日本植物病理学会報
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63 巻 , 4 号
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  • 柄澤 明, 伊藤 明子, 岡田 格, 長谷 修, 江原 淑夫
    1997 年 63 巻 4 号 p. 289-297
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ササゲに全身感染する点で, CMVの多くの他の系統とは異なるマメ科系統CMV-LのゲノムRNAの全塩基配列を決定した。RNA 1は全長3359ヌクレオチドで,分子量111,491の1aタンパク質をコードしていると考えられた。RNA2は3047ヌクレオチドからなり,分子量96,720の2aタンパク質をコードする能力があった。RNA3は2213ヌクレオチドで,分子量30,478の3aタンパク質と24,191の外被タンパク質の2つのシストロンを有していた。決定した塩基配列や,コードしていると予想されるアミノ酸配列を,既知のCMV黄斑系統(CMV-Y)と比較したところ,いずれも94%以上の高い相同性が認められた。特に,細胞間移行タンパク質である3aタンパク質のアミノ酸配列は,両者で完全に一致した。完全長のcDNAから感染性のあるウイルスRNAを転写可能な系を用いて, CMV-LとCMV-Yの間でreassortantを作製しササゲに接種したところ,ササゲでの感染の型(全身感染または局部感染)はRNA2単独で決定されるが,全身感染における病徴をCMV-YのRNA3は変化させることが明らかとなった。CMV-Lと同様にササゲに全身感染するCMVの分離株MB-8のRNA2についても同様に塩基配列の決定を行い,既知の数系統のCMVのコードする2aタンパク質のアミノ酸配列と共に比較したところ,非過敏感反応型のCMVの2aタンパク質では,共通したアミノ酸変異が3カ所認められた。
  • シャルマ アルン, 村山 晶子, 尾崎 武司, 大井 和之, 矢原 徹一, 池上 正人
    1997 年 63 巻 4 号 p. 298-303
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    日本国内のトマト栽培地近くにしばしば自生しているスイカズラ(Lonicera japonica)にtobacco leaf curl virus (TLCV)が感染していることが見いだされた。葉脈黄化,モザイク症状を呈しているスイカズラよりウイルスに特異的な数種類の1本鎖および2本鎖DNA (ssおよびds DNA)を検出した。Mung bean nuclease処理により,ウイルスゲノムサイズの2本鎖の閉環状,開環状および線状DNAの存在を確認した。さらに,サブゲノムDNAも確認した。AC1 ORF (複製酵素遺伝子)およびAV1 ORF (外被タンパク質遺伝子)の一部に相補的なジェミニウイルス特異的プライマーにより, 1.1 kbpの領域を増幅し,クローニングとシークエンスを行った。決定した塩基配列をトマトより分離したTLCVと比較したところ,両者は同一であった。また,佐賀県で採集したヒヨドリバナ(Eupatorium makinoi)から検出されたジェミニウイルスは, AC1 ORF領域においてスイカズラより検出したTLCV系統と89.2%の塩基配列の相同性がみられた。以上の結果より, TLCVには少なくとも遺伝子型変異と思われる2系統が存在し,これらの感染野生植物が作物に対する感染源である可能性が推定された。
  • 古賀 一治, 原 秀紀, 田中 博
    1997 年 63 巻 4 号 p. 304-308
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Pseudomonas solanacearnmによって発生するタバコ立枯病の発病抑止土壌を選抜するために,国内のタバコ栽培畑から216点の土壌を採取した。温室内で,これらの土壌にタバコ苗を移植後,本病原細菌を接種し,発病の有無を調査することで抑止土壌を選抜した。その結果, 9点の土壌に移植したタバコの発病率は,助長土壌のものよりも有意に低かった。これら9点の抑止土壌の土性は,8点が壌質土壌, 1点が砂質土壌であり,壌質土壌のうち4点が火山灰土壌であった。さらに,抑止土壌に本病原細菌を添加して菌数の推移を調査したところ,火山灰土壌を含む壌質土壌では菌数の減少がわずかであったのに対して,砂質土壌では急激に減少した。以上の結果から,日本のタバコ畑の中にタバコ立枯病の発病抑止土壌が存在していることを確認し,さらに,これらの抑止土壌における病原菌の生存には,本病原細菌数の減少を伴うものと,伴わないものの2種類あることが明らかになった。
