日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
49 巻, 5 号
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
  • 国安 克人, 山川 邦夫
    1983 年 49 巻 5 号 p. 581-586
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    レースJ3によるトマト萎ちょう病とトマト褐色根腐病は,その外部病徴および発病環境が類似している。トマト褐色根腐病等複合抵抗性を有するトマト台木用品種KNVFおよびKVF,の両病害に対する抵抗性の差によって識別することができるか否かを検討する目的で本試験を実施した。罹病性対照品種Walter,福寿2号は両病原菌の単独および混合接種に対して顕著な根腐症状を呈したが,KNVFおよびKVFは両病害に対して同程度の高い抵抗性を示した。したがってこれら台木品種利用による両病害の識別は困難であった。福寿2号を穂木としたKNVF接ぎ木トマトおよび自根福寿2号をトマト萎ちょう病菌レースJ3接種土壌に定植した場合,自根福寿2号の根部は顕著に腐敗し,茎葉部萎ちょう株率も高率であったが,KNVF接ぎ木苗では茎葉部萎ちょう株は全く認められず,根部褐変程度も軽微であった。この結果からトマト萎ちょう病(レースJ3)の防除にトマト褐色根腐病と同様にこれら台木用品種を用いた接ぎ木栽培が有効であることが判明した。
  • 森田 昭, 野中 福次, 牧角 啓一
    1983 年 49 巻 5 号 p. 587-592
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ビワ葉に非親和性の細菌タバコ野火病菌Pseudomonas syringae pv. tabaciを1次接種後,3日目にがんしゅ病菌Pseudomonas syringae pv. eriobotryaeの親和性B系統菌を2次接種すると,親和性細菌の増殖が阻害されて,病斑形成は14日遅れ,病斑の拡大も抑えられた。両菌の接種順序を逆にした場合にはこの現象はみられなかった。ビワに非親和性の病原細菌または非親和性がんしゅ病菌C系統菌を接種すると,その葉内には接種後24時間目からファイトアレキシンの1種であるaucuparinが生成され,3日から4日目には最高に達したが,aucuparinの蓄積に並行して,葉中の細菌の増殖が抑えられた。これに対し,親和性細菌のB系統菌では,接種後その菌量は病斑形成の認められる14日目まで漸増し,aucuparinの生成は病斑形成まではみられず,形成後急速に増加した。このことから,ビワがんしゅ病の抵抗性機作にaucuparinが関連していると考察した。
  • 夏秋 知英, 山下 修一, 土居 養二, 奥田 誠一, 寺中 理明
    1983 年 49 巻 5 号 p. 593-599
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ダイコン葉縁黄化ウイルス(RYEV)をCsCl平衡密度勾配遠心分離により純化した。ウイルス粒子はCsCl中で浮遊密度が約1.37g/cm3のところに1本のバンドを形成した。RYEV純化試料は典型的な核タンパクの紫外線吸収を示し,そのAmax/AminとA260/A280の比はそれぞれ約1.10と1.39であった。RYEVはアブラナ科植物に感染する4種のウイルス(turnip crinkle virus, turnip rosette virus,カブモザイクウイルス,キュウリモザイクウイルス)およびRYEVに似た粒子形態と生物学的性状を有する10種の種子伝染性ウイルスと血清反応を示さなかった。RYEVの純化試料からSDS-ポリアクリルアミド電気泳動により分子量約63,000と61,000の2種のタンパクのバンドが得られた。RYEVの核酸は高塩濃度下でRNaseに耐性で,poly (I): poly (C)抗血清と反応することから二本鎖RNAであることが判明した。RYEVの二本鎖RNAはポリアクリルアミド電気泳動で分子量が約1.30, 1.25, 1.21×106の3本のメジャーバンドと,同じ,く1.14, 1.09×106の2本のマイナーバンドに分かれた。RYEVとそれに類似する数種の種子伝染性二本鎖RNAウイルスは新しい植物ウイルスグループを形成するものと考えられた。
  • 高橋 敏房, 道家 紀志
    1983 年 49 巻 5 号 p. 600-609
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カンキツかいよう病菌の非洗浄菌体および菌体外多糖質(EPS)を凝集するが,洗浄菌体や非洗浄EPS非生産菌体を凝集しない蛋白質性の成分が,ウンシュウ,ナツダイダイおよびポンカンの葉より得られた。同成分は,葉の磨砕液からHCl酸性溶媒(pH 4.0)で抽出され,50%飽和硫安で沈殿回収された。この凝集素は,熱および蛋白質分解酸素に不安定で,100mMより低濃度の各種の塩類には影響を受けず,pH 6以上で活性が阻害された。同様な凝集は,他のXanthomonas菌であるカンラン黒腐病菌およびインゲン葉焼病菌の非洗浄菌体,およびそれらのEPSでもみられた。しかし,検定した18種の糖のうち,D-glucosamineのみがカンキツかいよう病菌の凝集を阻害したが,他のXanthomonas菌の凝集は阻害しなかった。
