日本植物病理学会報
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42 巻, 5 号
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  • 第2報 ゴムプレスおよび葉肉注射接種後の増殖と宿主組織の変化
    小泉 銘冊
    1976 年 42 巻 5 号 p. 517-525
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カンキツかいよう病菌をゴムプレス法ならびに葉肉注射法でカンキツ葉に接種し,接種時の傷痍の影響を排除した場合の病原細菌の消長と接種部組織の変化を観察した。
    1. ゴムプレス法で接種された細菌は気孔下腔近傍の海綿状組織の間隙に侵入した。20Cでは4∼5日,23Cでは3∼4日,25Cでは2∼3日後に気孔に近い2, 3層の細胞で細胞質の染色性の変化,仁の大型化,葉緑体の消失が起った。生菌数は同時期に増加し,1∼2日後から減少して病変細胞が増加した時期に著しく増加した。増加期からつぎの増加期までの期間は接種から宿主細胞の病変までの期間に等しく,抵抗性の異なる宿主でもほとんど差異がなかった。
    2. 葉肉注射法で接種された細菌は海綿状組織の間隙に分布して直ちに増殖し,とくに接種源への栄養添加はこれを助長した。20Cでは4日目,海綿状組織の1, 2層の細胞でゴムプレス接種による場合と同様な病変が起り,その4∼5日後に病変細胞は4, 5層に増加した。
    3. 約10層の細胞が病変し,肥大すると葉裏に水浸状小斑点が現われた。病変細胞は分裂せず,病原細菌は病変組織の細胞間隙に充満してそこから周辺部へ溢出した。
    4. 以上の結果から,病原細菌は近接した宿主細胞に作用し,温度に関係した一定時間後に病変させ,その周囲で増殖すること,増殖した細菌は周囲へ溢出し,健全な細胞に作用して一定時間後に病変させ,そこでさらに増殖すること,この過程をくり返すことによって病変組織が拡大するものと考察された。
  • 非病原性変異株と病原性母菌株の相互作用
    藤井 溥
    1976 年 42 巻 5 号 p. 526-532
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ白葉枯病菌を長期間継代培養すると,非病原性の変異株が出現しその割合が次第に増加する。この変異株(Av)と病原力の大きい原菌株(V)との相互間の増殖における干渉現象を知る目的で,これらを単独または混合して液体培地で振盪培養し,あるいはイネに接種した場合,両者の増殖状況にどのような差が見られるかを追跡した。
    混合実験にはAv, Vから得られたストマイ耐性菌Av-R, V-Rを使用したが,予備試験の結果ではAv-RとAv, V-RとVの間にはストマイ耐性以外,病原力および各種細菌学的性状に差はみられなかった。
    V-Rは液体培地中でほぼ等量のAvを加えるとその増殖が明らかに抑制される。V-RとAvを混合してイネ苗に接種すると,混合するAvの量に応じて病斑長が短かくなり,接種葉中のV-R菌量も単独接種に比べ少なくなる。
    Av-Rの培地中での増殖はVの混合によってほとんど影響を受けない。Av-Rを単独でイネ苗に接種すると病斑の形成は見られないが,10∼15日後でも接種点の両側2-3cmづつの部分で生存している。Av-RにVを混合して接種すると単独接種に比べAv-R菌量はいちぢるしく高くなり葉中の分布範囲も広がっている。この例のようなAvによるV, V-Rの増殖抑制,または病斑長の抑制現象は他にもその例が多いが,反面抑制作用をおこすAv-R自体がVと同時に存在することによってイネ体内での菌量を増加させ,またその分布範囲を拡大させている事実は興味深く思われる。
  • 栃原 比呂志, 田村 実
    1976 年 42 巻 5 号 p. 533-539
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    石川,広島,千葉の各県で採集した26株のフキについてウイルス感染状況を調べたところ,alfalfa mosaic virus (AlMV), arabis mosaic virus (ArMV),キュウリモザイクウイルス(CMV),フキモザイクウイルス(BuMV,新称)の4種ウイルスが3, 9, 22および20株からそれぞれ分離された。BuMVは約13×670nmの紐状粒子でモモアカアブラムシで伝染した。ペチュニア,C. amaranticolor, C. quinoa,ビートおよびキク科植物に感染が認められた。フキにモザイク症状を起こし生育に影響をおよぼすのはCMVとBuMVであり,AlMVとArMVはフキに対して病原性が弱く,生育にほとんど影響を与えないものと考えられた。
  • 谷井 昭夫, 宮島 邦之, 秋田 忠彦
    1976 年 42 巻 5 号 p. 540-548
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネの葉鞘褐変病は北海道の稲作地帯の全域に発生し,その被害も大きい重要病害となっている。
    本病原細菌は最近までP. marginalisとされてきたが,ハクサイおよびニンニクの罹病葉より分離したP. marginalisの数菌株を含めて再検討を加えた結果,レバンの産生,グルコン酸の酸化,β-グルコシダーゼ活性,シュークロース,ソルビトールおよびイノシトールからの酸の産生能,ペクチナーゼ活性などの細菌学的性質,血清学的性質および寄生性の点でP. marginalisとは異なる菌種であることを明らかにした。
