日本植物病理学会報
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22 巻, 3 号
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  • 赤井 重恭, 寺沢 迢
    1957 年 22 巻 3 号 p. 113-118
    発行日: 1957年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    1) 成葉に対する接種試験の結果はカボチヤ及びクリカボチヤは共に発病せず,キウリは供試28品種共発病した。而してキウリ品種について単位葉面積当りの病斑数を比較した結果は,津田三尺,関野2号,酒田ピックル,台湾毛馬,野生キウリらが発病程度低く,四葉,華中在来,日支青長,山東などは前者の10~15倍の病斑数を示した。2) 病斑数に関する罹病率の品種間差異は子葉でも見られる。しかしそれは成葉におけるほど明らかなものではない。而してこの場合,カボチヤ中の1品種,白菊座にも,若干発病を見た。子葉における罹病率の順位は成葉の場合とは必ずしも一致しない。3) 病斑拡大率の品種間差異は明らかでなく,品種間に殆んど差を求め難い。4) 子葉汁液中での分生胞子の発芽は著しく促進される。而して表皮組織中での菌糸の伸長には品種間の差が認められない。またキウリのどの品種についても菌の侵害をうけた表皮細胞は直ちに変色,壊死することなく,従つて菌糸の伸長が阻止せられることもない。この事からキウリの品種はいずれも炭疽病強感受性であると考えられる。5) 子葉上での分生胞子の発芽率には品種間に差が無く,抵抗性のカボチヤの子葉上でもよく発芽して附着器を形成する。6) キウリ子葉上につくられた附着器からの侵入菌糸形成率は品種間に明らかな差を認め得る。しかして侵入率と接種試験に於ける罹病率との間には極めて高い相関がある。この両者の値がよく平行する事から,キウリ品種に於ける罹病率の差は附着器からの菌糸侵入率の差に原因するものと思われ,それらは表皮の侵入抵抗に基く可能性が大きい。
  • 安盛 博
    1957 年 22 巻 3 号 p. 119-122
    発行日: 1957年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    1) 胡瓜炭疽病菌が寄主体内に侵入する過程を解剖によつて観察した。その結果,抵抗性,罹病性品種により,侵入法,体内蔓延の方法には差異がない。2) 接種24時間後では附着器は多数形成せられているが,なお侵入していない。そして48時間後には細胞縫合部上の附着器から穿入糸を生じ,細胞間の中葉を溶して細胞内に侵入するものが多い。3) 94時間後には侵害を受けた細胞内のChloroplastはEosinで濃染し崩壊している。そして5日後には細胞は全く崩壊する。4) クチクラ層の厚さには品種によつて特に差異がない。5) 附傷接種によつて罹病率は高まつたが,このことから抵抗性の原因は明確にし得なかつた。
  • 第1報 卵胞子の発芽と感染
    高津 覚, 遠山 明
    1957 年 22 巻 3 号 p. 123-128
    発行日: 1957年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    1) 本報告は,水稲黄化萎縮病菌の卵胞子発芽ならびにそれによる水稲の感染に関して行つた2, 3の実験結果について述べたものである。2) 水稲罹病葉内の卵胞子は,秋期からポット中の土壌上で湛水状態で越年した場合には,1月末にすでに発芽可能の状態となり,以後5月迄0.14~4.08%の発芽率を示す。しかして罹病葉を土壌表面に乾燥状態に放置した場合には全く発芽を認めず,土壌表面下2cmに埋没した場合には土の乾湿または湛水の有無にかかわらず僅かに発芽し得た。3) 罹病葉を春期3月および5月に,および夏期の8月末に,ポット中の湛水土壌上においた場合,ともに2ヵ月前後で卵胞子は発芽した。しかして稲組織が腐敗することによつて卵胞子は発芽可能となるもののごとく,その後適当な条件下におかれると,48時間以内で発芽する。4) 発芽能力の旺盛な場合には,腐敗罹病葉を破砕することなく,組織内にある卵胞子は充分発芽し得るようである。5) 卵胞子の発芽mediumとして,土壌浸出液は蒸溜水より劣る傾向にあり,水道水は発芽に適当でない。しかしてpeptoneを5×10-2~10-3%加えた蒸溜水中では,発芽がかえつて阻害せられ,蔗糖2%液は発芽を保進する。なお発芽後の游走子嚢形成は逆に阻害せられる。6) 発芽適温は18~20℃であつて,最高温度は25~26℃,最低は10~12℃よりやや低いようである。7) 卵胞子を用いて稲幼芽に接種試験を行つた結果かなり高い発病を示す場合が認められた。8) 卵胞子は苗代期の稲幼芽に対して,さらに秋季雑草の発芽時において,かなり重要な伝染源となるものと思われるが,今後自然状態における観察と実験を併行してその生態を明らかにする予定である。
  • VII 抵抗性および罹病性を示す馬鈴薯葉柄生細胞内に於ける疫病菌菌糸伸長の比較
    富山 宏平
    1957 年 22 巻 3 号 p. 129-133
    発行日: 1957年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    1. 馬鈴薯葉柄を縦断し, その切断面生細胞に病原性を異にした疫病菌の各系統を接種し4及び6時間後に固定し,皮層細胞内の菌糸伸長を測定した。2. その結果R1およびR4因子による抵抗性においては寄主細胞の過敏感死以前の時期には,少くも侵入後約4時間以内では侵入菌糸伸長阻害は認められないことが明らかになつた。
  • 清水 忠夫
    1957 年 22 巻 3 号 p. 133
    発行日: 1957年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
  • アミラーゼの性質に就いて I
    酒井 隆太郎
