日本植物病理学会報
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58 巻, 5 号
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  • 病徴ならびに病原菌の増殖
    Henry NELSON, 大内 成志, 白石 友紀, 奥 八郎
    1992 年 58 巻 5 号 p. 659-663
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    あらかじめ非病原性分化型のフザリウム病菌を単独または病原性分化型菌と混合接種したトマトとキュウリでは,多くの場合維管束褐変が起こらなかった。しかし,これら無病徴植物の茎の磨砕液からは病原菌が高頻度に分離された。ただし,いずれの場合にも,誘導菌として用いた非病原性分化型菌は分離されなかった。第一節間茎部組織の病原型菌数(cfu/g f.w.)について比較したところ,抵抗性が誘導され褐変の認められなかった植物の病原型菌数は褐変を伴った植物のそれより少なかった。この結果から,これらの系における誘導抵抗性は病原菌侵入後の増殖抑制によるものと考えた。
  • Leandro M. SANCHEZ, 大野 義徳, 三浦 由雄, 川北 一人, 道家 紀志
    1992 年 58 巻 5 号 p. 664-670
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Phytophthora capsici, P. infestansおよびP. nicotianae var. nicotianaeからの菌体壁成分エリシター(HWC)の過敏感誘導性と水溶性グルカン(WSG)の過敏感反応抑制作用について,それぞれの宿主および非宿主植物の組み合わせとなるトマト,ピーマンおよびタバコの懸濁培養細胞を用いて調べた。用いたPhytophthora属菌のHWCは宿主,非宿主植物を問わずいずれの植物細胞にも処理濃度および処理時間に依存して細胞死を起こした。一方,それぞれの菌から分離したWSGをそれぞれの植物細胞に投与し,HWC処理による細胞死におよぼす効果を調べた結果,3菌のWSGは共通の宿主であるトマトの細胞死を著しく抑制したが,P. capsiciP. nicotianae var. nicotianaeのWSGはそれぞれの宿主植物であるピーマンとタバコのみの細胞死を著しく抑制した。これらの結果から,供試したナス科植物の病原菌であるPhytophthora属菌は宿主非選択的にエリシター活性を示すHWCと宿主選択的なサプレッサーを生産し,後者が親和性関係を成立させる上で重要な機能を果たしていることが示唆された。
  • 小倉 寛典, 馬 俊栄
    1992 年 58 巻 5 号 p. 671-676
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    キュウリつる割病菌の連作土壌中での消長を観察した。
    (1)キュウリ,ダイズ,ソルガムを6年間連作すると前2者では高い菌密度が維持され,とくに安定した残存を示した。後者では1作ごとに菌数は減少した。(2)転作は作物の種類に関係なく本菌の菌数を減少させたが本菌は1, 2年で再び安定した。(3)土壌中の本菌はキュウリ根へ随時着生したが,ダイズ根への着生は経時的に減少した。ソルガムの根圏は本菌には不利な環境であった。(4)キュウリ根面に着生する菌株はキュウリに対し強い病原性を示すものが多いが,他の作物根や土壌中では病原力の低い菌株が優勢であった。(5)各菌株群の厚膜胞子形成能は各作物の栽培土壌によって異なり,キュウリ圃場では強病原菌株が,他の2作物圃場では弱病原菌株が胞子形成量の多い菌株群であり,この性質が,各作物への根面での腐生あるいは寄生生存とともに連作圃場での優劣に関与すると考えられる。
  • 畑谷 達児, 日影 勝幸, 須田 成志, 永田 龍哉, 李 世訪, 糸賀 裕, 谷越 時夫, 四方 英四郎
    1992 年 58 巻 5 号 p. 677-684
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ウイルスフリーホップより,低分子RNAを抽出し,二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)で,ウイロイド様RNAを検出した。このRNAは,8M尿素変性条件下でのPAGEにおいて,ホップ矮化ウイロイド(HSVd)よりかなり速く泳動した。この低分子RNAに対し,既報のホップ潜在ウイロイド(HLVd)の塩基配列より設計した特異的プライマーを用い,逆転写-polymerase chain reaction (RT-PCR)を行ったところ,HLVdの塩基配列から予想される長さのcDNAが増幅された。