    本病原細菌に類似する菌種は他に見当らず,本細菌が止葉々鞘や籾を侵し,黒褐色∼灰褐色にし,特に葉鞘での病徴がよく目立つところからPseudomonas fuscovaginae sp. nov.の学名を与えた。
  • 後藤 孝男, 谷口 武
    1976 年 42 巻 5 号 p. 549-555
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    タバコ・モザイク・ウイルス普通系統を接種したグルチノーザおよびキサンチncタバコにおける局部病斑の出現は,インゲン系統に比べて8-12時間早い。これはウイルス増殖曲線からも裏づけられた。いずれの系統についても局部病斑出現時間においてウイルス粒子とウイルスRNAの間に有意な差は認められなかった。一方接種した植物を32Cに2-3日置いた後25Cに移すか,32C下でアクチノマイシンD処理を行った場合には,普通系統の局部病斑の出現はインゲン系統に比べて4.9-5.5時間早い。これらの結果から局部病斑の形成はウイルス増殖期および組織の変性期の二相より成っており,両相共にウイルス系統の遺伝的性質に強く影響されていると考えられる。
  • 八重樫 博志, T.T. HEBERT
    1976 年 42 巻 5 号 p. 556-562
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    アメリカ産メヒシバいもち菌と本邦産オヒシバいもち菌およびウィーピングラブグラスいもち菌とを用い,子のう殻形成に及ぼす温度,光,栄養条件について検討した。子のう殻形成の最適温度は,メヒシバいもち菌では約20°C,オヒシバいもち菌では約22-25°Cであった。オヒシバいもち菌では暗黒条件下でも時に少数の子のう殻を形成することがあるが,むらなく多数の子のう殻を形成させるには光の照射が必要であった。光強度は相当低くても充分であり,波長域は500nm以下が最も有効であった。オートミール培地やジャガイモ煎汁寒天培地上でも多数の子のう殻が形成された。亜鉛,メチオニンおよび各種植物の修正Sachs培地への添加は,メヒシバいもち菌の子のう殻形成を増加せしめた。
  • 鳥山 重光
    1976 年 42 巻 5 号 p. 563-577
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    コムギ(品種フジミコムギ)の第一葉期にウイルス接種後第二葉におけるウイルス粒子形成を経時的に調べた。ウイルスは無病徴の2日目の材料でも観察されたが初期病徴を現わす4日目の材料で多くの初期形成像がみられた。ウイルスは初め篩部(伴細胞,柔細胞,篩管)や若い木部細胞に感染し,そこから柔組織に感染していくようにみえる。6, 8日目になると細胞質中のウイルスは増え,10, 20日目の材料では孔辺細胞を含む表皮細胞やほとんどの細胞に観察された。稀に核内や核膜間にもウイルス粒子の存在が認められた。細胞質にウイルス粒子が出現する時期には,細胞質が顆粒化した領域(‘viroplasm’)の形成が同時に観察された。ウイルス粒子は‘viroplasm’の内部よりは周辺の細胞質のERのcisternae内に形成される。‘viroplasm’中に未熟のウイルス粒子がみられることがあるが成熟粒子が散在して観察されることはない。稀に膜に包まれたウイルス粒子の集団が‘viroplasm’内にみられた。また感染細胞の細胞質に2枚の並行膜が巻いて出来たと思われる楕円体の膜様の封入体がみられた。ウイルス粒子はこの封入体の膜間にみられることが多い。感染葉の葉肉細胞の液胞中にトノプラスト膜が突出したと思われる膜がしばしば観察されるが,その種の膜間に存在するウイルス粒子はいずれも外膜のない‘裸の’ウイルス粒子であることが注目される。ウイルス接種後3∼4日目の若い葉の細胞質中に電子密度の高いコアをもつGolgi vesicles (50∼200nm)が多数観察された。vesiclesは,とくに維管束の各細胞や孔辺細胞で顕著であるが葉肉細胞でも健全葉に比して多い。Golgi vesiclesの増加と細胞伸長の抑制との関係について若干論議した。
  • II. 感染葉における細菌抑制物質の生成
    渡辺 実, 中西 清人
    1976 年 42 巻 5 号 p. 578-582
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ白葉枯病感染葉における細菌増殖抑制物質の生成の有無について,健全葉および感染葉組織の水抽出液中における本病細菌の増殖を検定して調査した。
    1. 黄玉群品種の農林27号にI群菌のT7174を針束接種した不親和的組織では,感染1日後から抑制物質が生成され,その後,急速に増大して感染8日目ごろに最大に達したのち,徐々に減少する傾向を示した。一方,同品種にII群菌のT7147を接種した親和的組織では,感染初期には抑制物質の生成がほとんどみられず,発病期の5日目ごろより生成が認められ始め,徐々に増加して発病末期にはかなりの程度まで増大したが,その生成量は全般に著しく低かった。
    2. 農林27号にT7174を接種した不親和的組織の水抽出液は,蒸留水による2倍,4倍希釈で次第に抑制作用が減少し,8倍希釈でほぼ消失した。健全組織の水抽出液も2倍希釈で細菌の増殖が促進されたことから,健全組織にも少量の抑制物質が存在することが判明した。
    3. 水抽出液中の細菌抑制物質はセロファン膜チューブを透析したので,低分子性物質であろうと推定された。
  • 山本 弘幸, 谷 利一, 宝金 広行
    1976 年 42 巻 5 号 p. 583-590
