日本植物病理学会報
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65 巻, 4 号
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  • Alfredo S. URASHIMA, 橋本 容子, Le D. DON, 草場 基章, 土佐 幸雄, 中屋敷 均, 眞山 滋志
    1999 年 65 巻 4 号 p. 429-436
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    コムギいもち病菌個体群の分子解析のためのプローブとして,シコクビエいもち病菌のゲノムから散在反復配列のファミリーをクローニングした。この因子はコムギいもち病菌にゲノムあたり30から40コピー存在した。シークエンスの結果,本因子はポリAタイプレトロトランスポゾンMGR583の逆転写酵素ドメインと高い相同性を有することが判明した。本因子をプローブとしてコムギいもち病菌個体群のフィンガープリント解析を行ったところ,本菌群はそれ自身で独立かつ単一のリネージを形成していることが明らかとなり,単一起源であることが示唆された。
  • 落合 弘和, 加来 久敏
    1999 年 65 巻 4 号 p. 437-446
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Xanthomonas属細菌各pathovarとStenotrophomonas maltophiliaの系統関係を明らかにするために,PCRで増幅した3種類のDNA断片,16S rDNA, 23S rDNAとrDNAスペーサー(ITS)についてそれぞれ10種類の制限酵素によるPCR-RFLP解析を行った。その結果,供試したXanthomonas属細菌は,それぞれ16S rDNAの多型解析では7つのタイプ,23S rDNAの多型解析では8タイプが検出された。これら2つの結果を総合すると,Xanthomonas属細菌は13種類のrDNA型に分類された。このrDNA型に基づいたクラスター解析の結果,供試したXanthomonas属細菌はsubgroup 1, 2と命名した2つのグループに類別され,さらにそのクラスターは近縁属であるStenotrophomonasとは区別された。一方,ITSに基づく多型解析では,20のタイプが見いだされ,rDNAと同様に2つグループに類別された。また,おのおののグループに属する菌株群は,rDNAの解析に基づくものと一致した。以上の結果から,Xanthomonas属細菌は,系統的には少なくとも2つのグループで構成されていることが示唆された。
  • 三浦 由雄, 吉岡 博文, 朴 海準, 川北 一人, 道家 紀志
    1999 年 65 巻 4 号 p. 447-453
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    クロロテトラサイクリン(CTC)は生体膜等の疎水環境下にあるカルシウムイオンと結合して蛍光を発することが知られている。CTCで負荷したジャガイモ塊茎組織を疫病菌菌体エリシターで処理すると,処理濃度に依存して膜からカルシウムイオンの遊離を示唆する急激な蛍光の減衰が観察された。また,この蛍光減衰は,カルシウムチャンネルブロッカーであるベラパミルおよび細胞外カルシウムキレート剤であるEGTAの前処理で抑制された。ルミノールを用いて菌体エリシター誘導による活性酸素生成を経時的に測定したところ,蛍光の減衰は活性酸素生成に先行することが明らかになった。さらに,原形質膜画分に負荷したCTCの蛍光強度は,菌体エリシター処理により速やかに減衰した。防御遺伝子であるフェニルアラニン・アンモニアリアーゼ(PAL)の発現に対するカルシウム阻害剤の影響を調べたところ,菌体エリシター誘導によるPAL mRNAの蓄積は,ベラパミルおよびEGTA処理により著しく抑制された。以上の結果は,菌体エリシター処理により速やかに遊離した宿主細胞の膜結合型カルシウムが活性酸素生成や防御遺伝子の発現において重要な役割を果たすことを示唆する。
  • Friedemann GREULICH, 堀尾 枝美子, 島貫 忠幸, 吉原 照彦
    1999 年 65 巻 4 号 p. 454-459
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    斑点病菌(Cladosporium phlei)とがまの穂病菌(Epichloë typhina)は共に,牧草チモシー(Phleum pratense)の病原菌である。E. typhinaに感染した植物体はC. phleiに対して抵抗を持つことはすでに報告されている。しかし,E. typhinaは感染植物体の識別ができるほどの病徴を発現しないまま長期間植物体内でエンドファイトとして伸長できるため,圃場における植物体の正確な抵抗性の評価は難しい。今回,新しい簡便なエンドファイト検出法の開発によって圃場におけるエンドファイト感染体と非感染体の効果的な識別が可能となった。従来の顕微鏡を用いた検出法は,ローズベンガルでエンドファイトだけでなく植物細胞組織も染色されるため,観察には非常に時間を要した。この問題を解決するために,植物体における観察部位の改善を行い,葉鞘部ではなく茎内部の柔組織を用いた。この部位は植物体全体の中でも特にエンドファイトが成長しやすいことと,ローズベンガルで染色する際に植物組織が染色されないという利点がある。エンドファイトのみを染色できて識別しやすくなった分,従来の方法に比べて低い倍率で判断が可能になった。上記の識別法を用いて圃場で調査を行った結果,C. phleiの発病はE. typhinaに感染していない植物では92.3%であったのに対し,E. typhinaに感染しているものでは8.9%と著しく減少した。また,C. phleiの接種試験により,E. typhina感染植物体は非感染体より抵抗性を示した。以上のことから,E. typhinaの感染によってチモシーがC. phleiに対して抵抗性を付与されていることが実証された。
  • 岡本 博, 佐藤 守, 伊阪 実人
    1999 年 65 巻 4 号 p. 460-464