このRT-PCR産物より完全長HLVd・cDNAをクローニングし,その塩基配列を決定したところ,既報のHLVdと同一であった。また,ホップより全核酸を簡易抽出し,ドット・ブロット・ハイブリダイゼーションおよびRT-PCRによる遺伝子診断を行った。その結果,ある検体においては,ドット・ブロット・ハイブリダイゼーションでは,HLVdが検出されなかったものの,RT-PCR法で検出され,RT-PCR法は,HLVdの検出に有効で,ドット・ブロット・ハイブリダイゼーションより高感度である可能性が示された。また,検定した栽培ホップ全品種の元株からHLVdが検出されたが,それらの元株から茎頂培養によりウイルスフリー化された株のうち,2検体では,RT-PCR法でも,HLVdが検出されず,茎頂培養により,HLVdのフリー化が可能であることが示唆された。
  • 繁本 令子, 奥野 哲郎, 松浦 一穂
    1992 年 58 巻 5 号 p. 685-690
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トレハロースはRhizoctonia solaniの菌糸の主要な糖で,培地の糖源の種類にかかわらず乾燥菌体の8%以上を占めていた。菌体内のトレハロース含量は,トレハラーゼの阻害剤であるバリダマイシンA (VM-A)の添加により増加した。R. solaniの菌糸の生育は炭素源の種類により多少の違いが認められたが,トレハロースが唯一の糖源である培地のとき,VM-Aは菌糸の生育を顕著に抑制した。これらの結果から,トレハロースはR. solaniの生育に必要なグルコースを供給する貯蔵糖の役割を果たしており,VM-Aによってトレハラーゼ活性が阻害される結果グルコースの供給が遮断され,菌糸の生育が抑制されて,イネ紋枯病防除効果を発現するものと思われる。
  • 高野 仁孝, 井上 悟, 大塩 裕陸, 鴨下 克三, 小林 喜六, 生越 明
    1992 年 58 巻 5 号 p. 691-698
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ジニコナゾール異性体のイネばか苗病菌に対する抗菌活性,およびステロールならびにジベレリンの生合成におよぼす影響を調べた。同剤の(R)-(-)体は,10-5M以上で同菌の生育を強く阻害したが,(S)-(+)体は10-4Mにおいてもほとんど抗菌活性を示さなかった。さらに,薬剤処理時の菌体からステロールを抽出しガスクロマトグラフィーにより分析したところ,(R)-(-)体は10-6M以上でエルゴステロール生合成系における14位の脱メチル化反応を強く阻害することが明らかとなった。しかし,(S)-(+)体では10-4Mにおいてもその作用は弱かった。一方,同菌のジベレリン生合成に対する影響をわい性イネを用いたバイオアッセイで調べたところ,(R)-(-)体は10-5Mで同菌のジベレリン生合成を強く阻害したが,(S)-(+)体の阻害作用は非常に弱かった。14C-メバロン酸をとり込ませて阻害部位を調べた結果,(R)-(-)体はent-カウレンからent-カウレノールに至る酸化反応を阻害していることが明らかとなった。
  • 鈴木 健, 松宮 江里, 上野 吉一, 水谷 純也
    1992 年 58 巻 5 号 p. 699-705
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    腐敗させたアブラナ科植物根こぶ病罹病根から,密度勾配遠心法を用いて非常に高い発芽能を有する休眠胞子試料を調製した。この休眠胞子の発芽率は植物根滲出物存在下で著しく高まり60%以上にも達した。このことから,植物根滲出物中に休眠胞子発芽促進因子(GSF)が明らかに存在することが示された。発芽促進活性は,オートクレーブ処理で失活せず,透析によって容易に除かれ,XAD-4樹脂にある程度吸着されるがジエチルエーテルおよび酢酸エチルによってまったく抽出されない等の性質を有することから,活性本体は熱に安定な比較的高極性の低分子物質であると推定された。発芽促進活性は本病に感受性のアブラナ科植物ばかりでなく,抵抗性のアブラナ科植物,さらには非アラブナ科植物(レタス)の根滲出物中にも見いだされ,抵抗性や宿主特異性に関わる因子ではないことが示唆された。
  • 下山 淳, 亀谷 満朗, 花田 薫, 郡司 孝志
    1992 年 58 巻 5 号 p. 706-712
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    群馬県下のコンニャクから分離した2株のpotyvirusのうち1株はサトイモモザイクウイルス(DasMV)と同定されたが,他の1株は宿主範囲と病徴および血清学的性質において,従来報告されていたサトイモモザイクウイルスと異なっており,コンニャクモザイクウイルス(KMV)と命名した。また,これによる病害をコンニャクモザイク病と称したい。