  • 鳥山 重光, 御子柴 義郎, 土居 養二
    1983 年 49 巻 5 号 p. 610-618
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イタリアンライグラスで,やや萎縮し,葉に黄色の条斑紋を示す斑紋萎縮病から分離されたウイルスは,汁液接種でイタリアンライグラス,コムギ,オオムギ,エンバク,ライムギ,アワに高率で感染し,オーチャードグラス,ペレニアルライグラス,チューイングフェスクにも低率であるが感染した。オオムギ,オーチャードグラス,アワなどではえ死症状を伴うことが多い。本ウイルスの野外での発生については十分調査していないが,本病発生草地では,イタリアンライグラスにかなりの発生がみられ,またオーチャードグラスでも発生が認められた。ウイルス粒子は直径約28nmの球形で,分子量約1.5×106の一本鎖RNAを含み,蛋白の分子量は26,000dで,他に微量の17,500dと16,500dの蛋白が認められた。核酸含量は粒子重の約23%,CsCl中の浮遊密度は1.366g/ml,粒子の沈降定数は108Sであった。本ウイルス抗血清はコックスフットモットルウイルス(CfMV)およびphleum mottle virus (PMV)と弱い反応を示したが,本ウイルスとの沈降帯とは血清学的に明らかに異なる。またイネ科草類を宿主とし,類似の粒子性状をもつcocksfoot mild mosaic virus, cynosurus mottle virus, CfMV, PMVの抗血清は本ウイルスと全く反応しなかった。本ウイルスは新ウイルスと考えられたので,ライグラスモットルウイルス(英名:ryegrass mottle virus)と命名した。外被蛋白の分子量,Setaria属植物に対する寄生性や粒子の物理的性状から,CfMVグループよりはPMVグループ(Hull, 1977)に属すると思われる。クリプトグラムは,R/1:1.5/23:S/S:S/*と表わされる。
  • 大内 昭, 大沢 高志, 西村 十郎
    1983 年 49 巻 5 号 p. 619-626
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    タマネギの葉身に淡黄緑色∼淡褐色の斑点と条斑とを生じたのち,葉鞘,葉鞘基部および鱗茎を次第に腐敗させる細菌病の詳細を知るために,病原体の分離および同定を試みた。
    被害個体24点から得た病原細菌31株のうち,20株は本邦未記載のErwinia rhapontici (Millard 1924) Burkholder 1948と同定され,残り11株はタマネギの病原として未知のPseudomonas marginalis pv. marginalis (Brown 1918) Stevens 1925と同定した。また,本実験の結果から,タマネギ春腐病の病原之して記載されたP. syringaeP. marginalisに訂正するのが妥当と考察した。E. rhaponticiおよびP. marginalis pv. marginalisによる病徴の差異はわずかであり,被害株の多くはこれらが重複感染しているので,両病原体によるタマネギの疾病を腐敗病と一括して呼称することを提案した。
  • 富永 時任, 高梨 和雄, 西山 幸司, 岸 国平
    1983 年 49 巻 5 号 p. 627-632
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1969年,ウメかいよう病細菌をPseudomonas syringae(旧学名)と予報した。分離菌株数が少なかったので菌株数を増し,P. syringae pv. syringae, P. syringae pv. morsprunorumを輸入して対照菌とし,Garrettらの両細菌の判別法にしたがって再度同定を行った。予報した4菌株にはその分離当初から細菌学的性質に若干の差異が認められたが,再試験の結果に基づいて菌株間の差異と判断し,Pseudomonas syringae pv. morsprunorum (Wormald 1931) Young, Dye and Wilkii 1978の1系統と同定を改めた。1978年および1980年,ウメかいよう病の果実病斑部および潜伏越冬病斑部より,新たに病原細菌27菌株を分離した。これらは細菌学的性質が均一で,Garrettらの判別法や対照のpv. morsprunorumと一致したので,典型的なP. syringae pv. morsprunorum (Wormald 1931) Young, Dye and Wilkii 1978と同定した。
  • 上運天 博, 脇本 哲
    1983 年 49 巻 5 号 p. 633-638