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1988年頃から,福井県で栽培されているエノキタケおよびヒラタケに軟腐症状で悪臭のある未知の病害が発生した。病斑から分離された細菌のうち,人工接種によってそれらのキノコと同様の病徴を示した代表菌株を選び,形態,生理的性質を調べた。その結果,本細菌は運動性のグラム陰性,桿状,周毛菌で,乳白色の集落を形成し,発酵的に糖を分解し,ジャガイモ切片を腐敗させた。その他,多数の細菌学的性質を調査し,既知のErwinia属細菌と比較検討した結果,本細菌はErwinia carotovora subsp. carotovoraと同定された。本種によるエノキタケおよびヒラタケの病害の報告はないので,病名を軟腐病(英名:Bacterial soft rot)と提案したい。
  • 植原 珠樹, 田中 穣, 塩見 敏樹, 難波 成任, 土崎 常男, 松田 泉
    1999 年 65 巻 4 号 p. 465-469
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    レタス萎黄病ファイトプラズマから選抜した,萎縮症状を示さないファイトプラズマ(LY2)と萎縮症状を示すファイトプラズマ(LY1)の宿主範囲とそれぞれの株に感染したシュンギクでの組織変化を比較した。LY1に感染したシュンギク組織では篩部細胞の顕著な増生が観察されたが,LY2に感染したシュンギク組織の篩部では増生はみられなかった。電顕観察の結果,増生した篩部において,内部にファイトプラズマの認められる篩管が観察され,その篩管の数はLY1に感染したシュンギクにおいて著しく多かった。両株の宿主範囲には差異は認められなかった。以上の結果から,LY1とLY2は,病徴発現に関する性質が異なるものと考えられた。
  • 中澤(那須) 佳子, 北之園 忍, 鈴木 一実, 曵地 康史, 奥野 哲郎
    1999 年 65 巻 4 号 p. 470-474
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    luxCDABEオペロンを導入した生物発光Ralstonia solanacearum YN5を用いて青枯病抵抗性トマト品種の簡易選抜法を検討した。播種3週間後のトマト25品種の幼苗にYN5を根部浸漬接種後25°で水耕栽培し,病徴発現とともにVIMカメラを用いて生物発光を観察した。接種7日後の幼苗の上位部における生物発光の度合と接種18日後の発病株率に正の相関関係が認められた(r2=0.985)。次に,トマト18品種を青枯病菌汚染圃場で栽培し発病度を調査したところ,水耕栽培試験で上位部に強い生物発光が観察された品種は,開花期以降,激しく萎凋症状を示し高い発病度を示した。圃場における発病度と水耕栽培における生物発光度には正の相関関係が認められた(r2=0.628)。以上の結果から,トマト品種の圃場における青枯病罹病性の検定が,幼苗の水耕栽培におけるYN5由来の生物発光を指標として可能であることが明らかとなった。本法を用いると,従来の選抜法に比べて短時間で簡易に多数の青枯病抵抗性品種を選抜できる。本法は青枯病抵抗性品種の初期選抜に有効であることが示唆された。
  • Le Dinh DON, 土佐 幸雄, 中屋敷 均, 眞山 滋志
    1999 年 65 巻 4 号 p. 475-479
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ベトナムの主要な2つの稲作地帯,Red River Delta(北部)およびMekong River Delta(南部)から採集したイネいもち病菌計78菌系を用いて,両地域における本病菌の個体群構造を比較検討した。レトロトランスポゾンMAGGYをプローブとしたDNAフィンガープリンティングの結果,北部の菌株は4つのリネージ(VL1-VL4)に分かれたが,南部の菌株はこれらとは異なる単一リネージ(VL5)に分類された。このことから,北部の個体群の方が遺伝的多様性に富むことが示唆された。さらに,判別品種を用いた病原性検定の結果,両集団におけるレース構成は大きく異なり,共通のレースは見いだされなかった。以上のことから,遺伝的にも病原性においても両個体群の構造は大きく異なることが示唆された。
  • 木村 俊夫
    1999 年 65 巻 4 号 p. 481-486
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    土壌中のハクサイ軟腐病菌の増殖あるいは軟腐病の発病に対する非宿主作物の影響を,ハクサイ連作畑に砂土を客土した圃場で,ハクサイをコムギの間作およびエンバクと混作して3年間調査した。
    ハクサイ根の周辺土壌中で軟腐病菌は1年目の春播のハクサイから検出され,夏播のハクサイでは非宿主作物の有無にかかわらずハクサイ連作畑の場合と同程度に増殖した。3年目の結果もこれとほぼ同様の傾向を示したが,2年目はハクサイの収穫期以前に軟腐病菌は検出されなかった。一方,軟腐病は非宿主作物の有無にかかわらず,1年目の春播および夏播ともに連作畑の場合と同様に発病した。しかし,非宿主作物との間・混作およびハクサイ連作のいずれにおいても,作付回数の増加が軟腐病の発生を激しくすることはなく,むしろ初発生が遅くなったり,発病の程度が低いまま終息する傾向を示した。以上のように,ハクサイを非宿主作物の根系と交叉できるようにして3年間栽培したが,軟腐病菌の増殖および軟腐病の発病に対する影響は見られなかった。
  • 田中 孝, 加藤 智弘
    1999 年 65 巻 4 号 p. 487-489
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    We investigated the distribution of Kouyawarabi plants (Onoclea sensibilis L.) infested with Pseudomonas plantarii in Yamagata prefecture and confirmed survival activity of the overwintered bacterium in the plants. Of 239 samples collected from 19 locations in the prefecture, 77 leaf samples were infested with the bacterium. The leaf samples collected from Mogami-machi were highly infested with P. plantarii. High infestation rate of bacterial seedling blight of rice was also observed in