トウモロコシの病原菌
B. zeicola race 3を温室栽培イネに接種すると葉に激しい病徴を引き起こしたので,イネに対する本菌の病原性因子について検討した。その培養ろ液から有機溶媒抽出,TLC, HPLCなどにより,非病原菌
Alternaria alternataのイネ葉への感染を誘導する活性物質を単離し,それをSIF 1と名付けた。NMR massなどの機器分析結果からSIF 1の分子組成はC
30H
44O
8と判明した。SIF 1は10μg/ml以上の濃度で,イネ葉に対してのみ
A. alternataの感染を誘導し,多数の小斑点を形成させる活性を示したが,イネ葉に対する壊死斑形成やイネ芽生の生育抑制などの植物毒性を示さなかった。本菌の分生胞子発芽液は上記と同様の強い感染誘導活性を示したものの,そこからはSIF 1は検出されなかった。イネに病原性を示さないが,本菌の近縁菌である
B. zeicola race 1,
B. victoriaeおよび
B. bicolorも培養時にSIF 1を生成した。以上の結果から,
B. zeicola race 3のイネへの病原性発現におけるSIF 1の役割については明らかでないが,その特異的な作用性から,イネの抵抗性機構の解析用プローブとしての有用性が示唆された。
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