日本植物病理学会報
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24 巻, 4 号
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  • 桐葉中に含まれる2, 3の Polyphenol 及びその桐炭疽病菌の生育に及ぼす影響
    脇本 哲, 碇 弘毅, 吉井 甫
    1959 年 24 巻 4 号 p. 195-200
    発行日: 1959/11/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    桐葉中の polyphenol の桐炭疽病菌感染に伴う質的量的変化を調査し, 桐葉中の主要な polyphenol である chlorogenic acid と rutin の桐炭疽病菌の生育に与える効果を検討した。
    1. 桐葉中の総 polyphenol 量は桐炭疽病菌の感染によつても著しい変化はないが ortho-dihydroxyphenyl 基を持つ polyphenol 特に chlorogenic acid が増加する。
    2. イモチ菌用合成培地 (糖源 glucose) に chlorogenic acid, rutin あるいは quercetin を10-3M 添加すれば, 桐炭疽病菌の生育を促進する。
    3. 桐葉中には rutin を含むが, 桐炭疽病菌は in vitro でこれを分解し protocatechuic acid と未知の phenol 1種を生産する。
    4. rutin の aglucon である quercetin もよく分解され protocatechuic acid, phloroglucinol および未知の1種の phenol を生産する。
    5. 合成培地に phloroglucinol 10-3M添加は桐炭疽病菌の生育を大いに促進するが protocatechuic acid はこれを抑圧し glucose+rhamnose には左程その促進効果は認められず, したがつて rutin および quercetin の桐炭疽病菌生育促進効果はそれらが分解されて生ずる phloroglucinol に帰すべきであろう。
  • C14でラベルした桐葉中の Polyphenol の桐炭疽病菌による分解
    脇本 哲, 碇 弘毅, 吉井 甫
    1959 年 24 巻 4 号 p. 201-206
    発行日: 1959/11/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    桐葉中に含まれる polyphenol をC14で標識し, C14-polyphenol を抽出してこれを培地中に加え, 桐炭疽病菌を培養してC14の行動を追跡した。培養期間中に培地から放出されるCO2或はC14O2を捕捉するように培養フラスコの副室に15% KOH液を入れて菌接種後一定期間毎に取出して Geiger counter により計数したところ, 培養5日以後は多量のC14O2を放出することが判明した。また polyphenol を paperchromatography により完全に単離して後添加した場合も同様な結果が認められ, これらの polyphenol は桐炭疽病菌の炭素源となり呼吸代謝に入り込むことが証明された。また培養20日菌を滬過洗滌後乾燥して Geiger counter にかけたところやはりC14の活性が認められ, 一部は菌体構成素材として用いられることが明らかになつた。
  • VI. ムギ萎縮病ウイルスの土壌伝播機作 (続報)
    宮本 雄一
    1959 年 24 巻 4 号 p. 207-212
    発行日: 1959/11/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1) 低温下 (0∼2°C) で乾燥し, 無酸素下 (5∼10°C) で貯蔵した, 病葉中のコムギ縞萎縮病ウイルス (WYMV) およびオオムギ縞萎縮病ウイルス (BYMV) はともに, 2年後においてもかなり強い感染力を示した。
    2) 前報より引続き行つた実験の結果, 病土から分離濃縮された粘土部分 (<2μ) 粒子の病原性の強いことが, 播種試験および摩擦接種試験により, 再確認された。これらの粘土部分の粒子中には線虫類を全く認めず, また特記すべき頻度であらわれる糸状菌または細菌類を認めなかつた。さらにこの粘土フラクション中には, 根毛と判別できる植物の組織を認めなかつた。
    3) 罹病植物汁液を粘土鉱物およびその他の土壌に吸着させ, 比較的高温下 (10∼15°C) で貯蔵した結果, WYMVおよびBYMVはともに, 約8カ月後の次のシーズンまでわずかながらその病原性を維持した。
    4) 以上の諸事実とこれまでの実験結果から, ムギ萎縮病ウイルスの土壌伝播機作を説明するためには, 必ずしも特定の微生物的媒介者あるいは罹病植物の残根の存在を必要とせず, 蛋白質を吸着し保護すると考えられる粘土部分の土壌粒子 (無機および有機のコロイドを含む) がこれらのウイルスを吸着して伝播者の役割を果しているものと考える。
