日本植物病理学会報
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66 巻, 1 号
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  • 山口 純一郎, 稲田 稔, 松崎 正文
    2000 年 66 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ナスすすかび病の病斑部から病原菌分生子が離脱する湿度,温度および光照射条件ついて検討した.まず,室内試験では,相対湿度約50%で病斑部から約468個/cm2/24 hoursの分生子の離脱が認められたが,100%の湿室条件下ではほとんど離脱しなかった.また,温度条件では20∼25°C,光照射条件では暗黒下で多く離脱したが,過湿条件下ではいずれの温度,光条件でもほとんど離脱しなかった.施設栽培条件での圃場試験では,病斑部からの経時的な分生子の離脱は,湿度が低下した時間帯に認められ,離脱量は高湿度の日が続いた後の低湿度の日が極めて多かった.さらに,施設内での時刻別の飛散分生子数は湿度が低い日中に多く,湿度が高い夜間は少なかった.日別分生子採集数は,降雨や曇天による多湿の日が続いた直後の湿度が低い日に多かった.これらのことから,すすかび病菌の分生子の離脱・飛散は相対湿度が大きく関与し,相対湿度が高い状態で推移したあと低湿度になったとき多量になることが明かとなった.
  • 窪田 昌春, 岸 國平, 我孫子 和雄
    2000 年 66 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1994年の秋に宮崎県高千穂町で発見したトマトの果実,葉,茎の褐色病斑から分離した菌をPhoma lycopersici Cookeと同定し,トマトの果実,葉,茎等に対する病原性を確認した.これまで,わが国においては,実腐病,茎腐病と輪状斑点病がPhoma属菌によるトマトの病害として記載されているが,いずれの記載も古く,現在のPhoma属とその近縁菌類の分類学的研究と照らし合わせると疑問が生じた.そのため,トマトのPhoma属菌による病害とそれらの病名について検討した.その結果を踏まえて,トマトのPhoma属菌による病害の病名を統一して円紋病とし,その病原をP. destructiva Plowright, P. exigua Desmazières, P. lycopersiciとすることを提案したい.
  • 早坂 剛, 藤井 弘志, 安藤 豊, 生井 恒雄
    2000 年 66 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    化学合成農薬の使用量を減らしたイネいもち病防除法を開発するために,本病の第一次伝染源として重要な苗いもちの発生に及ぼすケイ酸資材としてのシリカゲルの効果を検討した.シリカゲル250∼1000gを育苗土3000gに混和し,本病自然感染籾を播種し,育苗期の苗いもちの発生と苗のケイ酸含有量の関係を調査した.その結果,シリカゲル施用により苗いもち発生は無施用区と比較し著しく抑制され,その後の育苗箱における二次感染も顕著に抑制された.苗のケイ酸含有率は播種5日後から対照区に比べて有意に高くなり,7日後には500g施用区では対照区の2.37倍になった.また,既存の3種のケイ酸資材を施用し,苗のケイ酸含有率,窒素含有率をおよび土壌pHの変化を比較検討した結果,ケイ酸含有率はシリカゲル施用区で最も高くなったが,窒素含有率は資材間で差が認められなかった.土壌pHはシリカゲル以外の資材施用では,いずれもイネの育苗に不適当なPH範囲まで上昇した.これらのことから,シリカゲルの施用は育苗土のpHを変化させずに育苗初期から苗のケイ酸含有率を高め,苗いもちの発生を抑制できる有効な方法であることが明らかになった.
  • 生活史,菌叢の培養特性および分生子と菌叢の薬剤に対する感受性
    今泉 英理夏, 小林 享夫, 中島 千晴
    2000 年 66 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カナムグラ褐斑病菌(Pseudocercospora humuli (Hori) Guo et Liu)の生活史,菌叢の培養特性および分生子と菌叢の薬剤に対する感受性の調査を行った.
    本病菌は,擬似環境下において11月から4月頃まではカナムグラの病葉上で,子座と分生子の状態で越冬する.春に越冬分生子はいったん消失したが5月頃新しい子座を形成し,その上に豊富な分生子が観察された.そして越冬中病葉上にテレオモルフは観察されなかったため,第一次伝染源は春新たに形成される分生子,または越冬条件によっては残存する可能性のある越冬分生子が第一次伝染源になると推測された.
    本病菌の菌叢の生育温度範囲は10∼30°Cで適温は25°C. pH 4∼9で良く生育する.PSA, CA, MA培地で良く生育し,PSA培地がもっとも生育良好であった.ワクスマン,ツアペック,リチャーズの各培地ではやや生育が劣った.
