日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
82 巻 , 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
原著
  • 森田 剛成, 軸丸 祥大, 黒田 慶子
    2016 年 82 巻 4 号 p. 301-309
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/16
    ジャーナル フリー

    株枯病は我が国のイチジク栽培地域で蔓延している.本病の感染から発病・枯死までの仕組みを正確に理解するため,株枯病菌接種苗木の通水機能の変化と外部病徴(外観健全(NS),萎凋開始(LW)および枯死(D)に3区分)の関係に着目し,肉眼および実体顕微鏡観察を行った.NSでは本菌の子のう殻が形成される範囲は接種部および上下5 cm程度と狭く,LWでは接種部の上下方向に最大10 cmまで拡大した.Dでは子のう殻形成が認められる範囲がLWよりもやや狭くなる傾向があった.NSの木部の褐変は接種部を中心に広がり,接種部から下方5 cmの範囲で認められた.NSの木部褐変面積割合(主幹部の横断面積に対する褐変部の割合)の最大値は1.3~16.4%であった.NSと比べてLWで褐変は著しく拡大し,接種部から上方向に15 cm,下方向に10 cmの範囲で確認され,木部褐変面積割合の最大値は16.5~52.4%であった.Dの木部褐変はLWとほぼ同等の傾向であった.NSの通水面積割合(主幹部の横断面積に対する根部から吸収させた酸性フクシンによる染色面積)は,有傷無接種苗木と類似したパターンを示し,酸性フクシンが葉の維管束まで到達することにより,全ての葉が赤く染色された.LWではNSに比べて全般的に通水面積割合の値が小さくなった.通水面積割合が最小となる部位とその値は,萎凋開始直後の苗木では接種部で4.6%以下,萎凋開始から日数が経過した苗木では接種部より上部で2.4%以下であった.なお,Dでは主幹部の通水がほとんど確認されなかった.また,LWやDでは,葉は赤く染色されなかった.以上の結果から,本病原菌接種によりイチジクが枯死する仕組みの概要は以下のように推測される.①接種部位を中心に病原菌が分布する範囲が拡大し,木部の褐変が広がる.②木部の褐変が広がると,木部の通導組織では通水停止した部分が増加する.③接種部位付近の横断面で通水面積割合が低下すると葉に届く水分量の著しい減少により萎凋症状が表れる.④通水停止の状態が継続することにより,感染木は枯死に至る.

  • 隅田 皐月, 梶井 千永, 森田 剛成, 黒田 慶子
    2016 年 82 巻 4 号 p. 310-317
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/16
    ジャーナル フリー

    イチジク株枯病は,我が国のイチジク栽培地域で蔓延している病害であり,枯死を引き起こす.本研究では,株枯病菌接種苗木の光学顕微鏡観察により,宿主細胞内での本菌の分布,本菌が宿主細胞に及ぼす影響について検討し,通水機能停止の過程について考察した.接種7日後個体では,接種部において菌糸が接種穴と隣接する道管およびその周囲の軸方向柔細胞,放射柔細胞,木部繊維内に観察された.二次代謝の活性化に起因する着色物質は,菌糸の周囲の軸方向柔細胞,放射柔細胞内および道管と木部繊維の細胞壁にみられた.接種部より5 cm離れた部位では,菌糸が道管および周囲の柔細胞に局所的に観察された.着色物質の蓄積も,接種部と比較するとごくわずかであった.萎凋開始個体の接種部では,肉眼観察で確認された木部の変色部において,菌糸が道管,木部繊維,軸方向および放射柔細胞,髄の細胞内に観察された.また,菌糸が認められた細胞およびその周囲の細胞内に,黄色~褐色の着色物質が観察された.形成層細胞内には,核が存在しているものが多く観察され,細胞の生存が認められた.従って,形成層の壊死を経て葉の萎凋が起こったとは考えられない.森田らの通水機能の解析と,本研究による内部病徴の細胞レベルの観察結果から,本菌接種によるイチジク枯死の仕組みは,以下のように推測される.①接種穴から,本菌の菌糸が主に道管を介して伸長する.②道管周囲の柔細胞類は防御反応を起こし,黄~茶褐色の物質を生産して分泌する.③本菌の分布拡大により変色部が拡大し,接種部付近の横断面で通水停止部分が増加する.④葉に届く水分量が著しく減少し,萎凋症状が発現して枯死に至る.

短報
  • 吉田 政博, 山口 武夫, 田中 孝幸
    2016 年 82 巻 4 号 p. 318-322
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/16
    ジャーナル フリー

    A new disease of bird’s-nest fern (Asplenium nidus, cv. Emerald) with dark-green, water-soaked lesions on the leaves has been found in Fukuoka Prefecture, Japan since approximately 1996. The lesions gradually extended from the lower part of the leaves near the soil to the tip of the leaves under high humidity. Affected leaves and petioles softened, turned dark-brown and dry. When severely infected, plants had rotted petioles and withered. A causal fungus was isolated from the infected tissues, and these isolates caused the same symptoms on cvs. Abis and Emerald of bird’s-nest fern in inoculation tests. The pathogen was identified as Rhizoctonia solani based on the morphological and cultural characteristics, and the hyphal anastomosis group and the cultural type were determined as AG-1 IB, confirmed with PCR analysis using specific DNA primer sets for the anastomosis groups. The name leaf blight was proposed for this disease on bird’s-nest fern.

feedback
Top