  • 中島 千晴, 小林 享夫
    1997 年 63 巻 4 号 p. 309-315
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    タチバナモドキに著しい落葉被害を起こす病害を認め,病徴,標徴および菌の形態から病原菌をピラカンサ褐斑病菌Cercospora pyracanthae Katsukiと同定した。本病はピラカンサ属の植物に黄化落葉症状を起こす。当年新葉には7月ごろから病斑を形成し,以後二次伝染により発病と早期落葉を続けるが,秋からは病葉は着生したまま越冬し,分生子はいったん消失,翌年4~5月に再び分生子を新生し第一次伝染した後に落葉する。子座は表面生,オリーブ褐色で,径35~75μm。分生子柄は子座上に叢生,分生子を全出芽,シンポジオ型に形成し,隔膜は不明瞭。分生子は棒状で直または緩やかに湾曲し, 1~6隔膜を有し,淡褐色,離脱痕は明瞭,薄膜,基部は截切状で,大きさは32-53×2-3μm。分生子の発芽および菌叢の生育は10°C~35°Cで可能,適温は25°Cであった。pH 3において発芽および生育がやや劣ったがpH 4~9ではよく発芽,生育した。菌叢の生育はPSA, MA, Waksman's agar, Czapek's agar培地上で良好で, CMAおよびRichard's agar培地上ではやや劣った。本菌分生子の発芽に対する発芽の抑制効果は,硫酸銅水溶液,チオファネートメチル水和剤,マンネブ水和剤の各薬剤が高かった。菌糸断片懸濁液および分生子浮遊液の噴霧接種により25~30日の潜伏期間で自然病徴が再現された。近紫外線照射下での培養により分生子の人為的形成は可能であった。本病原菌は顕著な子座を有し,分生子が有色であり,分生子柄および分生子の分離痕・離脱痕が薄く,全出芽・シンポジオ型に分生子を形成することなどからDeightonらの考えに従いPseudocercospora属に転属するのが適当と考え,学名をPseudocercospora Pyracanthae(Katsuki) Nakashima et Kobayashi, comb. nov.と改めた。
  • 林 長生, 李 成雲, 李 家瑞, 岩野 正敬, 内藤 秀樹, 吉野 嶺一, 加藤 肇
    1997 年 63 巻 4 号 p. 316-323
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    中国雲南省14地区より分離したイネいもち病菌308菌株について交配型を判定した。常法により交配型検定標準シコクビエいもち病菌と交配した結果,供試菌の3%が交配型Mat1-1, 23%が交配型Mat1-2,残りはいずれの交配型標準菌とも子のう殻を形成しなかった。完全世代形成率は地区により異なり,形成率90%の臨滄から0%の麗江,大理,紅河地区まで幅があった。両交配型菌は,曲靖および西双版納の2地区に分布した。分離菌の大半は日本のレース判別品種で分別可能であり,稔性のある菌株は16レースに分かれた。交配型が明らかになったイネ菌株を相互に交配したところ,西双版納からの菌株は相互交配により子のう胞子を形成した。西双版納の陸稲分離菌株CHNOS37-1-1は,他の地区からの菌株との交配により発芽力のある子のう胞子を形成した。交配能力をもつ菌株は雲南省南西部に多く,イネ系統の多様性に富む地帯との一致が注目される。
  • 小林 隆, Twng Wah MEW, 羽柴 輝良
    1997 年 63 巻 4 号 p. 324-327