    1957 年 22 巻 3 号 p. 134-138
    発行日: 1957年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    1. 本報告は馬鈴薯疫病菌アミラーゼの主な作用上の性質及び組成について実験した結果を記載した。2. 本菌は菌糸および培養濾液にアミラーゼを生成し,これらの作用上の性質はほぼ等しく,その組成は同一と考えられる。3. 本菌アミラーゼの糊精化力並びに糖化力に対する最適水素イオン濃度はいずれも大体pH 6.0~7.0の間にある。4. 本菌アミラーゼの糊精化力並びに糖化力に対する最適作用温度は,共に40℃附近にある。5. 本菌アミラーゼの耐熱性は糊精化,糖化力とも70℃, pH 7.0, 15分の前処理によつて不活性化する。6. 本菌アミラーゼの糊精化力の耐酸性はpH 3.5, 40℃, 15分の前処理で殆んど不活性化されるが,なお微弱な糖化力は残存する。7. 本菌アミラーゼの組成はその大部分が糊精化酵素即ちα-アミラーゼであつて,少量の糖化酵素を同伴すると考えられる。
  • 樫原 幸春, 日高 醇
    1957 年 22 巻 3 号 p. 139-142
    発行日: 1957年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    タバコモザイク病の罹病時期とタバコの収量および品質との関係を1949年,1950年および1952年の3ヵ年にわたつて研究した。移植当日,移植後15日目,30日目,45日目接種の各区は無接種区にくらべて,量目においてそれぞれ42%, 38%, 32%,および10 %,品質においては61%, 62%, 37%および15%を低下した。これを単位面積の被害額で表わせば,それぞれ77%, 76%, 57%および22%を減少している。当日区と15日目区との間には差はないが,早く罹病するほど被害が大きい。量目よりも品質の低下が著しい。罹病時期によつて大体の被害額を推定することができるであろう。
  • 第10報 植物生長ホルモンの検出
    渡邊 龍雄
    1957 年 22 巻 3 号 p. 143-147
    発行日: 1957年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    1. 本論文は,稲熱病(Piricularia oryzae Cavara)ドライワクチンB中に植物生長ホルモンの存在を確めるために行つた実験結果を記載した。2. ドライワクチンBの各種濃度及び標準区として蒸溜水,2・4-D, MCPを用い,ドライワクチンBの0.5%の濃度に,植物生長ホルモンの存在をWentによる豌豆試験法により,確め得た。3. ドライワクチンBのクロロフォルム及びエーテル抽出液に,植物生長ホルモン(第1.2図)の存在をWentによる豌豆試験法により確め得た。3. 大根及び陸稲の砂耕栽培法(ドライワクチンBを添加)により,大根及び陸稲の根と茎の生長比(第1表),大根の肥大(第3図)及びくびれ現象から,ドライワクチンB中に植物生長ホルモンの存在を明らかにした。5. 植物生長ホルモンの種類の検出にペーパークロマトグラフを用い,βインドール醋酸類似のものであることが分つた(第2.3表)。6. かかる植物生長ホルモンが稲熱病菌の培養中の代謝産物として生産され,これがドライワクチンの種子処理により種子中に吸収され,稲種子の胚組織の細胞を刺戟し,それによつて種子の発芽及び発芽後の生育をよくし,発病率を低下し,収量を増したものと考えられる。
  • Masaki YAMAMOTO
    1957 年 22 巻 3 号 p. 148-152
    発行日: 1957年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    馬鈴薯疫病菌の感受体侵入に就いての位相差顕微鏡及び偏光顕微鏡による観察 山本昌木Phytophthora infestansの遊走子を疫病に抵抗及び罹病性の馬鈴薯葉中肋部に接種し,一定時間毎に表皮をうすくはぎ取り位相差顕微鏡で観察したが,抵抗性品種では侵入部附近にミトコンドリヤと考えられる顆粒が集合し原形質糸の出現が認められた。同様の材料を偏光顕微鏡下で観察した所,強抵抗性品種では侵入部を中心として強い複屈折が認められた。この複屈折は細胞膜のそれとは質的に異り褐変を示さない組織にも拡り,消光角は45°である。又アルコール処理で強くなり濃グリセリンで脱水すると細胞膜自身の複屈折の為に打消される。予め2, 4ヂニトロフェノールで組織を処理してから遊走子を接種するとこの複屈折の出現は遅れるか又はその程度が弱められる。以上の事から疫病菌侵入により強抵抗性品種の細胞内でミセル構造の変動が起り且つ之は組織の代謝活性と関聯性があるように考えられる。
  • Exobasidium, Taphrina及びUstilago属菌の培養基上における生長素の産生
    平田 正一
    1957 年 22 巻 3 号 p. 153-158
    発行日: 1957年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    (1) Exobasidium 16系,Taphrina 5系及びUstilago 8系の培養菌株を供試し,培養基上における生長素産生をアベナテストによつて測定した。(2) 26供試菌は蔗糖加用馬鈴薯培養基上で生長素産生を認め,概して液体培養基上では固体培養基よりも産生量が高く,又15日培養は30日培養よりも高く示された。(3) N源としてL-tryptophaneを含むCzapek液培養では,各菌ともKNO3を含む同培養液及び馬鈴薯培養液の場合より著しく生長素産生が高かつた。しかしKNO3-Czapek液では15日間培養し,ある程度産生する事実を認めた。(4) Tryptophaneを含むCzapek液培養の濃縮濾液のインドール酢酸呈色反応は,概括的に各菌の肥大病徴の形成程度に応じて示され,天狗巣病徴を与える菌は示さなかつた。
