日本植物病理学会報
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32 巻, 4 号
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  • 角名 郁郎, 北村 吉覇, 竹中 孝司, 馬場 達彦, 碓井 義郎
    1966 年 32 巻 4 号 p. 175-180
    発行日: 1966/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本報では,halogenophenylpyrazolone, halogenophenylhydrazineおよびhalogenophenylacetylhydrazine誘導体計51種について,イネもんがれ病に対する効果と化学構造との関係について検討し,また一部の化合物については,イネいもち病,しらはがれ病,キュウリたんそ病およびハクサイなんぷ病に対する効果について試験した。
    イネもんがれ病に対するhalogenophenylpyrazolone, halogenophenylhydrazineおよびhalogenophenylacetylhydrazine誘導体の効果はともに4-halogenophenyl基を有するものがすぐれており,効果と化学構造との関係に関連があることを認めた。本結果からhalogenophenylpyrazolone誘導体はイネ体上で分解してヒドラジン化合物となり高い効果を現わすものと推定された。
    温室内ベッド試験の結果から,halogenophenylpyrazolone誘導体3種,halogenophenylacetylhydrazine誘導体3種およびhalogenophenylhydrazine誘導体5種はいずれもイネいもち病に高い防除効果が認められ,とくに1-(3, 4-dichlorophenyl)-2-acetylhydrazineおよび4-chlorophenylhydrazine・formateの防除効果が高かつた。
    キュウリたんそ病に対してはhalogenophenylpyrazolone誘導体10種およびhalogenophenylacetylhydrazine誘導体4種にかなり高い予防効果が認められたが,イネしらはがれ病およびハクサイなんぷ病に対しては効果がほとんどなかつた。
  • 冨山 宏平
    1966 年 32 巻 4 号 p. 181-185
    発行日: 1966/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    無感染健全ジャガイモ(R1-遺伝子)細胞に非親和性レースが侵入すると短時間(約10∼20分間)のうちに宿主細胞は死にいたる。親和性レースでは感染後2∼3日間宿主細胞は死なずに共生関係が成立する。親和性レースの感染後5∼6時間で不親和性レースを同一細胞に接種すると,宿主の過敏感死は若干おくれるにすぎないが,15∼20時間後に接種すると,過敏感死は非親和性レース侵入後少くも4時間以内では起らない(4時間以上の観察は誤りを生ずる恐れがあつて行わなかつた)。
    以上からR1-遺伝子による細胞の過敏感性は親和性レース侵入によつて徐々に失われ,15∼20時間後にはいちじるしく失われていると結論する。
  • 玉利 勤治郎, 小笠原 長宏, 加治 順, 富樫 邦彦
    1966 年 32 巻 4 号 p. 186-193
    発行日: 1966/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    In the previous papers we reported on the isolation of piricularin and picolinic acid, the toxins of Piricularia orizae, from the culture broth of the fungus and the rice plant, severly infected with blast disease, and then on the biochemical observations of the effects of these toxins to the rice plant.
    To determine whether or not piricularin takes part in the blast fungal infection, we investigated the effect of a piricularin-detoxifying substance on the resistance of rice tissue to this infection. As a piricularin-detoxifying substance we chose ferulic acid (4-hydroxy-3-methoxycinnamic acid) which is a minor ingredient of polyphenols of rice plant, since it is easy to obtain by synthesis and it has not an anti-blastfungal activity.
    The experimental results demonstrated that the application of ferulic acid to the rice plant causes an increase in the tissue-resistance to the blast-fungal infection. The following facts support the view that the increase in the resistance to the infection of rice plants treated with ferulic acid depends upon the piricularin-detoxification: (a) Neither ferulic acid itself nor its oxidized product by oxidase exhibits any anti-blastfungal activity at 1/5, 000 dilution with the pH level of rice juice. (b) Not only ferulic acid but its oxidized product by oxidase also has a piricularin-detoxifying ability. (c) The juice pressed from the rice plant applied with ferulic acid also possesses a piricularin-detoxifying ability, exhibiting no inhibitory effect on the germination and growth of blast fungal spores. (d) The application of ferulic acid causes a respiration-rise of the rice plant, but this respiration-rise does not couple with oxidative phosphorylation which is to be related to the resistant reaction of the host tissue against the infection.
