日本植物病理学会報
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1 巻, 1 号
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  • 白井 光太郎
    1918 年 1 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 1918年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 伊藤 誠哉
    1918 年 1 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 1918年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本邦に於ける馬鈴薯病害多きが中に疫病の如く慘害を逞くするものなきは海外諸國の例に同じ、本病豫防の方法多しと雖も抵抗性或は免疫性品種の栽培を以て最も安全にして最も經濟的なる方法となすや論なく、北海道農事試験場は多年斯の如き品種の育成に努め故高橋良直氏及び勝藤孝一氏專ら其事に從ひ多數蒐集の材料中より一品種「疫不知」を撰出するに至れり、予は高橋氏の後を受け本種の改良に關係するに至りしを以て今茲に本種の起源竝に性質を記して一般に紹介する所あらんとす。
    本品種は疫不知の外、無病薯、高枕、ヒミ薯、秋薯、竹内薯、惣次郎薯等の地方名を有するものにして千九百三年頃早稻田農園主池田次郎吉海外(佛國か)より馬鈴薯種子を購入し釧路町字西幣舞種子商角田定藏に賣却し更に同人は之れを釧路國鳥取村農民竹内惣次郎竝に同國庶路村農民宮崎平八に賣却し兩人は三年乃至六年間栽培育成して後隣入に頒てるもの即ち疫不知種の濫觴たるが如く、然して從來民間にて疫不知と稱しつゝありしものゝ内には塊莖、花部の性質竝に疫病に對する抵抗性に於て相異なるものゝ混ぜるを認め分離して八型を得たり、其内吾等が眞の疫不知として呼ばんと欲するものゝ特性は次の如し。
    熟期晩くして豊産、莖は直立し強く、葉は多からずして淡緑、中等大にて強健、塊莖卵形又は楕圓形、扁平ならず、目は少なく、小形にして淺し、皮は白黄色にして著しく網紋ありて粗〓、肉は白色にして堅緻花は白色にして僅かに紫色を帶ぶ。
    本種が疫病に對して抵抗力の強大なるは多年の圃場試験竝に實地家の實驗に徴して明かなり、然れ共夏疫病竝に萎縮病に對しては感受性強きは缺點なれど此兩病被害の程度は疫病と同日の談に非らず、尚本種の缺點と認むべきは其味の雪片種に比して遠く及ばざるにあり、依りて良種と交配し改良をなさんことを企圖し已に北海道農事試瞼場に於ては之れが試験を行ひつゝあるが故に近く理想的良品種を育成し廣く紹介するの期あるべきを信ず。
  • 逸見 武雄
    1918 年 1 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1918年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    昨大正五年八月農學士菅谷忠次郎君東京に於て「マサキ」の病葉を採集し同年九月鏡檢の結果炭疽病の一種なるを知りて予に標本を分與し、之が研究を慫慂せらる、然れども當時病原菌既に死して分離培養する能はざるを遺憾とせり、更に同年十二月靜岡縣農會鶴田章逸君より同一菌の寄贈を受け再び分離を試みしが、其際乾燥標本なるに係はらず特殊の方法下に能く純粹培養に成功し得たり。
    從來「マサキ」の炭疽病菌として記載せられたるもの三種にしてGloeosporium frigidum SACC., Gloeosporium Evonymi BR. ET CAV. の二種は伊太利にて發見せられ、 Colletotrichum Griseum HEALD ET WOLFの一種は米國「テキサス」に産す。本炭疽病々原菌は胞子の巾が長さに比し著しく大なるの一事を以て本邦産各菌と全く其赴を異にし、又上記三菌とも自ら相隔る遠し、故に予は本病原菌を新種と斷定しGloeosporium evonymicolumと命名せり。
