タチバナモドキに著しい落葉被害を起こす病害を認め,病徴,標徴および菌の形態から病原菌をピラカンサ褐斑病菌
Cercospora pyracanthae Katsukiと同定した。本病はピラカンサ属の植物に黄化落葉症状を起こす。当年新葉には7月ごろから病斑を形成し,以後二次伝染により発病と早期落葉を続けるが,秋からは病葉は着生したまま越冬し,分生子はいったん消失,翌年4~5月に再び分生子を新生し第一次伝染した後に落葉する。子座は表面生,オリーブ褐色で,径35~75μm。分生子柄は子座上に叢生,分生子を全出芽,シンポジオ型に形成し,隔膜は不明瞭。分生子は棒状で直または緩やかに湾曲し, 1~6隔膜を有し,淡褐色,離脱痕は明瞭,薄膜,基部は截切状で,大きさは32-53×2-3μm。分生子の発芽および菌叢の生育は10°C~35°Cで可能,適温は25°Cであった。pH 3において発芽および生育がやや劣ったがpH 4~9ではよく発芽,生育した。菌叢の生育はPSA, MA, Waksman's agar, Czapek's agar培地上で良好で, CMAおよびRichard's agar培地上ではやや劣った。本菌分生子の発芽に対する発芽の抑制効果は,硫酸銅水溶液,チオファネートメチル水和剤,マンネブ水和剤の各薬剤が高かった。菌糸断片懸濁液および分生子浮遊液の噴霧接種により25~30日の潜伏期間で自然病徴が再現された。近紫外線照射下での培養により分生子の人為的形成は可能であった。本病原菌は顕著な子座を有し,分生子が有色であり,分生子柄および分生子の分離痕・離脱痕が薄く,全出芽・シンポジオ型に分生子を形成することなどからDeightonらの考えに従い
Pseudocercospora属に転属するのが適当と考え,学名を
Pseudocercospora Pyracanthae(Katsuki) Nakashima et Kobayashi, comb. nov.と改めた。
抄録全体を表示