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ白葉枯病菌繊維状ファージXfおよびXf2のDNA塩基組成は極めて類似している。それら両ファージの複製型DNA (RFI-DNA)を各種の制限酵素によって切断し,DNA断片の泳動パターンを比較し,両者の類縁の程度を検討した。RFI-DNAはファージ感染菌の溶菌液からエタノール沈殿により調製した。得られたRFIはイネ白葉枯病菌に対し感染性を有していた。Xf-RFIおよびXf2-RFIの分子量はアガロースゲル電気泳動の相対移動度より,それぞれ4.5×106および4.7×106ダルトンと推定された。両ファージのRF-Iを制限酵素Hpa II, Hha I, Hind II, Hae III, Alu Iで処理し,ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた結果,得られた切断パターンには同一の泳動度を示す断片は極めて少なく,XfおよびXf2はかなり異なったファージであることが明らかとなった。
  • トマトのカルス細胞,プロトプラスト,子葉,リーフディスクおよび本葉におけるTMV抵抗性発現の比較
    豊田 秀吉, 山本 百与, 平井 篤造
    1983 年 49 巻 5 号 p. 639-646
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    タバコモザイクウイルス(TMV)抵抗性遺伝子Tm-22をもつトマトGCR 267,瑞光(ZK)と罹病性の福寿2号(F2)から,カルス細胞,プロトプラスト,子葉および本葉をとり,それぞれにTMV (OM系)を接種し抵抗性の発現状況を検討した。TMVの定量には免疫電気泳動法を使用した。TMVを強振接種法でカルスに接種し,6日後にTMVを定量したところ,F2のカルスでは顕著なTMV量の増加が認められたが,抵抗性トマトから得たカルスではF2の1/5から1/9に抑えられていた。また強振接種法により分離したカルスをその大きさで類別しTMV量を調べたところ,直径が500μm以上のF2のカルスではTMV量の有意な増高が認められ,それ以下のカルスでは罹病性と抵抗性のカルスの間に差は認められなかった。抵抗性および罹病性トマトのカルスまたは本葉からプロトプラストを調製し,TMVを接種したところ,いずれのプロトプラストでも,48時間後のTMV感染率やTMV量には抵抗性と罹病性の間で差は認められなかった。子葉,本葉および本葉のリーフディスクのTMVの量を比較した場合,抵抗性トマトではTMVの増殖が抑えられていたが,GCR267とZKの間ではTMV量に有意な差は認められなかった。
  • 菌糸融合群第3群,第5群,第7群および第BI群内における遺伝的類縁性
    国永 史朗, 横沢 菱三
    1983 年 49 巻 5 号 p. 647-652
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Rhizoctonia solaniの菌糸融合群第3群(AG-3)(ジャガイモ低温系,IV), AG-5, AG-7およびAG-BIについて,これら同一菌糸融合群内における菌株間の遺伝的類縁性を検討するため,DNA-DNA再会合反応速度解析に基づきDNA塩基配列の相同性を比較した。各菌糸融合群内の菌株間のDNA相同性は,いずれの場合も高い値を示し,AG-3: 97.6∼100%, AG-5: 94.0∼98.2%, AG-7: 95.6∼98.8%, AG-BI: 91.4∼100.2%であった。DNAの相同性比較結果から,これらの同一菌糸融合群に属する菌株は,互いに遺伝的に均質であると考えられた。
  • 本蔵 良三, 白子 幸男, 江原 淑夫, 山中 達
    1983 年 49 巻 5 号 p. 653-658
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    宮城県内各地で採集した黄化萎縮病罹病イネより,形態的に異なる2種類の小球形ウイルス様粒子(A型およびB型VLPと仮称)が分離された。A型VLPはリンタングステン酸(PTA)染色で径30nm,酢酸ウラン(UA)染色で径32nmで,表面に高さ4nmの突起が認められた。B型VLPはPTA染色で径32nm, UA染色で径35nmで,表面は平滑であった。A型およびB型VLPの純化標品は,260nmで最大値,244nmで最小値を持つ,核蛋白性粒子特有の紫外部吸収スペクトルを示した。A260/A280比は,A型VLPで1.44, B型VLPで1.60であった。A型およびB型VLP間に血清学的類縁関係は認められなかった。宮城県内の採集地46か所中,11か所の試料からA型およびB型VLPが,9か所からA型VLPのみが,21か所からB型VLPのみが検出され,5か所からは両VLPとも検出されなかった。発病田近辺の2か所から採集した健全イネからは,両VLPとも検出されなかった。
  • 津野 和宣, 脇本 哲
    1983 年 49 巻 5 号 p. 659-669