    KMVはコンニャクに退緑モザイクを生じ,ヒトデカズラにはモザイク症状を生じるがサトイモに感染しなかった。これに対し,DasMVはヒトデカズラに白斑モザイクおよび糸葉などの奇形を生じ,コンニャクにも脈間白化症状を示した。
    KMVおよびDasMVの抗血清を作製して寒天ゲル内拡散法,ELISA法および免疫電顕法により両ウイルスの血清学的関係を検討したところ,両者に類縁関係は認められなかった。
    KMVは長さ約800nmのひも状であり,希釈限界は10-2∼10-3,不活化温度は55∼60°C (10分),保存限界は2∼4日(室温)であった。またワタアブラムシによる伝搬と種球および生子を通じた伝染が認められた。
    ELISA法により野外におけるKMV, DasMVの発生状況を調べたところ,コンニャクのいずれの品種からも高い頻度でKMV, DasMVが検出され,そのほとんどが両者の重複感染であった。またカラスビシャクからはKMVのみが,サトイモからはDasMVのみが検出された。サトイモ科のその他の植物には両ウイルスが単独または重複して検出された。
  • 下山 淳, 花田 薫, 津田 新哉, 亀谷 満朗, 郡司 孝志
    1992 年 58 巻 5 号 p. 713-718
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    コンニャクモザイクウイルス(KMV)とサトイモモザイクウイルス(DasMV)の理化学的性状および血清学的性質について比較した。核酸の分子量はグリオキザール変性下でのアガロースゲル電気泳動法によりKMVが3.21×106であったが,DasMVは3.42×106であった。外被タンパク質の分子量は12.5% SDS-PAGEにより,KMVは35.5Kであったが,DasMVは32.5Kと40.0Kの二つのタンパク質が検出された。リシルエンドペプチダーゼで処理したDasMVのそれぞれのタンパク質のペプチドを逆相高速液体クロマトグラフィーで比較したところ,両者はほぼ同じ組成のものであった。KMVはELISA法でダイズモザイクウイルス(SoyMV)およびカボチャモザイクウイルス-2(WMV-2)とは血清学的類縁関係が認められたが,DasMVを含む他の6種のpotyvirusとは,血清学的関係は認められなかった。同様に寒天ゲル内拡散法およびウエスタンブロッティング法によってもKMVとSoyMVおよびWMV-2の間に血清学的類縁関係が認められた。
  • Noemi P. OROLAZA, 川北 一人, 道家 紀志
    1992 年 58 巻 5 号 p. 719-725
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トマト・アルターナリア茎枯病菌が生成する宿主特異的AL毒素は,感受性トマト葉組織において,エタノールアミンとホスホエタノールアミンの蓄積を誘起することを先に報告した。この関連で,リン脂質代謝系,特にホスファチジルエタノールアミン生合成系におよぼすAL毒素の影響について検討した。感受性および抵抗性品種のトマト葉組織ディスクに[14C]エタノールアミンを添加したところ,[14C]エタノールアミンの葉組織への取込みは両品種とも毒素処理の有無にかかわらず同程度に認められたが,ホスファチジルエタノールアミンへの取込みには毒素処理した感受性葉組織においてのみ阻害された。一方,AL毒素のホスファチジルコリンの生合成への影響を比較した結果,感受性葉組織において[14C]コリンのホスファチジルコリンへの取込みはほとんど阻害されなかった。これらの結果は,AL毒素が感受性トマト葉組織においてのみエタノールアミンからホスファチジルエタノールアミンへの生合成経路を阻害する可能性を示している。
  • 寺岡 徹, 志村 佳伸, 細川 大二郎, 渡辺 實
    1992 年 58 巻 5 号 p. 726-733
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    酵素処理(Cellulase Onozuka R-10 1%, Driselase 1%)により,菌糸体や発芽管から分離したいもち病菌プロトプラストを同酵素を含む0.6Mショ糖含有合成培地あるいはジャガイモ煎汁液体培地で培養すると,球形を保持したまま巨大化することが観察された。培養24時間後には50%以上のプロトプラストが分離直後の大きさの2倍以上に巨大化した。このプロトプラストの巨大化はIBPやカスガマイシンの添加により抑制されたが,ポリオキシンDでは影響を受けなかった。0.6Mショ糖と0.6Mマンニトールの二相分配を用いて,巨大化プロトプラストと非巨大化プロトプラストを大別できた。両プロトプラストともviabilityを維持しており,とくに巨大化プロトプラストはタンパク質,DNA, RNA,脂質合成および細胞壁合成能のいずれにおいても非巨大化プロトプラストより高い代謝活性を保持していた。これらのことから,この培養系はプロトプラストに毒性が少なく,プロトプラストは細胞壁のない状態で生長し,巨大化したものと考えられた。