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    エンバク品種勝冠1号の子苗第1葉における冠さび菌(Puccinia coronata avenae)不親和性レース226の発育は,ブラストサイジンS (BcS: 5×10-6M)を接種12時間後までに茎の切り口から吸収させると親和性レース203とほぼ等しくなった。BcSの影響は吸収開始の時期が接種14時間より遅くなると漸次低減し,接種24時間から吸収させた場合には全く効果がなかった。レース226接種葉では14C-ロイシンの酸不溶(蛋白)区分へのとり込みが健全葉の1.2∼1.35倍になるが,この増高は,接種14∼24時間後または14∼18時間後からそれぞれ1または4時間14C-ロイシンを茎の切り口から吸収させた場合にみられた。レース203接種葉における14C-ロイシンのとり込みは健全葉と大差なかった。BcS処理によって,健全葉,レース226または203接種葉ともに14C-ロイシンのとり込みが顕著に阻害された。以上の結果から本実験系の抵抗反応には接種後14∼24時間の期間の蛋白合成が関与していると推定した。レース226接種葉では,ペルオキシダーゼアイソザイムおよびフェニールアラニンアンモニアリアーゼの活性が増加するが,これらの増加はBcS処理によって低下しなかった。したがって,抵抗性発現には,これらの酵素以外の蛋白合成が関与していると考えられる。
  • 真山 滋志, 獅山 慈孝
    1976 年 42 巻 5 号 p. 591-596
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    オオムギうどんこ病菌に感染したオオムギ葉には,抵抗性に特異的な蛍光表皮および葉肉細胞と,非特異的なパピラおよびハローの蛍光とが認められた。蛍光葉肉細胞はほとんど崩壊しており,その蛍光は強いが,崩壊初期過程にあるものと思われるものでは蛍光は弱かった。これらの蛍光部位を横断切片として,非親和性菌の生長と宿主細胞の蛍光反応を調べた結果つぎのことが明らかとなった。(1)菌の侵入がパピラ段階で停止する場合,蛍光は肥厚したパピラとハローの部分にあたる表皮細胞壁にのみ認められ,その表皮細胞は崩壊していなかった。(2)表皮細胞全体に蛍光が認められた場合,その細胞は崩壊しており隣接葉肉組織に蛍光細胞は認められなかった。この場合,蛍光表皮細胞中に菌は侵入しているようであるが成熟吸器の形成は認められなかった。(3)崩壊葉肉細胞は必ず蛍光を伴い,収縮して多角状となり,その結果,組織内に空隙が増加した。この時,表皮細胞に吸器形成が認められた。(4)以上から感染葉を表面から観察して認められた蛍光表皮細胞および葉肉細胞は,形熊的に崩壊していることが明らかとなった。
  • 奥 八郎, 白石 友紀, 大内 成志
    1976 年 42 巻 5 号 p. 597-600
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    エンドウの裏側表皮を剥離してピサチンの溶液に浮べると,1時間後には相当量のピサチンを吸収する。葉中のピサチン濃度はその後時間の経過と共に低下し,このことは葉中でのピサチンの代謝分解を示す。このようにして,エンドウうどんこ病菌に対する抗菌濃度以下のピサチン(10∼100ppm)を,接種後の早い時期(6∼16時間)にエンドウ葉に与えると,エンドウうどんこ病菌の感染性が非常に低下する。ファイトアレキシンの寄主特異性,病害抵抗性にはたす役割を,抗菌力よりもむしろ感染阻害作用の点から再評価する必要があると考える。
  • 山田 義男, 長沢 允子
    1976 年 42 巻 5 号 p. 601-605
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 佐々木 次雄
    1976 年 42 巻 5 号 p. 606-608
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 白石 友紀, 奥 八郎, 大内 成志, 磯野 美津子
    1976 年 42 巻 5 号 p. 609-612
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 西山 幸司, 酒井 隆太郎, 江塚 昭典, 市原 耿民, 白石 久二雄, 小笠原 恵美, 佐藤 博二, 坂村 貞雄
    1976 年 42 巻 5 号 p. 613-614
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 片岡 正明, 清水 幸夫, 安田 康
    1976 年 42 巻 5 号 p. 615-617
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Macroconidiospores similar to those of Phytophthora sp. was produced on the cucumber leaves infected with Pseudoperonospora cubensis (Berk. et Curt.) Rost., when the leaves were kept in contact with water during the formation of the conidiophore. The macroconidiospore discharged 15 to 25 zoospores similar in size to those produced from the normal conidiospores.
  • 真山 滋志, 獅山 慈孝
    1976 年 42 巻 5 号 p. 618-620
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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