(1) 1999年以降沖縄本島と,東京都八丈島において,パッションフルーツの全身が萎凋枯死し,海外においてPassiflora wiltとして呼ばれる病害と一致する日本では未報告の病害の発生が確認された.
(2) 沖縄菌株および八丈島菌株における子のう胞子と分生子単胞子分離株の接種試験ではいずれも
Passiflora edulisに病徴が再現され,接種菌が再分離された.これにより本病害をパッションフルーツ萎凋病と呼ぶことを提案した.
(3) 病原菌の
Fusarium世代は,
F. striatum Sherb.,
Haematonectria属菌は
H. ipomoeae (Halst.) Samuels & Nirenbergと同定された.なお,DDBJに登録されている
Nectria ipomoeae菌株と沖縄および八丈島産菌株のITS領域1と2はほぼ100%の相同性を示し,同定結果が裏づけられた.
(4) 5種の
Passiflora属植物に対する接種では,表皮を剥いで焼いた部分において良く感染し,特に
P. caeruleaの感受性が高いことがわかった.
(5) 外見無病健全株の挿穂実験からパッションフルーツの外観健全株が潜在的に本病菌を保菌し,それからの採穂木の移動が我が国における発生地域の拡大に一つの重要な役割を果たしている可能性が示された.
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