マルチラインにおける,葉いもちから穂や籾への感染によるイネいもち病菌の病原性レース頻度の変化を解明するために,非親和性菌の感染を要素として加えたレース頻度の推定モデルを作成するとともに,シミュレーションモデルの信頼性を検証した.コシヒカリとコシヒカリ新潟BLの各品種をポットで栽培し,コシヒカリに親和性,コシヒカリ新潟BLに非親和性となるレース001.0の菌を伝染源として設置し,穂いもち発病度,胞子形成籾の割合,胞子形成数を調査して,非親和性菌の感染に関する品種別のモデルパラメータを作成した.コシヒカリおよびPia,Pii,Pita-2,Piz-tのいずれかを持つコシヒカリ新潟BLとレース001.0,003.0,007.0の菌を用い,品種構成および伝染源となる葉いもちのレース構成の異なる条件で10回の試験を行い,胞子形成籾のレース頻度をモデルの推定値と比較してモデルの適合性を検証した.シミュレーションモデルによる推定値は,多くの試験のレース頻度に近く,このモデルを使用してマルチラインにおける穂のレース頻度を予測できると考えられる.