  • 第10報 病態稲の2, 3生理学的観察 (その2)
    浅田 泰次, 橘 泰典
    1959 年 24 巻 4 号 p. 213-218
    発行日: 1959/11/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本報告は胡麻葉枯病罹病水稲の2, 3の生理的観察についてのべた。
    1. 接種後2, 4, 6日目の病斑並びにその周辺部を径4, 8, 12mmのパンチで同心円状に打抜き, 各部の蛋白態および可溶態窒素を定量し, 同時に滬紙電気泳動法で蛋白の質的な差をみた。正常稲では4mm区でわずかながら感染初期に蛋白態Nの増加があるが, 秋落稲では逆に蛋白態Nが減少し菌の栄養源となる可溶態Nに分解する。滬紙電気泳動では陰極側にほぼ3ピーク (α, β, γ) があり, 正常稲では感染6日後でも3ピークとも存在するが秋落稲ではβがみられなくなる。
    2. 接種後6日目の病斑を径7mmに打抜きその中のZn量を測定した。正常稲, 秋落稲共罹病部は健全部にくらべてZnが少く, 病斑部から健全部へZnの逸脱があるものと思われる。
  • 桜井 善雄, 松尾 卓見
    1959 年 24 巻 4 号 p. 219-223
    発行日: 1959/11/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    クワ芽枯病を基因する Hypomyces solani (Rke. et Berth.) Snyd. et Hans.[Fusarium solani (Mart.) Snyd. et Hans.]の2つの群 (αおよびβ) の菌を F. solani の既設の6つの form, すなわち f. cucurbitae, f. eumartii, f. phaseoli, f. pisi, f. radicicola および f. batatas と相互接種してその病原性関係を明らかにし, form 名および race を決定した。
    α群は供試された寄主植物の中で単にクワにのみ局限された病原性をもつており, 既設の他の form はいずれもクワに病原性を示さなかつた。従つて本菌を Hypomyces solani (Rke. et Berth.) Snyd. et Hans. f. mori n. f.[Fusarium solani (Mart.) Snyd. et Hans. f. mori n. f.]と命名した。
    β群はクワに対する病原力はα群より劣るが, クワのほかバレイシヨ塊茎, エンドウおよびカンシヨ苗を侵し, 特にバレイシヨ塊茎をはげしく侵す点で f. radicicola に近似している。しかし, 従来の f. radicicola はほとんどクワを侵さないところに相違がある。従つて本菌を f. radicicola の1つの race とみなし, Hypomyces solani (Rke. et Berth.) Snyd. et Hans. f. radicicola race 2[Fusarium solani (Mart.) Snyd. et Hans. f. radicicola race 2]とした。従来のバレイシヨ乾腐病菌は Fusarium solani f. radicicola race 1として扱うことにする。
  • II. Phytoalexin 生成に影響を及ぼす寄生菌胞子浮遊液の状態
    植原 一雄
    1959 年 24 巻 4 号 p. 224-228
    発行日: 1959/11/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1) ダイズと Fusarium sp. とを用いて, Phytoalexin (PA) 生成に関与する病原菌の側の因子について調べた。
    2) PAの生成は, 胞子の濃度が1視野当り3∼6個の時は認められず, 40個以上の時に顕著に認められる。
    3) 胞子浮遊液を100°C10分加熱すると, PA生成を誘発する能力を失い, 磨砕した胞子液の遠心上澄にも, PA生成を誘発する能力が認められない。
    4) 調製後23°Cで24時間経た胞子浮遊液の遠心上澄はPA生成を誘発する能力を有している。しかし, この上澄を60°Cで10分加熱するとこの能力を失う。
    5) PA生成を誘発する因子は熱に対して非常に不安定なものである。
  • 紫外線殺菌の実用化に関する知見
    正子 朔
    1959 年 24 巻 4 号 p. 229-233
    発行日: 1959/11/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    紫外線殺菌灯の実用化に際して問題になる点を検討した。紫外線殺菌灯は低温の部屋で照射した方が有効紫外部の輻射能率はよいが, 供試細菌の感受性は高温において高くなる。しかし感受性の変化よりも輻射能率の変化の方が大きいので, ある程度低温で照射した方がよい。しかして人工太陽灯と殺菌灯とを併用した場合に殺菌効果が高く, 可視光部は抑制的に働かないでむしろ協力的である。包装紙としては防湿セロファンよりも普通セロファンの方が紫外線吸収が少なく, 実用的である。