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    おもに導管内で増殖するイネ白葉枯病菌と柔組織を侵すイネ条斑細菌病菌の両細菌をイネ葉組織の細胞間隙へ強制的に注入し,宿主-病原菌相互関係を電顕観察により検討した。イネ白葉枯病菌注入3日後の組織では,細菌に接する宿主細胞壁の繊維状化とその遊離,および細胞壁の部分的剥離などが認められた。また,宿主原形質膜はしばしば細胞壁から遊離して小胞状を呈し,また,その単位膜構造が不明瞭となっていた。本細菌の注入7日後の組織においては,著しく繊維状化している宿主細胞壁がしばしば観察され,また,細菌はある程度増殖していたが,宿主細胞間隙で繊維状物質に包まれて形態的に異常を呈しているものが多く観察された。さらに,本細菌の注入後14日目になると,多くの細菌は変性した宿主細胞壁および細胞質に由来すると思われる多数の顆粒状物質に包まれて形態的に異常を呈していた。イネ葉柔組織に寄生性を持つイネ条斑細菌病菌は,注入14日後まで繊維状あるいは顆粒状物質に包まれることなく,宿主細胞を著しく変性させながら旺盛に増殖を続けた。これらの観察結果より,イネ白葉枯病菌を注入したイネ葉柔組織において観察された繊維状物質および顆粒状物質は,宿主細胞に由来し,本細菌に対する抵抗反応に関与する物質であることが示唆された。
  • 大村 敏博, 美濃部 侑三, 木村 郁夫, 日比野 啓行, 土崎 常男, 斎藤 康夫
    1983 年 49 巻 5 号 p. 670-675
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ・ラギッド・スタント・ウイルスの純化法をTriton X-100の使用,緩衝液にMgCl2を添加することおよび純化の後半にヒスチジン緩衝液を用いることによって改良した。径約55nmの純化粒子を注射したトビイロウンカはイネに本病特有の病気を伝搬したことから,本粒子がイネ・ラギッド・スタント病の病原ウイルスであることを確認した。純化ウイルス粒子から得た2本鎖RNAは10本に分節していた。Galinskiらの報告に基づいて計算した核酸の総分子量は22.91×106ダルトンであった。
  • 太田 孝彦
    1983 年 49 巻 5 号 p. 676-682
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    拮抗細菌(Pseudomonas sp.)によるかいよう病発病抑制機作を明らかにするため,拮抗細菌を接種したカンキツ葉に生成されるファイトアレキシン様物質について検討した。拮抗細菌を単独およびかいよう病菌と混合して接種した葉からの粗抽出液(A-ex, AX-ex)は,かいよう病菌単独接種葉からの粗抽出液(X-ex)および水処理葉からの粗抽出液(W-ex)に比べて著しく強い抗菌力を示した。A-exから薄層クロマト法によって単離した2種類の抗菌性物質,CLP-3およびCLP-5はかいよう病菌よりも拮抗細菌の増殖を強く阻害することから,ファイトアレキシン様物質と思われる。これら2種類の抗菌性物質はA-exおよびAX-exに多量に含まれていたが,X-exおよびW-exには極めて微量であった。これらの結果から,拮抗細菌がかいよう病の発病を抑える機作の1つとして,拮抗細菌の侵入後組織内に生成されるファイトアレキシン様物質が深く関与していることが考えられる。
  • 藤澤 一郎, 後藤 忠則, 土崎 常男, 飯塚 典男
    1983 年 49 巻 5 号 p. 683-688
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    北海道内の外観健全なアスパラガスから検出される球形ウイルスの諸性質について調べた。本ウイルスは汁液接種を行った12科43種の植物のうち,ナス科,マメ科,アカザ科,ヒユ科の多くの植物に感染し,純化ウイルスを接種したアスパラガスの若茎は,展開後まれにモザイクを生じた。本ウイルスはアスパラガス,タバコ,ヒャクニチソウ,ペチュニアで高率に種子伝染したが,アブラムシ伝染はしなかった。粗汁液中での不活化温度は55∼60C,希釈限界は10-3∼2×10-4,保存限界は2∼3日(20C)であった。
    本ウイルスの純化標品中には直径26∼36nmの大きさの異なる4種類の球形粒子が観察された。純化ウイルスを用いて作製した抗血清の力価は1/1024(重層法)で,寒天ゲル内で本ウイルスの純化標品および感染葉粗汁液と容易に反応した。また本ウイルスはMink博士より分譲されたAVII-PおよびAVII-Sの各抗血清と明瞭に反応し,AVII-P抗血清と本抗血清との反応帯の間には分枝線を形成した。以上の諸結果から本ウイルスは既報のasparagus virus IIのS系統に近いウイルスと同定した。
  • 遠藤 敏夫, 松浦 一穂, 若江 治
    1983 年 49 巻 5 号 p. 689-697
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ紋枯病菌(Rhizoctonia solani)のイネ葉鞘侵入前に菌糸をバリダマイシンA (VM-A)で処理した場合,接種後どのような変化が生ずるかを解剖学的に観察した。R. solani菌叢を,VM-A 0.63, 1.25および2.5ppm溶液に浸漬した後に風乾し,イネに接種すると,菌叢に接した葉鞘の褐変や小型の楕円形斑点の形成が認められた。これらの部分を観察したところ,葉鞘組織内に菌糸は認められなかった。これに対し,無処理の病斑においては葉鞘組織内部の空腔に菌糸が充満し,柔組織も顕著に崩壊していた。また,R. solaniを接種後8時間目に,VM-A 10ppm液を葉鞘に散布すると,接種4日後に葉鞘の褐変や小型の楕円形斑点が発生したが,葉鞘組織内への菌糸の侵入は阻止されていた。葉鞘上に菌糸は認められるが,肉眼的に病斑は認められない接種後16時間目にVM-Aを散布すると,4日目に葉鞘組織内に菌糸の侵入が認められたが,無処理組織の病斑内の菌糸に比べると,その伸長は著しく抑制され,葉鞘組織の破壊もほとんど見られなかった。これらの結果より,VM-Aの優れたイネ紋枯病防除効果は菌糸侵入阻止作用と菌糸伸長抑制作用によって発揮されるものと考えられた。