  • 林 律器, 山本 幹博, 柘植 尚志, 西村 正暘
    1992 年 58 巻 5 号 p. 734-740
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ナシ黒斑病菌(A. alternata Japanese pear pathotype, AK毒素生産菌)とイチゴ黒斑病菌(A. alternata strawberry pathotype, AF毒素生産菌)の二十世紀ナシに対する寄生適応能力を比較した。愛知県の3ヵ所の二十世紀ナシ圃場から1983年および1984年に黒斑病病斑を採集し,それらから分離したAlternaria菌株1219菌株のナシとイチゴ葉に対する病原性および宿主特異的毒素生産性について調査した。その結果,両植物の葉に病原性を示す菌株は見いだされず,イチゴ黒斑病菌の感染による病斑は検出されなかった。さらに,茎頂培養により育成したイチゴ盛岡16号の無菌苗をナシ圃場に定植し,1983年5月から1984年9月にわたり放置したところ,イチゴ葉上に黒斑病類似の病斑が複数形成され,その一つからイチゴ黒斑病菌が分離された。このことは,二十世紀ナシ圃場に非常に低密度ではあるが,イチゴ黒斑病菌が存在することを示唆した。次に,二十世紀ナシに対して強い病原性を示す実験室保存のナシ黒斑病菌菌株とイチゴ黒斑病菌菌株を用いて,それらの二十世紀ナシ葉に対する病斑形成能力(形成病斑数および病斑直径)を実験室,ファイトトロンおよび野外条件下で比較した。その結果,どの実験条件下でも,イチゴ黒斑病菌菌株の病斑形成能力がナシ黒斑病菌菌株に比べて有意に劣ることが明らかとなり,両病原菌の二十世紀ナシに対する寄生適応能力の違いが示唆された。
  • 松本 直幸, 但見 明俊
    1992 年 58 巻 5 号 p. 741-751
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    融雪直後の植物より低温性の糸状菌を採集し,それらの雪腐黒色小粒菌核病菌(Typhula ishikariensis)に対する拮抗性を,オーチャードグラス幼苗を用いて評価した。イネ科植物残渣由来のT. phacorrhizaと考えられる菌株が,本病の拮抗菌として有効で,これらの菌株の拮抗性には変異がみられた。すなわち,本病菌生物型Bに拮抗性を示す菌株は積雪地帯に普遍的に分布していたが,ペレニアルライグラスの主要な雪腐病菌である生物型Aに有効な菌株は,北海道北部天北地方に局在していた。このことは,天北地方では生物防除が自然におこり,多雪にもかかわらず,本地方で雪腐病に弱いペレニアルライグラスが多く作付けされている理由の一つと考えられた。カエデの枯葉やイナワラは拮抗作用を促進し,アルファルファやオーチャードグラスの乾燥粉末は拮抗作用を低下させた。これらの拮抗菌を用いて,生物型Aの自然発生するペレニアルライグラス圃場で生物防除試験を行ったところ,発病のひどい条件下(3冬目,秋期刈取処理をした区)では26.5%の増収をみた。また,根雪前に導入した拮抗菌は,翌春には植物体上に菌核を多数形成しており,本拮抗菌においては導入・定着が容易であることがわかった。
  • 奥 尚, 土崎 常男
    1992 年 58 巻 5 号 p. 752-756
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    コムギうどんこ病の発生している圃場内に,可動式育苗箱に育成された病原性分析品種を静置することによりコムギうどんこ病菌を捕捉し,その病原性を集団レベルで判定する方法について検討した。病原性の分析品種には本菌レースの基準判別品種(抵抗性遺伝子型:Pm1, Pm2, Pm3a, Pm3b, Pm4a, Pm5およびPmSh1(札幌春小麦由来)とIbis (Mli)ならびに感受性品種:Chancellorの幼苗を用いた。病原性分析品種の暴露は本病発生最盛期の圃場では24時間が適しており,その後,各品種上に形成される病斑の数を計測することによって,本菌の集団が保有する病原性の種類と頻度が分析できた。すなわち,本菌集団の病原性を1987∼1988年に北海道,東京都および岡山県で調べた結果,各地で共通に抵抗性を示す品種はなく,いずれかの地域で用いた抵抗性遺伝子に対する病原性の存在が示されたが,それらの分布と頻度には明瞭な調査圃場間差が認められた。抵抗性遺伝子の利用歴と病原性の検出頻度との間には関連性が認められる場合と認められない場合とがあった。また,従来のレース検定ではPm3bに対する病原性レースが検出されなかった地域において,低頻度ながら病原性の存在が検出された。以上の結果から,本法は圃場における本菌集団の病原性の迅速な検出に有効であり,他の空気伝染性病害にも適用できるものと考えた。
  • 村山 晶子, 青崎 量二, 池上 正人
