条斑病に感染したトマトの未熟果から分離したウイルスLFD-Stと,これから発生した3つの変異ウイルス株について比較研究した。
LFD-Stはトマトに接種すると条斑病を,サムスンタバコの接種葉にはえそ斑点を生じた。この局部病斑は温度,葉令により退緑斑点,黄色斑点などに変化した。また,このほかのタバコ品種,多くの
Nicotiana属植物,ペチュニヤ,
Ch. amaranticolorなどに局部病斑を生じた。インゲンは感染しなかった。
LFD-Stのトマト感染はTMVの弱毒トマト系統(L
11A)の接種により干渉された。
LFD-Stおよびその局部病斑を用いて分離したウイルス株を接種したタバコから,LFD-1, LFD-2,およびLFD-3の3つの変異ウイルス株が分離され,これらはいずれもブライト・エロータバコに局部病斑を生じた。その後,LFD-2は全身的なえそ斑点や退緑斑を生じ,LFD-3は全身的なザイク斑紋を生じた。また,LFD-3はインゲンに局部病斑を生じ,TMV抵抗性トマトに接種試験を行った結果からTMVの一系統,Ohio Vに類似していた。
LFD-Stは局部病斑の出ているサムスンタバコ葉汁液中で希釈限界は10
-5∼10
-6,トマト病葉では5,000倍希釈で感染力を失い,90C, 10分処理でほぼ不活化した。LFD-1, LFD-2およびLFD-3の希釈限界は10
-8∼10
-9であった。いずれのウイルス粒子も長さ300nmの棒状粒子で同時に観察したTMVのOM系統のウイルス粒子と同形であった。
実験の結果からLFD-St, LFD-1, LFD-2およびLFD-3はいずれもTMVの系統であり,LFD-Stはトマトの条斑病を起こす系統であるが,不安定で変異株を発生しやすい性質をもちLFD-1, LFD-2およびLFD-3などを発生するものと推定された。
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