日本植物病理学会報
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25 巻, 3 号
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  • 第1報 病原性と2, 3の培養上の性質との関係
    赤井 重恭, 小倉 寛典, 佐藤 徹
    1960 年 25 巻 3 号 p. 125-130
    発行日: 1960/09/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本論文においては種々の寄主から分離した Pellicularia fiilamentosa 38菌株を用いて, キュウリ幼苗に対する病原性と2, 3の培養上の性質との関係について実験を行なつた。
    1. 本菌の病原性には多少の分化がみられ, 幼苗から分離した菌株は概して強い病原性を示す。
    2. 菌糸の伸長が早い菌株は概して強い病原性を示したが, 特に 9∼11cm/5hrs の伸長速度を示す菌株には強い病原性を示すものが多い。
    3. 本菌は炭素源として pentose より hexose をよく利用し, 特に glucose はよく利用される。di-および polysaccharide の利用度の低い菌株がかなり存在するが, 特に maltose を利用し難い菌株は P. filamentosa forma sasakii 型のものに多いようである。なお, このような菌株の病原性は中程度である。rhamnose を利用しうる菌株は病原性を有する。
    4. phenylalanine の利用程度の低い菌株は histidine および tryptophan の両者あるいは一方をもあまり利用しない。(NH2)2COおよび cysteine の利用度の低い菌株は f. sasakii 型のものに多かつた。
    5. f. sasakii と f. solani の間には明確な区分は認め難く, 両者の中間型も見出だされる。
  • 木村 郁夫, 福士 貞吉
    1960 年 25 巻 3 号 p. 131-135
    発行日: 1960/09/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. イネ萎縮病ウイルスを萎縮稲および保毒ツマグロヨコバイから機械的接種法によつてツマグロヨコバイに伝染させることができた。
    2. この方法で萎縮病稲および保毒虫体内のウイルスの相対的濃度を調べた結果によれば, 虫体内の濃度が罹病植物内のそれより少し高いようである。
    3. 保毒雌雄虫交配によつて産卵せしめた卵のウイルスの相対的濃度は保毒成虫体内のそれとほぼ同程度であつた。
    4. 保毒虫磨砕汁液を0°∼4°Cで保存すると48時間後までウイルス活性が存する。
    5. 保毒虫および萎縮病稲茎葉を-30°∼-35°Cに冷凍保存すると12カ月後にもウイルス活性は失われない。
    6. 保毒虫磨砕汁液を加熱すると40°C 10分まではウイルス活性が失われない。
  • 関 省吾, 平田 幸治
    1960 年 25 巻 3 号 p. 136-141
    発行日: 1960/09/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. いもち病菌の分生胞子は, その発育の途中, 卵形になると, 2分して上下の2胞となり, その後上方の細胞は伸びて2分し, 胞子は3胞の徳利状になる。
    2. イネ葉鞘に接種した場合, またはアルコールに浸漬後水洗したタマネギ鱗片表皮片の上の水滴内では, 胞子の先端細胞からでた発芽管のほうに, 中央, 後端の細胞内容も早く移動し, 後端, 中央, 先端の細胞の順に内容が空虚になつてしぼむ。付着器はよく形成される。
    ガラス上の水滴内では胞子ははじめ先端細胞から, ついで後端細胞から, まれに中央細胞からも発芽管をだす。付着器の形成は少ない。中央細胞に内容が豊富に残る傾向がある。
    ガラス上のイネわら煎汁内では胞子は先端細胞, 後端細胞の順に発芽し, ときに中央細胞も発芽する。発芽管は煎汁から養分をとつてよく伸長し分枝する。付着器の形成は極めてまれである。3胞の内容の減少が目立ちはじめるのは極めておそい。