  • 脇本 哲
    1957 年 22 巻 3 号 p. 159-163
    発行日: 1957年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    稲白葉枯病菌ファージ(OP1フアージ)を使用して多数の試料中の稲白葉枯病菌を量的に比較する方法を考案した。細菌をそれぞれ異つた量含む多数の試料に約103~105/mlになるようにファージを添加し,Ca Vf Ch培地或は馬鈴薯半合成培地中でファージ増殖の適温に於て80 rpmで振盪培養し,3時間後6000 rpm,5分間遠心沈澱し,上澄を取り溶菌斑を計数してファージ濃度を検すれば,その多少により最初試料中に含まれていた菌数が比較可能である。そのファージ増加の割合は,最初添加するファージの量の差異,細菌数その他不明の原因により菌数と常に一定の勾配をもつた直線的比例関係を示すとは限らないが,菌数の多少は容易に比較可能である。この方法は植物体内外の生細菌数をもつて植物の抵抗性の強弱,薬剤の効果などを云々する場合,特に簡単で有利に応用できるものと信ずる。
  • 岩田 吉人
    1957 年 22 巻 3 号 p. 164-165
    発行日: 1957年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    The author collected two kinds of fungi attacking leaves of Aspidistra elatior at Tokyo in 1938. The one was referable to Phyllosticta Aspidistrae Oud., and the other, which produced minute brown spots 1-3mm in diameter, was considered as an undescribed species and the name Macrophoma Aspidistrae n. sp. was assigned to it. The diagnosis is as follows. Macrophoma Aspidistrae Iwata, n. sp. Maculis minutis, rotundatis vel angularibus niternervies, avellaneis centro, fuscis margine, 1-3mm diam. Pycnidiis hypophyllis vel epiphyllis, 1-compluribus in 1 macula, globosis, 60-120μ diam. hypodermicis, cum hiato, quo 15 -30μ magno. Pycnosporiso vatis vel ellipticis, hyalinis, continuis, oleosis, 11-20×6.5-12.5u. Hab. in foliis vivis Aspidistrae elatioris, Tokyo, Japonia (Nov. 21, 1938, Y. Iwata). The type specimen is deposited in the herbarium of National Institute of Agricultural Sciences, Tokyo, Japan.
  • 沢村 健三
    1957 年 22 巻 3 号 p. 166-167
    発行日: 1957年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    Since 1953, a powdery mildew has been observed on the leaves of cabbage plants (Brassica oleracea var. capitata) and mustard (B. juncea) in the greenhouse and gardens at Fujisaki-cho, Aomori, and on rape (B. napus) in the greenhouse at Sapporo, Hokkaido. By inoculation experiments the conidia from cabbage proved to infect these two species of plants (cabbage, rape), but not cauliflower, Japanese radish, tobacco and peas. The mildew found on Japanese radish, rape and Cardamine flexuosa in Japan is reported by Homma (1933) as Erysiphe cichoracearum DC. The present fungus, though its perithecial stage is not yet observed, seems to be identified as E. polygoni DC. Measurements of size and shape of conidia produced on cabbage and the solitary formation of them on conidiophores agree well with Davis' descriptions concerning E. polygoni on Chinese cabbage in U.S.A (1928). The shape of germ tubes of conidia also belongs to the polygoni type (Hirata, 1942, '55).
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