トマト葉から分離されたキチナーゼ活性細菌・
Serratia marcescens B2株は,コロイダル・キチンを含むLB平板培地で高いキチナーゼ活性を示し, 5種7系統の
Botrytis属菌(
B. cinerea IPCR-1, CAES-4, IHES-3,
B. allii IFO No. 9430,
B. byssoideaIFO No. 9431,
B. fabae IFO No. 5895,
B. tulipae IFO No. 5896)の生育を著しく阻害した。
S. marcescens B2株の培養ろ液にはキチナーゼ活性が検出され,このろ液で処理した
B. cinerea IPCR-1, CAES-4, IHES-3および
B. fabaeの胞子は, 100%発芽せず,膨潤した形状の異常な胞子が高頻度で観察された。また,菌糸に処理した場合には,短時間で菌糸の先端部が肥大し,処理24時間後には菌糸全体が膨潤するとともに,一部で細胞膜の突出が観察された。一方,熱処理した培養ろ液では,キチナーゼ活性が著しく低下し,供試菌に対する阻害効果はみられなかった。また,本細菌を
B. fabaeの胞子懸濁液と混合し,ソラマメ葉片に接種したところ, 60%以上の発病阻止効果が認められた。以上から,
S. marcescens B2株の
Botrytis属菌に対する生育阻害作用は,主として,本細菌の産生するキチナーゼによることが明らかになるとともに,本細菌を
Botrytis属菌のバイオコントロールに利用し得る可能性が示唆された。
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