1. いもち病菌の分生胞子は, その発育の途中, 卵形になると, 2分して上下の2胞となり, その後上方の細胞は伸びて2分し, 胞子は3胞の徳利状になる。
2. イネ葉鞘に接種した場合, またはアルコールに浸漬後水洗したタマネギ鱗片表皮片の上の水滴内では, 胞子の先端細胞からでた発芽管のほうに, 中央, 後端の細胞内容も早く移動し, 後端, 中央, 先端の細胞の順に内容が空虚になつてしぼむ。付着器はよく形成される。
ガラス上の水滴内では胞子ははじめ先端細胞から, ついで後端細胞から, まれに中央細胞からも発芽管をだす。付着器の形成は少ない。中央細胞に内容が豊富に残る傾向がある。
ガラス上のイネわら煎汁内では胞子は先端細胞, 後端細胞の順に発芽し, ときに中央細胞も発芽する。発芽管は煎汁から養分をとつてよく伸長し分枝する。付着器の形成は極めてまれである。3胞の内容の減少が目立ちはじめるのは極めておそい。
3. 3胞の寿命をくらべると, 一般に先端細胞が最も短く, 中央細胞が最も長いが, 3胞間の寿命に格段の差は認められない。いずれかの細胞が他の細胞から特に養分を補給されて, 厚膜胞子的になることはないようである。
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