カナムグラ褐斑病菌(
Pseudocercospora humuli (Hori) Guo et Liu)の生活史,菌叢の培養特性および分生子と菌叢の薬剤に対する感受性の調査を行った.
本病菌は,擬似環境下において11月から4月頃まではカナムグラの病葉上で,子座と分生子の状態で越冬する.春に越冬分生子はいったん消失したが5月頃新しい子座を形成し,その上に豊富な分生子が観察された.そして越冬中病葉上にテレオモルフは観察されなかったため,第一次伝染源は春新たに形成される分生子,または越冬条件によっては残存する可能性のある越冬分生子が第一次伝染源になると推測された.
本病菌の菌叢の生育温度範囲は10∼30°Cで適温は25°C. pH 4∼9で良く生育する.PSA, CA, MA培地で良く生育し,PSA培地がもっとも生育良好であった.ワクスマン,ツアペック,リチャーズの各培地ではやや生育が劣った.
本病菌の薬剤に対する感受性を,一般に
Cercosporaとその関連属菌の防除に使われているマンネブ剤と硫酸銅,ならびに除草剤のグリホシネート剤について調べた.各薬剤のラベル表示に従って希釈し,有効成分量で表した濃度を実用濃度とし,その付近の分生子と菌叢の生育抑制効果を検討した.実用濃度はマンネブ剤が1250ppm,硫酸銅が4000ppm,グリホシネート剤が615ppmである.その結果マンネブ剤,硫酸銅は分生子の発芽,菌叢の生育抑制にきわめて有効であることが明らかになった.しかし硫酸銅はマンネブ剤に比べるとやや効果が劣るようである.一方除草剤のグリホシネート剤では500ppmまでは60%以上の分生子発芽能力を持ち,実用濃度615ppmでも発芽し,伸長する.菌叢は濃度に関係なく生育したことから,本病菌のグリホシネート剤に対する感受性は低いと思われた.
BLB照射法と振とう培養法を使って分生子の人工形成を試みた.しかし分生子はほとんど形成されなかった.
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