    1992 年 58 巻 5 号 p. 757-760
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Bean golden mosaic virus (BGMV) DNA1およびDNA2の全長クローン用いて,各ORFの欠失変異体を作製した。作製した欠失変異体をインゲン初生葉に接種し,変異体の接種葉での複製および上位葉への移行の有無について調べた結果,次のことが明らかになった。(1)コートタンパク質遺伝子を含むORF1R1/1R2/1L4の欠失変異体は,インゲン接種葉内で複製するとともに,インゲン上葉へ移行するので,ORF1R1, 1R2および1L4はBGMV DNAの複製および移行には係わっていないように思われる。(2) ORF1L1あるいはORF1L2/1L3欠失変異体はともにインゲン接種葉内で複製することができないので,ORF1L1あるいはORF1L2/1L3はBGMV DNAの複製にとって重要な遺伝子である。(3) ORF2R1あるいはORF2L1の両方がBGMVの細胞間移行に係わっているものと思われる。
  • 澤田 宏之, 小柳津 広志, 松本 聰, 家城 洋之
    1992 年 58 巻 5 号 p. 761-765
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    17菌株のAgrobacterium属細菌を供試し,polymerase chain reaction (PCR)とdideoxy法を利用した直接塩基配列決定法によって,16SリボソームRNA (rRNA)の2か所の部分塩基配列の比較を行った。1406∼1392の塩基座(Escherichia coliの16S rRNA の5'末端からの塩基配列番号)に相補的な15塩基をプライマーとした場合,1180∼1379の200塩基の配列を決定することができたが,この領域に関しては6組合せの分類群間で配列の違いが認められなかった。1242∼1227の塩基座に相補的なプライマーで決定した1019∼1200の182塩基に関しては,A. rubiとNCPPB 1650で配列が一致していたが,それ以外の組合せでは1∼21塩基の相違があった。さらに,いずれの分類群内でも,供試した2∼4菌株間に配列の変異は認められないことから,この領域は分類群間の識別に有効であることが示唆された。また,比較に用いた6菌株のRhizobium属細菌との識別も可能であった。
  • 原田 幸雄, 今泉 誠子, 田中 博, 根岸 秀明, 藤森 嶺, 山田 昌雄, 本蔵 良三, 三浦 喜夫
    1992 年 58 巻 5 号 p. 766-768
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1989年,宮城県名取市の休耕田において,茎が橙色の斑点を示すクログワイを発見した。橙色の病斑部から病原菌が分離され,胞子の形態,培地上のコロニーの形状から,Nimbya scirpicola (Fuckel) Simmonsと同定された。本菌は分離宿主のクログワイとタマガヤツリに対してのみ病原性を示し,イネを含むいくつかの主要栽培植物に対しては病原性を示さなかった。なお,クログワイから本菌が病原菌として分離されたのは日本で最初である。
  • 野村 良邦
    1992 年 58 巻 5 号 p. 769-772
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Twenty-two isolates of the bottle gourd Fusarium wilt organism (Fusarium oxysporum f. sp. lagenariae) were collected from 22 regions of 8 prefectures in Japan and examined for their pathogenicity to pumpkins and bottle gourds. Some isolates had pathogenicity to Cucurbita ficifolia of a pumpkin plant, but some didn't. They were classified into 4 groups according to the pathogenicity decided on the basis of disease incidence days of the pumpkin; strong, moderate, weak and no pathogenicity. All of them had pathogenicity to bottle gourds, but had no pathogenicity to C. moschata and C. maxima×C. moschata.