    本病は「マサキ」の葉に發生し大小不規則の病班を形成す、菅谷氏採集の標本によれば健全部との境界著明ならず周圍より稍々褪色せる病班の表面には不規則に配列せる胞子層小黒粒點をなす。鶴田氏標本によれば病斑灰白色にして健病境界は褐色なり、但し該病斑には他菌の混生せるものあるにより果して本病原菌の作用に基くや疑問とす。予は純粹培養を以て數囘接種試験を施行し以て次の結論を得たり。一、本菌は寄生性強烈にして容易に健葉を侵襲し得。二、本菌は「マサキ」のみならず「ツルマサキ」をも侵襲し得。三、本菌は接種試験によりて稀に稍々褪色せる無縁病斑竝に胞子層を形成すれども、多くは全葉を直ちに乾燥枯死せしめ胞子層の成熟なくして落下せしむ。天然に於ても斯くの如きもの多きは想像し得る所にして其損害決して尠少にあらざるべし。
    本病原菌の胞子は橢圓體にして兩端圓く長さ14-20μ巾6-8.4μ單胞にして厚膜且つ透明なり。病葉を過濕に保存せば胞子層の周圍に硬毛を發生すること多し。本菌の生理學的性質に就ては近く公表することとし茲には省略す。
  • 三浦 肆玖樓
    1918 年 1 巻 1 号 p. 16-26
    発行日: 1918年
    公開日: 2009/04/03
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    (1) 花期接種を受けたる麥粒は大小麥共に其長幅厚重量比重等健全粒より小なり。
    (2) 接種を受けたる粒は大小麥共健全粒の如き光澤なく且つ其色も幾分濃し
    (3) 黒奴菌の胞子を柱頭上に接種すれば直ちに發芽して侵入し三日目には既に胚子内に達す。
    (4) 黒奴菌の胞子は粘液に富める柱頭上にては容易に發芽するも其他の場所にては發芽極めて困難なるが如し。
    (5) 子房壁より侵入すとの説は少くとも予の實驗によれば眞ならざるが如し。
  • 堀 正太郎, 卜藏 梅之丞
    1918 年 1 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 1918年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    歐洲大戰亂の突發以來菌類並に細菌の培養に殆んど缺くべからざるペプトーンの輸入途絶したる爲其市價は戰前に比すれば八倍乃至十倍に騰貴し内國製品と雖も尚ほ一封十五圓の時價を保てり。之が爲菌類並に細菌研究所の培壌に要する經費は著しく増加し、就中我邦にて汎く野鼠驅除に應用せらるる野鼠窒扶斯菌の培養は甚だ失費多きことゝなれり。
    是れ著者の一人が培壌製造上ペプトーンに代用すべき經濟的物料の研究に著手せる動機とす。硫酸アムモニア、炒大豆粉、大豆粕等に就て試驗を行ひたるに大豆粕は最も良結果を奏し其細〓せるもの三十瓦(水一立に對して)は二十瓦のペプトーン(細菌學上普通に使用する分量)に代用し得べきことを發見せり。此大豆粕煎汁にて寒天、膠、ブイヨン培壌を製して野鼠窒扶斯菌、諸種の植物病原菌並に非病原菌の培養を試みしにペプトーン添加の培壌と毫も異なることなく、野鼠窒扶斯菌の如きは一層良好の發育を爲せり。
    是を以て大正五年以來西ケ原農事試験場に於ては特別なる研究の場合以外には菌類並に細菌の培養には皆此大豆粕煎汁培壌を使用することゝなり、又府縣農事試験場にて野鼠驅除用の野鼠窒扶斯菌は一般に本培壌を使用するに至れり。之が爲我邦の各農事試験場の菌類及細菌研究室の培壌に要する經費は著しく節約し得られたり。今時價に依り培壌一立に要する費用を比較すれば次表の如し。
    井ツテ氏ペプトーン 2.0000〓
    内國製ペプトーン 0.6600
    大豆粕 0.0012
    大豆粕の分析表に據れば微生物の營養こなる主要成分は粗蛋白質(カゼイン)及可溶性無窒物(水酸化炭素物)にして、可溶性窒素の量の多少にあらざることは次に記す大豆粕煎汁及ペプトーン溶液中に存在する全窒素量の比較に依りて明かなり。
    大豆粕汁 大豆粕三〇瓦,水一立,一時間半煮沸) 0.73〓
    ペプトーン溶液(ペプトーン二〇瓦,水一立,一時間半煮沸)14.55
    斯くの如く大豆粕煎汁に溶解せる全窒素の量はペプトーン溶液の其れの約二十分一の少量に過ぎず而も尚ほ微生物の蕃殖の良好なるは窒素以外に他の營養分の存在するを以てなり。
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