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    フィリピンにおいて,イネ紋枯病に感染した被害藁が次の作期に初期感染源としてはたらくかどうかを検討するために,代かき後に浮上した被害藁を集め,これらの被害藁を紋枯病菌(Rhizoctonia solani Kühn AG-1 IA)菌核を含まない実験圃場に投入した。まず,被害藁からは紋枯病菌が分離されたので,被害藁中で菌糸体は次の作期まで生存していると考えられた。次に,実験圃場において被害藁を投入しなかった区では出穂1カ月後の発病株率が3.9%であったのに対して,被害藁を1区(35m2)あたり2kgまたは4kg投入した区ではそれぞれ11%, 18%であった。また,被害藁の感染能力を菌核のそれと比較したところ,前者の感染能力は後者の約3分の1程度であると推測された。これらの結果より,フィリピンでは被害藁中の菌糸体も初期感染源としてはたらいている可能性が示唆された。
  • 笹谷 孝英, 梶 和彦, 藤沢 一郎, 小金澤 碩城, 寺岡 豪, 夏秋 知英, 奥田 誠一
    1997 年 63 巻 4 号 p. 328-333
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    福島県において激しいえそ症状を示していたリンドウより分離されたウイルス(NC)について性状を調べ,他のクローバ葉脈黄化ウイルス(ClYVV)分離株と比較した。NC株を13科26種の検定植物に汁液接種したところ10科19種に感染し,宿主範囲と病徴はClYVVと似ていた。SDSゲル内二重拡散法でNC株はClYVVとインゲンマメ黄斑モザイクウイルス(BYMV)のいずれとも反応したが, ClYVVとより強く反応した。そこで, NC株および同じく福島県でインゲンマメより分離されたClYVV-NFUについて外被タンパク遺伝子と3'非翻訳領域の塩基配列を決定した。両分離株の3'非翻訳領域は同一で,その相同性は既報のClYVVと93.3~99.4%, BYMVとは73.7~77.1%であった。また,外被タンパク質のアミノ酸レベルでは, NC株と既報のClYVVとは91.6~98.2%, BYMVとは72.9~76.5%で,特に, NC株とClYVV-NFUは大変高い相同性を有していた。以上よりリンドウえそ萎縮病の病原ウイルスはClYVVと同定した。
  • 富岡 啓介, 佐藤 豊三, 笹谷 孝英, 小金澤 碩城
    1997 年 63 巻 4 号 p. 337-340
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1996年4月,香川県の施設で栽培中のカランコエ(ベニベンケイ: Kalanchoe blossfeldiana Poelln,品種:シンガポール)の葉に斑点性の病害が確認された。病斑は下位葉の両面に形成される傾向があり,はじめは小褐点で,しだいに拡大して直径1~5mmの顕著な円形ないし楕円形の病斑となった。葉縁部に形成された病斑はさらに拡大し,不整形となった。病斑数の多い葉は黄化・枯死・落葉しやすく,湿潤条件下では,病斑上に暗褐色ビロード状のかびが生じた。このかびはStemphylium属菌の分生子柄と分生子であり,本菌を形態的特徴からS. lycopersici (Enjoji) Yamamotoと同定した。分離菌株の分生子をカランコエに接種した結果,病徴が再現され,接種菌が再分離された。また,本分離菌はトマトにも病原性を示した。カランコエ属植物にはS. bolicki Sobers et Seymourが同様の病害を起こすことが北米から報告されているが,同菌はトマトに病原性を示さず,本病原菌とは形態的に異なる。本菌によるカランコエの病害は報告がないので,病名をカランコエ斑点病と提案したい。
  • 中保 一浩
    1997 年 63 巻 4 号 p. 341-344
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    子葉基部に109個/mlおよび106個/mlの青枯病菌懸濁液を注入した抵抗性トマト台木品種LS-89の植物体内における青枯病菌の分布と増殖を調べた。109個/ml接種ではすべての個体が発病したが下位の2, 3葉が枯れる程度であり,株の萎縮症状も認められた。106個/ml接種個体は無病徴であった。胚軸上部の青枯病菌濃度は接種4日目に109個/ml接種個体で生重1g当り4.0×108個, 106個/ml接種個体で4.8×107個まで増加したがその後は一定であった。接種14日後, 109個/ml接種個体の主根から第3~4葉間の茎部の青枯病菌濃度は生重1g当り1.4~4.0×108個,第5~6葉間の茎部で2.1×106個であった。