アブラナ科植物であるダイコンとナズナのべと病菌をダイコンの切断根組織に接種し,両菌の病原性の差異を組織化学的手法を用いて観察した。ダイコンべと病菌を接種した場合は吸器形成率は高く(90%),細胞間隙を菌糸が著しく生育伸長した。これに対し,ナズナベと病菌を接種した場合,吸器形成率は20%以下でその形も小さく,大部分は吸器とは形態を異にする菌糸様構造物として細胞に侵入し,生育は接種24時間後に停止した。
両菌感染部位を組織化学的に観察すると,ダイコン菌の場合に比ベナズナ菌侵入部位ではリグニン,カロースの蓄積およびSITS蛍光が顕著であり,抵抗反応が著しかった。吸器には膜結合性Ca
2+の特異蛍光を示すクロロテトラサイクリン蛍光が認められたが,菌糸様構造物には認められなかった。このことは両者の機能に差異があることを示している。
以上の結果,ダイコンベと病菌は宿主の抵抗反応を抑制する能力(病原性)を有するために,感染して組織中を著しく生育伸長するが,ナズナベと病菌ではその能力を欠くために菌糸様構造物で細胞に侵入し,吸器形成の場合も接種24時間後に生育が停止すると考えられ,両菌の病原性の差異が示唆された。
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