    The above mentioned observations lead to the conclusion that piricularin would play an important role in the blast-fungal infection together with picolinic acid suppressing the resistant reaction, i.e. the hypersensitive reaction, of the host tissue to the infection.
  • 大島 信行, 玉田 哲男
    1966 年 32 巻 4 号 p. 194-202
    発行日: 1966/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. ジャガイモ葉巻病ウイルスに感染したPhysalis floridana Rydb.上で30分,または60分吸汁させたモモアカアブラムシ(Myzus persicae Sulz.)は病原植物を離れたあと,3時間以内には健全P. floridanaにウイルスをうつすことができなかつた。アブラムシを10分,1時間,3時間および24時間罹病P. floridana上で吸汁させたあと,24時間間隔で5日間健全P. floridanaに移しかえたところ,10分の吸汁では伝染しなかつたが,1時間では2日目からわずかの伝染が認められた。ついで3時間,24時間と伝染率が増した。
    2. 罹病Datura stramonium L.上で飼育したアブラムシは,5分の吸汁でP. floridanaにウイルスをうつすことができた。また,葉巻病ウイルスの弱毒系統は強毒系統よりもよく伝播される傾向があつた。
    3. ハクサイ上で飼育した生後1日目のアブラムシのnymphsと生後8日目のadultsを,2日間罹病P. floridana上で吸汁させたあと,1日ずつ死ぬまで健全P. floridanaに移しかえた。15日まで生存したアブラムシについてみると,adultsよりnymphsの方が伝染率が高く,どちらも病植物を離れてからの日数が経過するにつれて,次第に低下していく傾向があつた。
    4. アブラムシを1時間,3時間および6時間罹病P. floridana上で吸汁させたあと,同様に健全植物に移しかえた結果,病植物上の吸汁時間が長いほど伝染率が高く,また伝染力の接続期間も長かつた。しかし,いずれもある程度まで伝染力が上昇し,その後徐々に低下していく傾向は獲得吸汁時間には関係がないように思われた。
    5. ウイルスをうつす能力はアブラムシの個体差が著しい。
  • 宇井 格生
    1966 年 32 巻 4 号 p. 203-209
    発行日: 1966/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 二重シャーレ培養により,無機塩類,炭素源を分け,Rhizoctonia solaniの培養を行なうとき,その菌核は炭素源のみを含む培養基上には形成されず,無機塩類培養基上に形成される。
    2. 培養基中の炭素源は菌糸中を転流により運ばれて菌核形成に利用される。
    3. 長尺培養その他の実験から,この菌は着生基質(food base)の栄養を利用して,無栄養の培養基上を長い距離生長して菌核を形成する。また,先に形成された菌核の内容は転流により生長先端の方へ運ばれ菌糸の形成に再び利用され,なお,菌核の新生にも役立つ可能性が高い。
    4. F-20, III-A型などの菌株は,二重シャーレ内側容器の壁面に菌糸束を形成し,その形状はHelicobasidium purpureumの菌糸束と類似する。
    5. R. solaniの菌核形成条件は,菌糸中の物質転流,とくに炭素源を考慮に入れ検討する必要がある。
  • 第2報 ヒダ葉と糸葉の比較
    石家 達爾, 河上 双葉
    1966 年 32 巻 4 号 p. 210-214
