1957∼'60の4年間に全国に発生したコムギ黒さび病菌の56の夏胞子標本を集め, physiologic race を検定した結果, I∼IIIの3群に分けられた。Iは race
56で1957年に長野から2標本, IIIは race
11に近く1959年に長野から2, '60年に新潟から1標本を得られただけであるが, II群は race
21に相当し, 北海道から鹿児島にわたり毎年得られ, 56標本の中51を占めわが国の最も重要な生態型である。多数のコムギ品種, 系統の幼苗に対する接種試験で, 大部分は3生態型のすべてに感受性を示した。
T. timopheevi は3生態型のすべてに免疫性, またそれが母本となつた3交配系統が高度抵抗性を示しただけで, これらの野生コムギの遺伝因子を導入した抵抗性品種の育成が望まれる。わが国における本菌の生態型構成が赤さび病菌のそれと比較して非常に単純であることの一因として, 感受性の barberry が存在せず, また自然に圃場で形成された冬胞子が発芽しないために, 本菌が中間寄主を通過する機会がほとんど無いことをあげた。
抄録全体を表示