  • 内藤 中人, 谷 利一, 佐藤 芳久
    1959 年 24 巻 4 号 p. 234-238
    発行日: 1959/11/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    (1) エンバク冠銹病菌 (Puccinia coronata Corda) 夏胞子を蒸溜水の表面に浮かべると, 水面における胞子密度が高いほど, また同密度が一定のときは水量の少ないほど発芽がわるい。
    (2) 本菌夏胞子中には発芽を完全に阻止するに足る濃度の self-inhibitor がもともと存在する。前項の発芽不良は本物質に密接な関連があると考える。
    (3) 本菌夏胞子が空気中ではあまり発芽しないのに水上でよく発芽するのも主として, 水との接触により self-inhibitor が水液中に溶出し, 胞子内の同物質濃度を低下させるためと解する。
  • 第5報 大麦白渋病菌と寄主組織に対する撒水の影響
    桜井 寿, 平田 幸治
    1959 年 24 巻 4 号 p. 239-245
    発行日: 1959/11/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 大麦白渋病菌の分生胞子をカバーグラス下に水で封じ, カバーグラスの一方の縁からろ紙で水を吸取り, 他方の縁から水をさして, カバーグラス下の水を取替えるようにしながら鏡検すると, 多くの胞子では始めにみられた原形質, 液胞の構造が間もなく崩れ, 内部一様に顆粒状態になつて死ぬ。胞子が肩の部分で破れたり, どこから破れたとも分らぬように爆発的に破れたり, また胞子の端にある蒂状のものがはずれて, 内容が吐出されることもある。
    菌糸, 分生子梗と連結している分生胞子鎖を上述のようにして, カバーグラス下に水で封ずると, やはりみている間に, これらの一連の細胞は内部的に崩れるか, 膜が破れて死ぬ。罹病部の表皮を剥ぎとつて水に封ずると, 菌糸の先端部が破れるのがよく見受けられる。
    2. 罹病葉に撒水すると, 林立する分生胞子鎖の上に大小様々の水滴がとまるが, 菌糸だけあつて分生胞子鎖がない菌叢の周辺部には水滴がとまりにくい。水滴が乾くと, その水滴についていた胞子は互いに附着して離れず, まもなく胞子は死ぬ。分生胞子鎖上の水滴は分生胞子鎖の表面を下方に伝わること少く, 下方の胞子, 分生子梗 (分生胞子母細胞) は短時日の撒水によつては死ぬことが少い。しかし撒水が1週間以上も続くと, 分生胞子鎖の下方の胞子, 分生子梗, その下の菌糸も死んで, 撒水をやめたあとで, 分生胞子鎖林立部に胞子の新成はみられない。菌叢の周辺部には新しく分生子梗, 分生胞子鎖が生じて来る。
    3. 撒水により胞子が死んで互いに附着するのは, 大麦白渋病に対するリチュウム塩の作用に関する報告 (平田, 1959) で述べたように, 胞子が吸水し膨れる際に, 胞子膜の外層が破れ, 破れたあとの胞子膜面が粘着性を持つのによると考えられる。
    4. 罹病株に2∼3日間撒水すると, 菌叢下の寄主組織にうすい褐変が起る。その後撒水を続けると, 褐変部は拡がり, 濃い褐色になる。この着色は表皮細胞にも内部組織の細胞にも起こり, 葉脈に沿つて褐線が肉眼的に認められることもある。
    褐変が早く起こるのは, 吸器を含む表皮細胞または表皮直下の葉肉細胞とは限らず, 深層部の葉肉細胞, 維管束内の細胞, 維管束をとりまく柔細胞に早く起こることがある。気孔細胞には褐変が特に早く起こることが多く, 菌叢のあるのと反対の側の気孔細胞にも早く起こることもある。
    5. 葉肉細胞が褐変する場合には, 褐変するに先立つて葉肉細胞面に黄色の粘性の小滴があらわれ, この小滴は次第に大きくなると共に褐色になる。この着色した滴に接する部分の細胞膜にまず着色が起こり, 着色部が次第に拡がる。細胞膜が全面的に着色しても, 細胞はなお膨圧状態を保つのが認められること多く, 細胞が死ぬのは細胞膜が着色し始めてから, かなりの時日を経ることが多いようである。上述のような褐色の滴を認めることなしに, 葉肉細胞が褐変している場合もあるが, まず細胞膜に着色が起こることは同様である。この着色成分は葉肉細胞から滲出したものと考えられる。
    6. 4で述べたように, 撒水により菌叢部の下の気孔細胞は極めて褐変死しやすいので, 葉内における維管束→葉肉細胞→表皮細胞→気孔細胞の順に溶液が流れ, 気孔から水分が発散する流れは, 不調を来たすであろう。また菌叢下の寄主組織には, まわりの無病組織から特に多くの成分が集まるが, 撒水のために死んだり弱つた菌に吸収利用され難いために, 菌叢下の葉肉細胞の内容が過剰になることが考えられる。これらの事情が葉肉細胞の生理を乱し, 褐変死を起こす原因になることが考えられる。
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