    発行日: 1966/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ワクのモザイク病のうち糸葉とヒダ葉の罹病桑苗について,30°C, 23°Cおよび15°Cの各温度下で現われる病徴の種類および程度を比較観察した。
    糸葉の材料からは少数の輪紋症状が現われたほかはすべて糸葉でヒダ症状は全くみられなかつたのに対し,ヒダの材料からはヒダ,輪紋,黄斑の各症状が現われたが糸葉はみられなかつた。
    発病程度と温度との関係では糸葉とヒダ葉とで著しくことなつた。ヒダのうち滋賀県の材料では発病程度が低く温度との関係を論ずることはできなかつたが,群馬県の材料では23°Cと15°Cとで顕著な発病を示し30°Cではほとんどmaskした。それに対して糸葉の材料では23°Cがもつとも発病激しく次いで30°Cであつたが,15°Cでは病徴はほとんどみられなかつた。
  • 第1報 各種有機溶液中における走電性
    桂 〓一, 正子 朔, 宮田 善雄
    1966 年 32 巻 4 号 p. 215-220_1
    発行日: 1966/09/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    各種有機化合物の溶液中におけるPhytophthora capsici Leon.の遊走子の白金電極に対する走電性の研究を行なつた。供試した電極間の電位勾配は2V/cmであつた。イオン交換水中において遊走子は陰極へ走性を示して集積した。この際,遊走子は電極に近づくにつれて遊泳阻害を受けて回転,自転運動を起し,その後間もなく静止した。一方,陽極においては速やかに阻止帯の形成がみられた。逆に,マレイン酸,リンゴ酸,コハク酸,グルタミン酸,アスパラギン酸など多くの有機酸のナトリウム塩溶液の場合,10-2モル濃度において陽極に著しい集泳が起つた。10-3モルから10-5モルへと濃度が低下するにしたがい,遊走子の集団と電極の間にいわゆる阻止帯が形成され,次第に大きくなつた。フマール酸とクエン酸の場合は10-2モルにおいてもなお阻止帯が形成されていた。10-2モルのクエン酸溶液中を除いて,多くの場合陰極においてもまた阻止帯の形成を認めた。
    これに対し,各種糖類溶液中においては濃度にほとんど関係なく,陰極に著しい遊走子の集積が起り,その様相は,イオン交換水中の現象がやや強く現われたもののようであつた。これらの現象は従来の濃度勾配説や電流説のみでは十分に説明することができないようである。なお,D型およびL型のリンゴ酸とアスパラギン酸の各ナトリウム塩溶液(10-2モル)中では,いずれも陽極に対して同程度の著しい集泳を認めたことは,遊走子の走電性と物質代謝との間には直接的関係が無いことを示しているようである。
  • (2) TMVワクチンの濃度と接種後経過時間の親ウイルスのトマト感染に対する阻止効果
    後藤 忠則, 小餅 昭二, 大島 信行
    1966 年 32 巻 4 号 p. 221-226
    発行日: 1966/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トマトモザイク病防除のためのワクチネーションの方法を検討するため(弱毒系統,TMV-L11)接種後の経過時間およびワクチン濃度と親ウイルス(TMV-L)の感染に対する阻止効果の関係について試験を行なつた。
    ワクチンは罹病トマトの生葉重に10倍と10,000倍量,親ウイルスは10倍量の水道水を加え磨砕搾汁したものを用いた。播種13∼18日後のトマトの子葉の1枚にワクチンを接種しておき,0, 1, 2, 4, 8, 12, 24, 48および168時間後に親ウイルスを他の1枚に接種し,親ウイルス接種後9日目から3あるいは4日毎に褪緑,モザイク斑紋,萎縮および奇形について調査を行なつた。
    1. 親ウイルスを接種した株は接種約7日後に褪緑,続いてモザイク斑紋を生じ,12日後にはほぼ全株に達した。この時期にはすべての株が萎縮を現わす。ワクチン単独区は弱いモザイク症状を多少発生するのみであつた。
