Verticillium dahliaeは多犯性の土壌伝染性植物病原菌であるが,その宿主範囲は菌株ごとに異なっており,いくつかの病原性系統に分けられている.本菌の各菌株のゲノムをRAPDにより解析したところ,トマト・ピーマン系はトマト系とピーマン系の遺伝的雑種である可能性が示唆された.本菌は不完全菌類であり有性生殖による交雑は行わないが,菌株間において擬有性生殖による組換えが生じることが知られている.そこで,本菌のトマト系とピーマン系の間で組換えが生じるかどうかを調査するため,それぞれ異なる遺伝子に変異を持つトマト系とピーマン系の
nit変異株を混合培養し,得られた分生胞子を最少培地で培養した.その結果,22菌株の原栄養株が得られ,そのうちの1菌株はトマトとピーマンに病原性を併せ持っていた.また,RAPD解析により,本菌株はトマト系とピーマン系の遺伝的雑種であることが示された.以上の結果より,
V. dahliaeにおいては病原性系統間で遺伝的組換えが生じ,新たな宿主範囲を持つ菌株が発生し得ることが示唆された.
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