ジャガイモそうか病に対する抑制効果について4つの異なる施肥法を淡色黒ボク土壌の圃場で検討した。硫酸アルミ区(硫酸アンモニウムと硫酸アルミニウムを作条施用し,過燐酸石灰と硫酸カリを全面全層施肥)は,高度化成区(硝酸態窒素を含む高度化成肥料の作条施肥)および単肥作条区(硫酸アンモニウム,過燐酸石灰と硫酸カリの作条施肥)に対する防除価がそれぞれ63と65で高い抑制効果を示した。改良区(硫酸アンモニウムのみを作条施肥し,過燐酸石灰と硫酸カリを全面全層施肥)は,高度化成区と単肥作条区に対する防除価がそれぞれ17と21で硫酸アルミ区に比べて小さかったが,高度化成区と単肥作条区に比べると重症罹病イモの割合が少なく,発病抑制効果を示した。感染時期と思われる6月13日において硫酸アルミ区では,置換酸度y
1は8.4となり,他の試験区に比べて著しく高い値であった。改良区では,置換酸度y
1は2.7で高度化成区,単肥作条区と同様に2台であったが,土壌ECは0.24mS/cmと高度化成区と単肥作条区より低い値であった。
土壌タイプが異なる淡色黒ボク土壌と表層腐植質黒ボク土壌で改良区の発病抑制効果を検討した。改良区では両土壌とも発病抑制効果が認められたが,その程度は淡色黒ボク土壌の方が強かった。感染時期と思われる6月12日における淡色黒ボク土壌の改良区は,アルミニウムイオン濃度が慣行区(粒状配合肥料の作条施肥)に比べ低かったが,土壌ECも慣行区に比べ1/2程度となり,アルミニウムイオン活量が高まる条件であった。一方,表層腐植質黒ボク土壌の改良区はアルミニウムイオン濃度が慣行区に比べ高く,また,土壌ECも慣行区に比べて低い値であったが,淡色黒ボク土壌の改良区に比べると土壌ECが高かったため,淡色黒ボク土壌に比べてアルミニウムイオン活量の増大が少なく発病抑制効果が劣る結果になったと考えられる。
以上の結果から,アルミニウムイオン濃度の増大を図る硫酸アルミニウムの施用とともに,ジャガイモ塊茎付近のイオン強度を低く抑えるためのリン酸とカリ肥料の全面全層施肥による施肥法の改良は,ジャガイモそうか病を抑制することが圃場試験より実証された。
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