわずかに感染をおこす。
    iii) TMVを接種したウキクサの接種葉での接種後20日目の希釈限界は1万倍内外である。
    iv) TMVを接種したウキクサの接種葉汁液中のウイルスは抗TMV血清により中和される。
    v) 3片以上の葉片をもつウキクサの葉片の一部にTMVを接種し, その接種葉を未接種葉片から切りはなすと, 接種後1, 3, 5日目に切りはなした未接種葉からはTMVが検出されなかつたが, 10日目に切りはなした未接種葉からはTMVが検出された。また接種葉から接種後新生した葉片からもTMVが検出できた。
    2. ウキクサは普通のカーボランダム汁液接種法のほかに, 小びん中にTMVおよびカーボランダムを含む汁液とウキクサを入れ, 強く数分間振りまぜても接種できる。
feedback
Top