新殺菌剤,チオファネートーメチル(Th-M)のイネいもち病菌(
Pyricularia oryzae),キュウリ炭疽病菌(
Colletotrichum lagenarium)およびキュウリうどんこ病菌(
Sphaerotheca fuliginea)の感染過程におよぼす作用を光学顕微鏡観察により追究した。
Th-M (500ppm)処理葉上での
P. oryzaeや
C. lagenariumの胞子発芽および附着器形成は阻止されないが,同葉内への侵入糸の形成あるいはその生育が完全に抑えられた。またTh-Mは50ppmでも
S. fuligineaのキュウリ葉上での菌糸の伸長を強く抑え,吸器の形成を阻止するようであった。一方,500ppmのTh-Mをイネ葉鞘上で
P. oryzaeの胞子と接触させた場合,Th-Mは胞子自身の細胞を膨張させたりあるいは破かいし,また発芽管の先端を彎曲した。他方,処理イネ葉鞘細胞は正常な原形質分離能を有し,また処理キユウリ葉の表皮細胞の細胞壁には形態的な異常は見られなかった。
Th-Mの主な代謝産物であるMBCは侵入糸の生育を阻止したが,感染過程におよぼすTh-MとMBCの作用の差異は認められなかった。これらの殺菌剤の特徴は寄主葉上の胞子発芽や附着器形成に対するよりもむしろ,病原菌の侵入過程に主に作用する点にあることが結論された。
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