一方, 106個/ml接種個体の主根から第3~4葉間の茎部の濃度は生重1g当り, 1.8~7.3×107個,第5~6葉間の茎部で5.5×102個であった。接種部位(0)から上(+)下(-)1cmごとに光顕観察したところ, 109個/ml接種個体の(0), (+1)および(-1)の茎では髄組織,一次木部組織および二次木部組織の内側の部分に, (+2), (-2)では一次木部のみに青枯病菌が存在した。106個/ml接種個体の(0), (+1), (-1), (+2)および(-2)の茎組織では一次木部のみに青枯病菌が存在した。以上の結果からLS-89において青枯病菌の植物体内での移行および木部組織での移行と増殖の両方または一方を抑制する機構は高濃度の青枯病菌の侵入により,一部崩壊することが明らかとなった。
  • 原田 幸雄, 古枝 知也, 村田 和俊
    1997 年 63 巻 4 号 p. 345-350
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1993年弘前市内でシナノキ(Tilia japonica)の一部の枝で芽の不発芽および発芽遅延がみられ,その後発芽,展開した葉の多くは夏までには黄変,落葉し,やがて細枝や小枝の枯死脱落する症状がみられた。また隣接したヤマモミジ(Acer palmatum)にも1994年11月以降,葉の萎凋が認められ,しだいに小枝の先端から枯れ上がり,その後枯死部分はしだいに下方におよんだ。両樹の発病枝を横断あるいは縦断してみると導管部に褐変がみられた。そしてシナノキおよびヤマモミジの褐変導管部からは高率に同一種のVerticillium菌が分離された。本菌のPSA平面での菌叢は初め白色でのちに黒色となった。古い菌叢には微小菌核が形成され,分生子柄の基部細胞は無色,菌叢生育が30°Cでも十分可能であった。以上のことから,分離菌はVerticillium dahliae Klebahnと同定された。
    分離V. dahliaeはシナノキ,ヤマモミジのほか,ナス,トマトなど供試20種のうち18種の野菜や花卉に病原性を示した。今回シナノキおよびヤマモミジからV. dahliaeが分離され,病原性が証明されたのは高木としてはわが国で初めての報告である。なお,本菌によるシナノキおよびヤマモミジの病害を半身萎凋病と呼ぶことを提唱する。
  • 谷本 忠芳, 草刈 眞一, 内山 知二
    1997 年 63 巻 4 号 p. 351-357
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    クワイひぶくれ病はクワイの葉および球茎に円形から楕円形の病斑を散生する病害で,クワイ栽培地において普通にみられる。クワイの3品種(‘青くわい’,‘白くわい’および‘吹田くわい’),クワイと同種の野生植物であるオモダカおよびクワイと同属異種のアギナシを大阪府門真市の本病常発水田で栽培し,葉でのひぶくれ病斑の発生時期および発生状況を調査した。また,病斑組織の内部を走査電子顕微鏡で観察し,病徴と胞子球の形成状況の関係について調べた。
    クワイの3品種およびオモダカにはひぶくれ病の病斑が形成されたが,アギナシには病斑は形成されなかった。本病の発生時期は7月初旬から8月中旬にかけてであり,病斑形成時期の平均気温は27~30°Cであった。クワイの品種間ではひぶくれ病の発生程度に差はなく, 3品種はともに罹病性であった。オモダカでは被害程度は低かった。晩秋に収穫したクワイ,オモダカおよびアギナシの球茎にはいずれも病斑は形成されていなかった。
    走査電子顕微鏡によって胞子球の形成の状態を観察したところ,クワイの葉身の初期の病斑では多数の小胞を取り囲む構造が観察された。葉身の典型的な病斑では内部に多数の胞子球が観察された。胞子球の表面は菌糸状の組織によって覆われていた。胞子球の内部を観察したところ,周辺部には柵状の細胞層があり,内部には多数の球状の細胞がみられた。オモダカの葉身の初期の病斑内部には多数の小胞とともに未分化の胞子球が観察された。そのような胞子球では周辺を菌糸状の組織が取り囲み,胞子球の内部には球状の細胞がみられた。
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