2014年4月以降,わが国の複数の産地において,キウイフルーツ(
Actinidia chinensisおよび
A. deliciosa)の幹,枝,新梢,葉,花蕾に,かいよう病様の激しい症状が新たに発生して問題となっている.枝幹部からの樹液の漏出や新梢の枯れ込み等の症状が,これまでわが国で確認されてきたかいよう病の場合より激しい事例も観察されている.愛媛,福岡,佐賀,和歌山県由来の罹病サンプルから分離した22菌株は,淡黄色で不透明の円形集落を形成した.分離菌を
A. chinensisに接種すると原病徴が再現され,そこからは接種菌が再分離できた.本菌はグラム陰性,好気性で1~2本の極鞭毛を有する桿菌であり,その主要な生理・生化学的性質,ITS,
hopZ3,
hopO1-2を標的としたPCR検定,および,7つの必須遺伝子(
acnB,
cts,
gapA,
gyrB,
pfk,
pgiおよび
rpoD)を用いたMultiLocus Sequence Analysis(MLSA)に基づき,
Pseudomonas syringae pv.
actinidiaeと同定することができた.また,API 20NEによる表現形質の検査,
argK,
cfl,
acnB,
hopH1,
hopZ5を標的としたPCR検定,および,MLSA解析の結果より,本菌は
P. syringae pv.
actinidiaeにおける既知の4つのbiovar(biovar 1, 2, 3, 5)のうち,biovar 3(=Psa3)に相当することが明らかとなった.さらに,biovar 3が保持しているとされているintegrative conjugative element(ICE)のうち,特に解析が進んでいるPac_ICE1, Pac_ICE2, Pac_ICE3を検討対象として取り上げ,本菌におけるそれらの保有状況をPCR検定によって調査した.その結果,このうちの14菌株はPac_ICE1を保持していることが認められたが,福岡と佐賀県由来の8菌株からは「Pac_ICE1, Pac_ICE2, Pac_ICE3に相当する構造」がPCR検出できないことが判明した.以上より,わが国にはキウイフルーツかいよう病の病原として,これまで知られていたbiovar 1とbiovar 5だけでなく,biovar 3も分布していること,Pac_ICEの保有パターンに基づいてこれら国内産のbiovar 3はさらに2つのグループに類別できることが明らかとなった.
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