  • 細川 大二郎, 小林 括平, 堀越 守, 古沢 巖
    1992 年 58 巻 5 号 p. 773-779
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    プロテインA-金コロイド法を用いて,ブロムモザイクウイルス(BMV)の外被タンパク質のオオムギ細胞における局在を調べた。外被タンパク質の抗血清では金粒子の標識は各種細胞の細胞質基質全体に認められた。また,細胞質内にはウイルス粒子の集塊,これに付着した電子密度の高い物質,小胞体および胞〓からなる封入体の形成が認られたが,これらに多数の金粒子が標識された。核では,金粒子が標識されるものと,されないものとがあった。前者では,金粒子は核小体に多数標識され,核質では小数標識された。葉緑体,ミトコンドリア,マイクロボディおよび液胞には金粒子の標識は認められなかった。3aタンパク質の抗血清では,金粒子は主として封入体に強く標識された。
  • 池田 成志, 豊田 秀吉, 吉田 健二, 是枝 一春, 茶谷 和行, 大内 成志
    1992 年 58 巻 5 号 p. 780-783
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Sphaerotheca属うどんこ病菌の防除に関する基礎的研究として,本研究ではキチナーゼ処理によって本菌の吸器が分解されるかどうかについて検討を加えた。メロンの第一本葉,イチゴおよびバラの新葉を材料に,それぞれS. fuliginea, S. humuliおよびS. pannosaの分生胞子を接種し,4日後に接種葉を0.1%キチナーゼ液に浸漬した。その結果,宿主細胞には顕著な変化が観察されなかったのに対して,いずれのうどんこ病菌の吸器においても,処理1.5時間後には部分的な分解が観察され,3時間後には約80%の吸器が完全に分解された。以上の結果から,Sphaerotheca属うどんこ病菌の吸器細胞壁はキチンを主要骨格にもつものと考えた。
  • トマト切枝および遺伝子標識病原細菌を用いたインドール誘導体の抗細菌活性検定
    角谷 晃司, 豊田 秀吉, 松田 一彦, 西田 隆次, 道後 充恵, 坂 秀樹, 濱田 昌之, 大内 成志
    1992 年 58 巻 5 号 p. 784-788
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    植物体に処理したインドール誘導体の抗細菌活性を検討するため,トマト切枝葉によるアッセイ系を確立した。青枯病菌の染色体に検出マーカー遺伝子(luxオペロンとtetr遺伝子)を接合伝達法で導入し,病原菌の増殖をテトラサイクリン抵抗性と発光能によって追跡した。次に,遺伝子標識細菌を切枝葉に接種して病原性が保持されていることを確認した後,各種濃度のインドール,3-インドールプロピオン酸および3-インドールアクリル酸を切枝葉に処理して病原菌増殖に対する影響を検討した。その結果,3-インドールプロピオン酸処理によって病原菌の増殖ならびに萎凋出現がもっとも効果的に抑制された。これらの効果から,本法は各種化合物のin vivo抗細菌活性の測定に有効であると考えた。
  • 長谷 修, 柄澤 明, 高橋 英樹, 江原 淑夫
    1992 年 58 巻 5 号 p. 789-793
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    キュウリモザイクウイルスO系統(CMV-O)のRNA2の全塩基配列を決定した。CMV-O RNA 2は,3,049ヌクレオチドからなり,分子量96,777の2aタンパク質をコードしていると考えられる2,571ntのORFを含んでいた。CMV-Oと同じサブグループIに属する他の系統のRNA 2と比較した結果,核酸レベルで98.0∼98.4%,アミノ酸レベルで99.0∼99.5%ときわめて高い相同性が示された。とくにポリメラーゼのコア領域は,ほとんど完全に一致していた。これに対し,サブグループIIや他のククモウイルスとの相同性は核酸レベルで59.0∼71.4%であった。
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