  • 荒瀬 栄, 勝田 実, 糸井 節美
    1983 年 49 巻 5 号 p. 698-703
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    いもち病菌をイネ葉鞘に接種し,菌糸生育と宿主反応を観察した。イネいもち病菌に対して異なる抵抗性遺伝子をもつ9イネ品種に非親和性いもち病菌レースを接種すると,菌糸の生育は品種間で大きく異なった。すなわち,イネ品種関東51号やとりで1号では非親和性レースの菌糸生育は非常に不良であった。これらの品種では,非親和性レースの侵入菌糸は第1次侵入細胞に限定されていた。しかしイネ品種石狩白毛やヤシロモチでは非親和性レースの侵入菌糸は葉鞘細胞内でよく発達していた。これら2品種におけるいもち病菌の行動や宿主細胞の形態的変化は親和的組み合わせで認められるものによく似ていた。さらに立毛状態のこれら2品種の葉鞘に非親和性イネいもち病菌レースを接種すると,10日後に葉鞘表面に感受性病斑に似た病斑が形成された。一方,イネに病原性のないいもち病菌とイネ品種の組み合わせでは,すべての組み合わせにおいて菌糸生育は抑制された。
  • Jenn-wen HUANG, Shou-kung SUN, Wen-hsiung KO
    1983 年 49 巻 5 号 p. 704-708
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Fusarium oxysporum f. sp. niveumの厚膜胞子形成に最適の培地を探索した。供試した10種の植物煎汁を用いて検討したが,そのうちセルリー煎汁が最も適していた。2%セルリー煎汁に0.03Mの濃度でNa2SO4を添加すると厚膜胞子形成数が著しく増加した。同培地上の厚膜胞子形成は光によって阻害された。この培地を用いると,他のFusarium oxysporum 5分化型菌,F. roseumおよびF. solaniに属するそれぞれ2系統の厚胞胞子形成も良好となった。同培地上で形成されたF. oxysporum f. sp. niveumの厚膜胞子は6時間で87-98%発芽し,またスイカ幼苗の89-100%を15日後に枯死させた。
  • 夏秋 知英, 山下 修一, 土居 養二, 奥田 誠一, 寺中 理明
    1983 年 49 巻 5 号 p. 709-712
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 萩原 廣, 竹内 昭士郎
    1983 年 49 巻 5 号 p. 713-715
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    The effect of temperature on the inactivation of radish yellows pathogen (Fusarium oxysporum f. sp. raphani) during anaerobic fermentation of radish residues was examined. The debrises of diseased radish roots were anaerobically fermented under the different temperatures, by sealing up in plastic-film bags. Either at varying or constant temperature in the range from 10 to 30C, the higher the temperature, the faster the inactivation of the pathogen progressed. Inactivation of the pathogen occurred obviously with the progress of fermentation.
  • 善林 六朗, 花田 薫, 岩木 満朗, 渋川 三郎
    1983 年 49 巻 5 号 p. 716-719
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    A virus was isolated from spinach plants showing rugose symptom in Saitama prefecture. The virus was readily transmitted by sap inoculation and by aphid, but not through seed of spinach. The virus had similar host range to CMV-P, although it did not produce any symptoms on tomato and cucumber. The virus was spherical particles, 30nm in diameter, and was serologically indistinguishable from CMV-P. Electrophoresis of RNA of the virus revealed four component showing minor differences in mobility from the components of CMV-Y and CMV-P. We propose the name of the virus, CMV-SR.