    3. 3胞の寿命をくらべると, 一般に先端細胞が最も短く, 中央細胞が最も長いが, 3胞間の寿命に格段の差は認められない。いずれかの細胞が他の細胞から特に養分を補給されて, 厚膜胞子的になることはないようである。
  • イネのいもち病抵抗性に及ぼす, いもち病菌産生毒素, ピリクラリンの影響について (その1)
    富樫 邦彦, 小笠原 長宏, 玉利 勤治郎
    1960 年 25 巻 3 号 p. 142-148
    発行日: 1960/09/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本報告は葉鞘検定法によつてイネのいもち病抵抗性におよぼす Pir. の影響について観察した結果を述べたものである。
    1. 50∼100万倍 (2∼1μg/ml) 稀釈の溶液で処理したイネ苗葉鞘はいもち病に対する抵抗性が高まる。すなわち菌の侵入に対する葉鞘細胞のカルス形成が活発となり菌の侵入率が低下するとともに, 侵入をうけた細胞が初期に反応をおこすために, 侵入菌糸の発育が不良になることなどが観察された。
    2. Pir. 処理で抵抗性の増加したイネ葉鞘を蒸熱でころしてから菌を接種すると侵入菌糸はよく伸展する。(吸収された Pir. は熱に安定)。また10万倍 (10μg/ml) の Pir. 溶液処理で阻害作用をうけたイネ葉鞘でも侵入菌糸はよく伸展する。
    3.以上のことから Pir. 処理で高まる抵抗性は, イネ体内に吸収された Pir. の抗菌性 (200万倍, 0.5μg/mlで本菌胞子内を不可逆的に変性させる) による侵入菌糸の発育抑制ではなくて, Pir. の剌戟効果をうけたイネ細胞の代謝機能の高まりにもとずくものと推定される。
  • 植原 一雄
    1960 年 25 巻 3 号 p. 149-155
    発行日: 1960/09/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 水稲と Xanthomonas oryzae との相互反応によつて phytoalexin (PA) が生成されるか否かを検するにあたり, バクテリオファージによる簡易細菌数比較法を利用した。
    2. 水稲葉の小傷口上に24時間置いた X. oryzae 浮遊液の遠心上澄中には, 本菌の増殖を阻害する作用が存在することが認められた。本作用は水稲と X. oryzae との相互反応によつて生成されたPAによるものと思われる。
    3. 水稲と X. oryzae および水稲と Piricularia oryzae との相互反応によつて得られた2種のPA滲出液はいずれも, X. oryzae の増殖および P. oryzae の分生胞子の発芽の両者に対して阻害作用を示した。
    4. 水稲と X. oryzae との相互反応によつて生成されるPA量は水稲をエーテル麻酔することにより減少する。
  • 3. 種々の化合物による人工病斑の形成ならびに澱粉分解作用の抑制
    田中 寛康, 赤井 重恭
    1960 年 25 巻 3 号 p. 156-164
    発行日: 1960/09/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    水稲ごま葉枯病々斑周縁組織ではβ-amylase の活性が低下するが, この原因を追及するために, 呼吸系酵素阻害剤, 金属塩類およびフェノール類などの溶液を暗処理中の水稲葉上に滴下して, 人工病斑の形成ならびに澱粉流転作用の阻止力などを調べた。その結果これらの物質を, (1) 人工病斑を形成し, かつ澱粉流転作用を阻止するもの (第1群), (2) 人工病斑を形成するが澱粉流転作用を阻止しないもの (第2群) および (3) 人工病斑を形成せず, したがつて澱粉流転作用を阻止しないもの (第3群) に分けた。
    一方水稲葉から調製した粗酵素液にこれらの物質を添加して, あるいはこれらの物質に水稲葉を浸漬した後調製した粗酵素液についてβ-amylase の活性を測定し, これらの物質のβ-amylase に対する直接あるいは間接的な阻害力を調べた。第1群に属する物質はすべて阻害作用を示したが, 第2群に属する物質は示さないものが多かつた。これらのことから, 本病々斑周縁組織ではβ-amylase を阻害する物質が, 水稲自身あるいは侵入した病原菌によつて生産されているものと考えた。
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