Mogami-machi area. The plants were artificially inoculated with the organism and exposed outdoors in summer. In the following spring, the bacteria were re-isolated from the leaves, stems and rhizomes of the plants. The pathogenic bacteria were successfully re-isolated from the overwintered whole plants at the level of 1.2×104-3.4×106cfu/g. Because the organism appears to survive in Kouyawarabi plants under natural conditions in Yamagata prefecture, the plants are considered to be an important infection source of the disease.
  • 黒田 智久, 勝部 和則, 鈴木 一実
    1999 年 65 巻 4 号 p. 490-493
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    In November 1997, prairie gentian plants with necrotic yellow symptom were found in Iwate Prefecture, Japan. A spherical virus with a diameter of ca. 80nm was isolated. The virus infected 22 plant species of 11 families after mechanical inoculation. By serological tests, the virus was closely related to tomato spotted wilt virus (TSWV). In RT-PCR with TSWV specific primers, a fragment of about 550bp was amplified. The fragment had a high degree of sequence homology to TSWV-RNA. Based on these results, the virus isolated from prairie gentian was identified as TSWV. This is the first report of TSWV on prairie gentian in Japan.
  • 亀谷 満朗, 山口 和彦, 原 知子, 伊藤 真一, 藤 晋一, 鍛冶原 寛, 田中 秀平
    1999 年 65 巻 4 号 p. 494-497
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Detection of Japanese yam mosaic potyvirus (JYMV) in Chinese yam (Dioscorea opposita Thunb. cv. ichoimo) by the immunocapture polymerase chain reaction (IC-PCR) and differentiation of virulent and attenuated isolates using restriction fragment length polymorphism (RFLP) of IC-PCR products using Tsp 509 I were investigated. JYMV was detected by IC-PCR from diseased leaves, bulbils, tubers or diseased leaves frozen at -40°C for 6 months with a sensitivity of 108, 105, 106 and 107-fold dilutions, respectively. The sensitivity of IC-PCR for the detection of JYMV from diseased leaves was about 8000-fold over ELISA and 10, 000-fold over RT-PCR. PCR-RFLP revealed different banding patterns for the virulent and attenuated isolates of JYMV. This will be useful for distinguishing virulent and attenuated isolates from Chinese yam (cv. ichoimo).
  • 角野 晶大, 阿部 秀夫
    1999 年 65 巻 4 号 p. 498-500
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    A vascular wilt disease of sunflower (Helianthus annuus L.) caused by Verticillium sp. was found in Hokkaido Prefecture, Japan, in 1996 and 1997. The diseased plants showed symptoms of wilting, leaf chlorosis, defoliation, stunting and vascular discoloration of the stem. Based on size of conidia, morphological characteristics of microsclerotia and extracellular polyphenol oxidase activity, the Verticillium wilt pathogen of sunflower belongs to Verticillium dahliae Klebahn.
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