    本病菌の薬剤に対する感受性を,一般にCercosporaとその関連属菌の防除に使われているマンネブ剤と硫酸銅,ならびに除草剤のグリホシネート剤について調べた.各薬剤のラベル表示に従って希釈し,有効成分量で表した濃度を実用濃度とし,その付近の分生子と菌叢の生育抑制効果を検討した.実用濃度はマンネブ剤が1250ppm,硫酸銅が4000ppm,グリホシネート剤が615ppmである.その結果マンネブ剤,硫酸銅は分生子の発芽,菌叢の生育抑制にきわめて有効であることが明らかになった.しかし硫酸銅はマンネブ剤に比べるとやや効果が劣るようである.一方除草剤のグリホシネート剤では500ppmまでは60%以上の分生子発芽能力を持ち,実用濃度615ppmでも発芽し,伸長する.菌叢は濃度に関係なく生育したことから,本病菌のグリホシネート剤に対する感受性は低いと思われた.
    BLB照射法と振とう培養法を使って分生子の人工形成を試みた.しかし分生子はほとんど形成されなかった.
  • 周 林, 矢吹 純子, 福井 博一, 松本 省吾, 景山 幸二
    2000 年 66 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    In vitroで継代培養している切りバラおよび台木9品種のシュートを用い,in vitro検定法で4系統のA. temufaciensを接種し,各品種の抵抗性について比較検討を行った.R. canina, R. canina ‘Pfänder’の平均発病率は61%, 85%と高く,‘Lifirane’と‘PEKcougel’では17%以下と低かった.供試病原菌ではGOU1の発病率は供試9品種中の6品種で73%∼90%と高く,A208, G-Ag-27, C58clrif-RではR. canina ‘Pfänder’において高く,それ以外では低かった.‘Dukat’, R. coriifolia froebelii, ‘Fashion Parade’では菌の系統間に有意差が認められ,GOU1の発病率は高く,G-Ag-27やC58clrif-Rでは低かった.形成されたがんしゅの大きさは,‘Lifirane’で8.02と最も大きく,その他の品種では有意に小さかった.供試病原菌では,C58clrif-Rは3.46と最も大きく,次いでA208, G-Ag-27, GOU1の順であった.
  • 藤 晋一, 飯田 孝則, 中前 均
    2000 年 66 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    An attenuated strain of Japanese yam mosaic virus, selected from the fields and referred to as JYMV-M, caused no symptoms on Japanese yam plants throughout the growing season. The purified virus preparation was highly infective, and the virus was easily transmitted by aphids. An RT-PCR-RFLP assay was used in cross-protection tests to discriminate JYMV-M from other severe strains. Pre-inoculation of yam plants with JYMV-M remarkably protected them from infection with severe strains. JYMV-M infection did not affect either the quality and quantity of yam production.
  • 山田 憲吾, 牟田 辰朗, 徳永 太蔵, 我孫子 和雄
    2000 年 66 巻 1 号 p. 40-43
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    In April 1998, powdery mildew was found on two species of citrus (tankan mandarin and mandarin orange) in Kagoshima prefecture, Japan. White, powdery mycelial colonies appeared on leaves and young shoots. Young leaves specially were damaged severely, infected leaves eventually fell. Conidia were ovoid to cylindric, 25.0-41.6×12.5-18.7(-27.1)μm in size, borne singly on conidiophores erected on aerial mycelium. Appressoria on germ tubes were lobed. Cleistothecia were not observed. On the basis of the morphological characters of the conidial state, the fungus was proposed as an Oidium sp. of the Erysiphe polygoni type.
  • 和田 行央, 岩井 久, 尾川 宜広, 荒井 啓
    2000 年 66 巻 1 号 p. 44-48
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    The pathogenicity and serological properties of Bean yellow mosaic virus (BYMV) isolates from both cultivated and naturalized gladioli in Kagoshima prefecture were investigated. According to the method of Sasaya et al. (1998), 64 BYMV isolates from gladiolus were classified as pathotype I or IV, whereas five BYMV isolates from broad bean were classified as pathotype II. The serological relationships among the BYMV isolates were determined with DAS-ELISA and the improved Ouchterlony double-diffusion test using antisera to isolates S-22N (pathotype I) and S-22C (pathotype IV) originating from a gladiolus source, and Sb-50C (pathotype II) from broad bean. The gladiolus isolates (S-22N and S-22C) differed serologically from the broad bean isolate (Sb-50C).
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