  • 鳥山 重光, 御子柴 義郎, 川端 習太郎, 土居 養二
    1983 年 49 巻 5 号 p. 720-723
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • Shaw-ming YANG, Robert W. BERRY
    1983 年 49 巻 5 号 p. 724-726
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 塩見 敏樹, 杉浦 巳代治
    1983 年 49 巻 5 号 p. 727-730
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    In 1982, a disease of strawberry plant, showing the symptoms of stunting and witches' broom, was observed in Shizuoka city. Electron microscopy revealed the presence of mycoplasmalike organisms (MLOs) in the sieve tubes of the diseased plants. Macrosteles orientalis, and Macrosteles fascifrons were found to transmit the disease to healthy plants. Of 29 species plants in 14 families, which were inoculated by the infectious M. orientalis, 26 species plants in 12 families were infected with the MLO. The strawberry witches' broom had a wide host range similar to those of sickle hare's ear yellows.
  • 手塚 保行, 勝屋 敬三
    1983 年 49 巻 5 号 p. 731-735
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 稲垣 公治
    1983 年 49 巻 5 号 p. 736-738
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Rice sheath blight fungus, Rhizoctonia solani (IA), was isolated at the rate of 100% from the mature rice plants having many sheath blight lesions. However, from the diseased samples of sheath blight like lesions, Sclerotium oryzae-sativae was isolated at the rate of 70%. High isolation rate of S. hydrophilum was observed in the plants with many sheath blight lesions, but R. oryzae was detected more often in the plants with sheath blight like lesions. S. hydrophilum and S. oryzae-sativae were frequently isolated from lesions near the basal parts of the plants.
  • 小國 昭信, 宮本 セツ, 宮本 雄一
    1983 年 49 巻 5 号 p. 739-741
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 江原 淑夫, 安藤 康雄, 山中 達
    1983 年 49 巻 5 号 p. 742-745
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 劉 勝憲, 西村 正暘, 古市 尚高
    1983 年 49 巻 5 号 p. 746-748
    発行日: 1983/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
feedback
Top