    2. ワクチン処理1∼8時間後に親ウイルスを接種した区は12日後において褪緑や萎縮が親ウイルス区の40∼60%程度で,同時接種区でもある程度の阻止効果が認められた。24時間以上経過した区は阻止効果が大きく,親ウイルス区のような症状を示す株が僅か10%以内にとどまつた。モザイク斑紋は24時間以上の区の発生が多少遅れるのみで,いずれの処理区も75∼100%に達した。だが,いずれの症状もワクチン接種区は対照区より症状が軽く,親ウイルスに対する阻止効果が見られた。
    3. ワクチン濃度を10,000倍に希釈すると24あるいは48時間経過しても十分な効果が認められず,168時間で阻止効果が現われた。
    4. ワクチンの接種葉より他部への移動の時期は接種2∼3日後に始まると推定された。
  • 伊藤 卓爾, 平井 篤造
    1966 年 32 巻 4 号 p. 227-235
    発行日: 1966/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    タバコモザイクウイルス(TMV)に感染したタバコ葉内の核酸をメチル化アルブミン(MAK)カラムで分析した。感染後5日目のタバコ葉内に,0.5μg/mlのリボヌクレアーゼ(RNase)で消化されず,かつTMVのリボ核酸(RNA)と塩基組成の似ている異常RNAの存在を認めた。このRNAはMAKカラムでデソキシリボ核酸(DNA)の分画の近くに溶出する。感染葉では18sリボソームRNAへのP32のとりこみが非感染葉より少なくなるが,これはTMV-RNAの合成が盛んになるためと思われる。またDNA依存のRNA合成を阻害するマイトマイシンC (MC)の処理で,感染葉の28s RNAの合成は低下しない。これはTMV-RNAがこの分画に同時に現われるためで,TMV-RNAはDNA依存の系と別の系で作られることを暗示した。
  • 第1報 土壌中の植物残渣を利用するRhizoctonia solani, Fusarium oxysporum, Pythium aphanidermatumの生存について
    小倉 寛典
    1966 年 32 巻 4 号 p. 236-243
    発行日: 1966/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本報告はRhizoctonia solani, Fusarium oxysporum, Pythium aphanidermatumの腐生相における生存様式について検討した。
    3病原菌はいずれも汚染土壌中の植物残渣から分離されるが,P. aphanidermatum, R. solani, F. oxysporumの順に生息域は深くなる。しかし,大部分の菌は地下20cmあたりまでに生息する。土壌を過湿状態に保つと,前2者は地表部に近づくが,F. oxysoprumはさほど移行はみられない。また,土壌を地下2mまで掘り取つて,殺菌後,R. solaniを接種すると,30cm以下の土壌では本菌の着生率は低下する。この土壌の成分は,窒素,りん酸には各深度によりあまり差は認められないが,炭素源にはかなり差が認められ,30cm以下で急に減少し,100cmをすぎればさらに減少する。このことは,病原菌が土壌中で生存しうるためには炭素源の有無が大いに影響すると考えられる。土壌中での病原菌の生存期間は,温暖期にはP. aphanidermatumは1ヵ月,R. solaniは3.5ヵ月,F. oxysporumは5ヵ月で菌数は半減する。しかし,後2者は7ヵ月をすぎても少数ながら常に残存する。また,土壌を湛水状態にすると,P. aphanidermatumは畑地状態の場合と比べて菌の減少の様相は差がないが,R. solani, F. oxysporumはかなり早く菌数の減少がおこる。また,寒冷期には菌は残渣上で生存し,翌春になつて減小する。このように病原菌は植物残渣を利用するが,P. aphanidermatumは新鮮なわらを利用し,R. solani, F. oxysporumはやや腐植の進んだわらを利用しやすい。
    これらの結果,3菌が土壌中で生存するには植物残渣を利用するが,残渣への着生あるいは残渣上での生存を決定する要因は各菌が到達した残渣中の成分が大きく影響すると考えられる。
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